こども食堂を「みんな」の居場所に

掲載日:2020 年 4月 24日  


紹介するのは NPO 法人 happiness さん。こどもたちの健全な成長とその環境の為に地域づくりを行うことを目的に活動されています。2016 年にボランティア団体ハピネスとして活動を開始以来、こどもを対象としたこども食堂や学習会の運営を行ってきました。2018 年からは継続的な活動を実現するためにカフェの運営も始め、2019 年 3 月には法人格を取得。今回は happiness の中心的事業であるハピネスこども食堂について、理事長の宇野明香さんにお話を伺いました。

宇野さんは企業に勤めていた経歴もあり、人事の仕事をされていました。学生の面接を担当されており、他人の意見で就職先を決めてしまう現状に疑問を持たれていたそうです。本当にやりたいことを見つけるためには環境が大切だと考える宇野さんは、こども食堂を「できるかできないのかを考えるのではなく、どうやったらそれができるかを考えられる場」にしたいと話してくださいました。

このページのコンテンツは、特定非営利活動法人 happiness にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

宇野さん自身がこどもに関わる活動を始められた経緯を教えてください。

きっかけは私がこどもを産んだことです。身の回りに頼れる環境もなく、本当に大変な状況での子育ての大変さを、身をもって実感しました。そうした中である日、テレビで虐待のニュースを見ました。こどもに暴力をふるうことは許されることではありませんが、親の気持ちを理解できる部分がありました。「親が悪い」と全て責任を押しつけてしまうのではなく、こどもに手を出してしまう前に頼れる場所があればこのような事態は避けられたんじゃないかと思い、何かできることがないかと活動を始めました。

自ら体験されたからこその思いがあったんですね。

何をしようかと考えた時に、最初は里親になろうと思ったんです。でも、自分のこどもで手いっぱいな状況では厳しかったので、里親になるとしても子育てが落ち着いてからだと思いました。代わりに空いた時間を利用して、行政の子育て支援の制度に参加していたのですがあまり活動はできませんでした。

そんな中である日、新聞でこども食堂の記事を見つけたんです。これなら私でもできるのではと思い、こども食堂の運営を始めることにしました。

こども食堂を始められてから今まではどんな道のりでしたか。

はじめは仕事をしながら開催していました。開催日の前の土日にこどもと地域をまわって地道にチラシをポスティングしていましたが、なかなか人は増えませんでした。そこで小学校に許可をもらい、近くの小学校の校門前でチラシを配ることにしました。ハピネスのこども食堂は小学校の隣に場所を設けていたので、塾やスポーツ教室がチラシを配るところをよく見ていたんです。すると、こどもたちに直接情報が届くようになって、参加人数も増えてきました。

それは嬉しいですね。

増えたのは嬉しいのですが、今度は予想以上に来てしまってご飯が足りなくなってしまいました。スタッフのご飯を渡して食べてもらっていたこともあったのですが、毎回そうしていては運営がもちません。そこで、30 人という定員を設けることにしました。ただし、本当に来たい人が参加できるように、前もってメールをしてもらうことで予約できる制度を設けています。メールでの予約と人数設定の 2 つの仕組みでみんなが満足して関われるようにしています。

こども食堂に参加する子はどんな子が多いですか。

多いのは小学生です。でも、参加するのに特別な条件は設けていません。例えば一人親家庭など条件を設けてしまうと、来る人はそういう人といった偏見が生まれてしまいます。ただでさえこども食堂=貧困、のイメージがあるので本当に困っている家庭は行きにくいのが現状だと思っています。ですので、こどもは誰でも無料で参加できるようになっています。

こども食堂をされるときに大切にされていることは何ですか。

こども食堂がみんなの喜ぶ場所になるようにすることです。みんなというのは来てくれるこどもたちだけではなく、保護者の方、ボランティアさんなどこども食堂に関わって下さる全ての方のことです。そのみんなが関わってよかったと思ってもらえるような活動にすることが何より大事なことだと思っています。あとは、こどもの SOS を見逃さないことだと思っています。

ハピネスこども食堂の様子

来ているこどもとはどのように接されていますか。

こども扱いせず、一人の人間として接しています。いろんな人がいるから、こどもと一括りにはしません。ただ、一目でどんな子か分かるわけではないので、会う回数を重ねることは大事かなと思います。その子の性格や特性が分かるようになると SOS にも気づけます。

どのような方がボランティアで参加されていますか

こどもと関わりたい、食育に関心がある、という人は多いですね。学生さんではその分野を大学で勉強している人や、昔こども食堂に行っていたから今度は自分がやりたい、という人がいます。滋賀から来てくれているボランティアさんもいます。料理するのが好きだからご飯を作るボランティアとして参加して下さる方もいます。こども食堂と一口に言っても様々な形で関わって下さっています。

ハピネスこども食堂で活動するボランティアの皆さん

これからの展望はありますか。

活動は広がっては来たものの、やりたいことは一つでぶれていません。「みんなにとっての居場所でありたい」ということです。みんなと言うと広いですが、そこに含まれる人は確かに広がってきています。ただ、全てのこどもが来ることはできないので、他にもこどもの SOS を見つけられるこども食堂が増えるといいなと思っています。

終始和やかな雰囲気でお話してくださった宇野さん。自身が子育てをされる中で感じた思いを行動に起こされ、今も精力的に活動されています。来る人みんなが居心地よく過ごせるよう、気を配って下さっているのが印象的でした。ハピネスこども食堂に人が集まる魅力の一つは宇野さん自身であると感じました。

NPO 法人 happiness では、今回紹介したこども食堂のボランティアを募集しています!小学校の側で実施されるハピネスこども食堂はこどもとの距離が近いのが特徴です。こどもが好きな方、居場所づくりに興味のある方、ぜひ一度ご覧ください。

ボランティア募集ページはこちら


今回スポットライトをあてた団体・個人

特定非営利活動法人 happiness 宇野 明香 (うの さやか) さん

特定非営利活動法人happiness 理事長

2005 年、2008 年に出産、2009 年よりワーキングママとして家庭と仕事の両立を始める。2016 年ボランティア団体ハピネスを立ち上げハピネス子ども食堂をスタートさせる。2015 年退職し、里親研修を経て里親としての活動開始。2018 年 7 月クラウドファンディングにチャレンジし、子どもから高齢者の居場所として・フルタイムで働くことが難しい人たちの雇用の場所としてピネスカフェをオープン。2019 年 3 月に NPO 法人 happiness を設立し、理事長として就任。3 歳から 17 歳までの一時保護委託を受けるなどし、現在は 3 歳の里子を養育しながら里親制度への理解の発信なども行う。

※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2020年4月) の情報です。

団体名 特定非営利活動法人 happiness
代表者 宇野 明香
所在地 〒601-8451 京都市南区唐橋川久保町 1-20
団体について

月に 4 回の子どもの居場所づくりとして「ハピネス子ども食堂」の開催、多世代交流や里親サロンの定期開催、手作りのおばんざいランチが食べられる「ハピネスカフェ」の運営を行なっている。子どもの居場所づくりについての自主イベントなども不定期にて開催中。

電話 050-521-89179
メール happiness.kyoto@gmail.com
Web サイト https://happiness.localinfo.jp/
Facebook https://www.facebook.com/happiness.kyoto/

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 インターン生

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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