「秘密は守るよ、どんな話でも」~電話でつなぐ「傾聴」という子どもたちの心の居場所~

掲載日:2025 年 11月 28日  


今、私たち大人の姿や社会の歪みに翻弄され、多くの子どもが「生きにくさ」や「育ちにくさ」を感じ、自分の居場所を見失っています。こうした子どもを取り巻く厳しい現状を背景に、「子どもの権利が保障される社会は、大人も心豊かに生きる社会である」という理念のもと、チャイルドライン京都は活動を続けています。

18歳までの子ども専用電話である「チャイルドライン」は、子どもたちが誰にも言えない悩みや、ありのままの気持ちを秘密厳守、匿名で安心して話せる「心の居場所」を提供しています。

ボランティアの受け手は、名前を尋ねることも、アドバイスをすることもなく、「ただひたすらに聴く」ことを大切にしています。それは、子ども自身が自分の話に耳を傾けてもらうことで、自己肯定感を取り戻し、自らの力で解決の糸口を見つけ出すことを支援するためです。

今回は、チャイルドラインとは何か?、どのような仕組みで活動しているのか?、また、現在どのようなことに困っているのかについて、チャイルドライン京都の理事長 根本さんに詳しくお話を伺います。

このページのコンテンツは、NPO法人 チャイルドライン京都 にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

 今、私たち大人の姿や社会の歪みに翻弄され、多くの子どもが「生きにくさ」や「育ちにくさ」を感じ、自分の居場所を見失っています。こうした子どもを取り巻く厳しい現状を背景に、「子どもの権利が保障される社会は、大人も心豊かに生きる社会である」という理念のもと、チャイルドライン京都は活動を続けています。

18歳までの子ども専用電話である「チャイルドライン」は、子どもたちが誰にも言えない悩みや、ありのままの気持ちを秘密厳守、匿名で安心して話せる「心の居場所」を提供しています。

ボランティアの受け手は、名前を尋ねることも、アドバイスをすることもなく、「ただひたすらに聴く」ことを大切にしています。それは、子ども自身が自分の話に耳を傾けてもらうことで、自己肯定感を取り戻し、自らの力で解決の糸口を見つけ出すことを支援するためです。
今回は、チャイルドラインとは何か?、どのような仕組みで活動しているのか?、また、現在どのようなことに困っているのかについて、チャイルドライン京都の理事長 根本さんに詳しくお話を伺います。

相談内容は「悩み」だけじゃない。100点を取った報告もOK

「子どものための電話相談」と聞いて、私たちは何を思い浮かべるでしょうか。多くの場合、それは深刻な悩み、つらい気持ちを打ち明ける場所というイメージを持たれている方も居られるのではないでしょうか。「例えばテストで100点取ったとか、縄跳び跳べたとか、そういったとても嬉しかったことや楽しかったことなど、子どもたちには何でもお話ししてもらったらいいので」と代表の根本さんは、静かに語りました。

この微笑ましい電話の裏には、現代の子どもたちが置かれた少し切ない現実が透けて見えます。こうした電話は「本当は親に聞いてほしい」けれど、「仕事でまだ帰ってきていない」といった状況の子どもからかかってくることもあります。嬉しい出来事をすぐに伝えたい相手がそばにいない。そんな一瞬の寂しさを受け止めることで信頼関係を育み、いざ本当に困難な状況に陥った時、子どもたちがためらわずに電話をかけられるセーフティネットとして機能する為にも大事なことになります。

チャイルドラインの組織体制について

チャイルドラインは、全国41都道府県にある70の実施団体、約2000人のボランティアと、その活動を支援する認定NPO法人チャイルドライン支援センター(以下、支援センター)が協働して運営されています。この体制により、全国共通のフリーダイヤルにかかってきた子どもたちの声が、地域に関わらず全国の団体で受け止められる仕組みとなっています。

支援センターでは、電話やオンラインチャットによる相談事業の仕組みを構築するとともに、その運営体制の整備にも取り組んでいます。さらに、受け止めた子どもたちの「声」をデータとして集積・分析し、そこから見える社会課題や子どもたちの状況を広く発信しています。

