認め合うことで生まれる共生の場

掲載日:2020 年 4月 24日  


道急ぐ人々の往来が絶えない烏丸今出川。そこから一筋小路に入ると、都市化が進む京都のからそこだけ時代が切り抜かれたかの様な、一際目を引く西洋建築の屋敷が現れます。門をくぐると、広い庭に木漏れ日が落ちる白いテラスがつい先ほどまで街の中にいたことを忘れさせてくれます。
今回は、京都にある一風変わったカフェ「バザールカフェ」さんをご紹介します。

このページのコンテンツは、Bazaar Cafe にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

テラスの奥では、広い窓とアーチ形様式が特徴的なヴォーリズ建築のカフェが出迎えてくれます。談笑をしている二人組、店員さんとお話をしている方、パソコンで書き物をしている方など、いろんな過ごし方のお客さんがいらっしゃるのが印象的でした。
一方で、お客さんとスタッフの距離が非常に近いことも感じられ、ついさっきまで客席にいた方が接客をしてくれるなど、一括りに「カフェ」といえども、そこが独特な空間であることに気づかされます。

中庭からの風景

メニューボードにはバザールカフェの定番メニューであるコーヒーとココナッツカレー・ロコモコ・BLTE サンドに加え、タイ・フィリピン・韓国などの家庭料理を日替わりで提供しています。レジの横には自分で淹れることのできるオリジナルのチャイティーキットや絵画・アクセサリーなど、好奇心をくすぐる商品を販売しています。

これらの独特な空間と個性的な品揃えの数々は、バザールカフェの持つ、カフェではない側面が作り出しているものなのです。

今回お話を伺いしたのはバザールカフェに勤める、「アジアのマドンナ」松浦さん。「僕がそう感じた」のではなく、役職が「アジアのマドンナ」だそうで、他にも「味見担当」の方がいらっしゃるなど、そういったところにもお店のユニークさを感じられます。そんな松浦さんにバザールカフェについて色々ご質問してきました。

最初にお伺いしたことは、コーヒー豆の種類についてです。お店でいただけるコーヒーはフィリピン産と東ティモール産のバザールカフェオリジナルブレンドで、フィリピンのバギオで活動している Cordillera Green Network (CGN) という NPO が作っているフェアトレードコーヒーです。コーヒー好きの間でもまだまだ知られていない品種が提供できるのは、NPO のコミュニティがあったからなんです。

ユニークな物販も、他の NPO や支援者からの委託販売の商品も含まれていたり、また、月に数回、店のスペースを活用したイベントを他団体と共催するなど、バザールカフェは NPO や支援を必要とする方々にとってハブ的な役割を果たしているそうです。

実は、今年オープン 22 年目を迎えるこのバザールカフェは様々な事情を抱える人々が共生すること理念とした NPO です。活動の一環として、滞日外国人の方や様々な理由で就労につくことが困難な方に就労の機会を提供していらっしゃいます。
そのためメニューにある日替わりの多国籍の家庭料理は、日本に来てバザールカフェで働いている外国人の方々がレシピから作っている、つまり本当の「家庭の味」を再現した料理なのです。

バザールカフェでは様々な背景を抱えた方々がいらっしゃいます。そういった多様性の交差点であるバザールカフェがうまくいくのは、ボランティア、スタッフ、そしてバザールカフェに関わる人々がバザールカフェが理念として掲げている共生について各々が問い続け、行動しているからではないか、と松浦さんは語ります。
依存症と戦う方や心の病を患いながらも社会進出に向けて自分と戦う方などもおられますが、支援する、支援されるという一方向の関係性ではなく、必要な時はサポートをするが平素は仲間として互いに認め合うことなどを大事にしているとのことです。
支援の場として注目を集めることの多いバザールカフェですが、そういった関わり合いから生まれるメニューの数々・空間の雰囲気はきっと他では味わえないものです。

昨今、カフェ業界は第三の波を迎えているといいます。第一の波は大量生産大量消費のポピュラーな飲み物として、第二の波はシアトル系チェーンに代表されるファッションアイコンとしてのコーヒー、そして現在の第三の波はハンドドリップにこだわったスペシャリティ、換言すれば人の手の味をトレンドとしたカルチャー的なカフェスタイルです。

一方でそんな業界の脈絡を基礎としないバザールカフェさんですが、支援活動の傍ら醸される暖かい空間は、間違いなくスペシャリティに富んだものといえるのではないでしょうか。

私たちにとって居心地の良い場所を探す先にある場所が、バザールカフェさんのような誰かを支えている場所でもあるのであれば、支援という言葉のハードルにとらわれずとも私たちに出来ることに気づけるのではと感じました。

是非一度、足を運んでみてください。


今回スポットライトをあてた団体・個人

Bazaar Cafe 松浦 千恵 (まつうら ちえ) さん

アジアのマドンナ

高校卒業後ネパールに遊学。そこで少々 HIV/AIDS の支援活動をしていた。帰国後縁あってバザールカフェで働くこととなる。働きながら同志社大学社会学部社会福祉学科卒業。卒業後は精神保健福祉士として依存症専門クリニックで働きながら、地域の中で生きづらさを抱えた人たちと共に生きることをバザールカフェの中で実践している。

※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2020年4月) の情報です。

団体名 Bazaar Cafe
代表者 マーサ メンセンディーク
所在地 〒602-0032 京都市上京区岡松町 258
団体について

バザールカフェが目指すのは、セクシュアリティ、年齢、国籍など、異なった現実に生きている人々がありのままの姿で受け入れられ、それぞれの価値観が尊重され、社会の中で共に生きる存在であることを相互に理解し合う場の創出。
カフェ運営や庭づくりを通して、滞日外国人や体力的な問題など、様々な事情で就労の機会を得にくい人たちに、働く場を提供すること。同時に社会で起こっている課題や、情報提供、活動団体間のネットワーク創りの場としても機能することです。

電話 075-411-2379
メール kyoto.bazaarcafe@gmail.com
Web サイト http://www.bazaarcafe.org/
Facebook https://www.facebook.com/kyotobazaarcafe/

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 インターン生

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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