こうした情報をもとに社会への提言や啓発活動を進め、必要に応じて行政や他団体と連携し、「子どもの最善の利益」が保障される社会の実現に向けた議論や政策提言にも取り組んでいます。

これらの活動を通じて、子どもたちがありのままで安心できる心の居場所をつくり、子どもたちが生きやすい社会の実現を目指しています。今回お話を伺ったチャイルドライン京都は、京都府内唯一の実施団体のひとつとして活動をしています。

詳細については、2022年に掲載した記事をご参照ください。

子どもたちが安心できる場の継続のために大事にしていること

チャイルドラインは、子どもたちが安心して話せる環境を継続させるために大事にしていることがあります。それは、徹底的な守秘義務にあります。

活動は、主に「受け手」と呼ばれるボランティアが中心となり、子どもたちの声を聴いています。子どもたちからの話はもちろんのこと、自分が受け手であることを周りに話すことができません。また、電話で聴いた内容を、団体内部の人どうしであっても外部(たとえ帰り道の電車の中であっても)で話すこともできません。そしてどこで電話を受けているかも秘密となります。

なぜ、ここまで徹底するのでしょうか。それは第一に、子どもたちが安心して話せる場を守るためにあります。子どもにとって、受け手が誰かとわかれば先入観が先に働いて、本音を話しにくくなるかもしれません。そうなると、子どもが話す内容が限定的になることもあるためです。

この徹底した秘匿性こそが、子どもたちが誰にも言えない本音を打ち明けられるという安心感を担保しています。

時代とともに変化する子どもたちの状況

現代の子どもたちのコミュニケーション手段の変化に対応するため、チャイルドライン全体はフリーダイヤルだけでなく、ネットでんわやチャット相談も受け付けています。この背景には、単なる流行り廃りではない、切実な理由があるそうです。一つは、「声で話した時の『間』が怖い」と感じる子どもたちの心理的なハードル。もう一つは、親から与えられたスマホやタブレットがデータ通信のみの契約で、そもそも電話をかけられないという状況が原因になります。

しかし、この時代の要請に応えるためのチャット相談が、新たなジレンマを生んでいると根本さんは話します。それは、チャットでの対応が「電話の2倍から3倍の時間がかかる」という事実です。文字でのやり取りは、感情の機微を伝えたり、考えを整理したりするのに時間がかかるため、一人の受け手が対応できる子どもの数が減ってしまうそうです。

根本さんの話によると、全国にある実施団体は、自団体の状況に応じて、対応するツールを選択して活動されているそうです。チャイルドライン京都では、現在は電話のみの対応ですが、チャットの対応も現在検討中だと伺います。

半数近くがつながらない衝撃。声なき声の裏にある現実

チャイルドライン京都も含め、全国的に直面している課題の一つが、電話の応答率だそうです。NTTの回線記録によると、全国のチャイルドラインには年間約31万件もの電話が発信されます。しかし、実際につながり会話に至るのは約16万件。すぐ切れたり、無言などもあるようですが、実に半分近くの子どもたちの声が、誰にも届くことなく途切れてしまっています。

この数字の背景には、電話を受けるボランティアである「受け手」の数が圧倒的に足りていないという問題があります。チャイルドライン京都も年間約4~5000件近くの着信を40名のボランティアで対応している状況と伺います。

このデータは、社会に潜在する子どもたちの「聴いてほしい」というニーズがいかに大きいかを示すと同時に、支援体制が追いついていないという厳しい現実を浮き彫りにしています。

チャイルドライン京都でも、受け手のボランティアを募集しています。「2026年5月頃にボランティア養成講座が予定されていますので、ぜひご応募ください。」と根本さん。

研修風景

求められるのは「心の強さ」より「自分を知る」姿勢!?

「子どものつらい話を聞くには、相当心の強い人でなければ務まらないのでは?」と考える人は少なくないでしょう。しかし、根本さんから伺ったこれまでボランティアに参加した方の動機には、意外な理由もありました。

その動機の一つは、「自分のことを知るため」だそうです。研修を通して、子どもの声に真摯に耳を傾ける訓練や実践を繰り返す中で、自分自身の内面と向き合う機会が生まれることもあるそうです。また、受け手を行なうことで得られる効果もあるそうです。それは、「人の話を待てるようになる。聴き上手になる」と。これは、相手が言葉を見つけるまで、沈黙を恐れずに辛抱強く待つ姿勢のことです。この経験を通じて、「会議でつい人の話を取ってしまっていた」と気づく人もいるそうです。単なるボランティア活動に留まらず、参加者自身の自己成長を促し、仕事や家庭といった実生活におけるコミュニケーションを豊かにする、貴重な学びとなっているのでは、と根本さんはおしゃっていました。

チャイルドライン京都を支援する方法

チャイルドライン京都の活動をぜひ支援してください。方法は、以下御参照ださいをご参照ください。

受け手になる
現在チャイルドライン京都は、受け手不足に困っています。全国の子どもたちの声を受け止めていただける方を募集しています。各地域の実施団体によって対象年齢は違いますが、チャイルドライン京都は16歳から受付けています。
ご関心のある方は、チャイルドライン京都までご連絡ください。

寄付をする
また、子どもたちにフリーダイヤルを知ってもらう為、京都府内の学校全てに「チャイルドラインカード」を約30万枚を毎年配布しています。この配布に約40万円が必要で、資金繰りに大変苦労されております。皆様の暖かいご支援を、ぜひよろしくお願いいたします。
詳細はこちら

チャイルドラインの話をする
チャイルドラインという活動があることを、ぜひ周りの方にお話しください。その声は、大きな力となることでしょう。

チャイルドライン京都 25周年イベント情報

チャイルドライン京都は2025年12月で25周年を迎えます。
25周年を記念して、チャイルドライン京都では様々な企画が行われています。

25周年記念シンポジウム/映画上映会
日時:12月14日(日)午後2時より。
場所:京都市中央青少年活動センター
内容:映画『子ども会議』の上映とシンポジウム。登壇者として、代表の根本氏や20代の大学生などが登壇し、子どもとの対話や気持ちを聴くことの重要性について、会場の皆さんと考えます。

詳細はこちら

チラシ表面

傾聴という支援の形

チャイルドラインの活動は、「悩みを聴く」というシンプルなイメージの裏に、喜びの共有、徹底した守秘義務、応答率の課題、ボランティア自身の成長、そして新たなツールの導入がもたらすジレンマといった、多角的で複雑な現実を抱えています。

私たちは「支援」というと、何か具体的なアドバイスをしたり、解決策を示したりすることを考えがちです。しかし、チャイルドラインの活動は、ただひたすらに「聴く」ことが、どれほど大きな力になるかを教えてくれます。評価も判断もせず、ただそこにいて、子どもの声に耳を澄ます。その行為自体が、子どもたちにとって何よりの安心につながるのかもしれません。

あなた自身の生活の中で、耳を傾けるべき声は、すぐそばにありませんか?


今回スポットライトをあてた団体・個人

NPO法人 チャイルドライン京都 根本 賢一 (ねもとけんいち) さん

理事長

団体名 NPO法人 チャイルドライン京都
代表者 根本 賢一
団体について

2000年に活動を開始して以来25年間、「子どもの声に耳を傾け、その気持ちを電話で聴く」取り組みを続けてきました。子どもの声や気持ちを受けとめ、心の居場所をつくることに力を注いでいます。また、リアルな子育て支援の場である「格致つどいの広場」の運営や、「子どもの権利」の啓発にも取り組んできました。
さらに、子どもたちの声を電話で受けとめる「受け手ボランティア」として参加できる方も募集しています。受け手としての基本研修や活動中のフォローアップ体制も整えており、幅広い年代の受け手が多くの子どもたちの声に寄り添うことで、大きな支えとなっています。

電話 075-585-3038
FAX 075-585-3038
メール kyoto.childline@gmail.com
Web サイト https://kyotochildline.org/
Twitter https://mobile.twitter.com/cl_kyoto
Facebook https://www.facebook.com/childlinekyoto
Youtube https://m.youtube.com/channel/UC3kVaKdNbdtVbu-1yltH16w

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 向井直文

事業コーディネーター

Web サイト https://kyoto-npo.org/
Facebook https://www.facebook.com/kyotoNpoCenter


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