社会に一歩踏み出し、活動する人の声をとりあげる「ボランティアスイッチ」。第 9 回は、京都市内で環境問題に取り組む活動を行う、天野光雄さんにお話を伺いました。
「ずっと会社人間でした」という天野さんは、研究開発や工場長を勤めた製造会社を 2001 年に定年退職を迎え、単身赴任先の三重から京都に帰ってきました。
“地元のつながりなくこのまま一生を終えるのはつまらない”と感じていたこと、また読書が好きだったことから点訳点字ボランティアの養成を受け、ボランティアとして活動を開始しました。
その後、市民だよりで京エコロジーセンター(以下、エコセン)が開所され、ボランティアを募集することを知り、天野さん自身、理系だったこともあり「面白そう」と参加することに。当初、想像と少し異なる活動ではありましたが、「せっかく来たし」ということで活動を続けていきました。
エコセンのボランティア(以下、エコメイト)では、館内案内に加え、エコメイト同士でグループをつくり、グループ活動をすることが出来るそう。そこで天野さんはエコメイトの横の交流を促す、環境家計簿チームを作りました。環境家計簿とは、電気・ガス・灯油・ガソリン・水道などの家庭で消費されるエネルギーから排出される CO2 の量を計算するもの。天野さん自身も1年ほど環境家計簿をつけていて、環境家計簿がおもしろく、これをツールに人々の交流が促されると確信し、仲間とともに活動を始めました。
この活動では、環境問題に取り組む NPO などを講師として紹介してもらうなど、人とのつながりが広がるにつれて、環境問題に取り組む世界がぐっと広がったそう。「この出会いがなければ、今はなかったかも…」とおっしゃるほど、ここで生まれたつながりが、活動を進めるうえで大きな支えになったといいます。
現在では幼児のための環境学習プログラムの作成や実施、自治会・町内会でエコライフコミュニティづくりを促す講座の実施など環境やエネルギーに関する多様な活動に取り組んでいます。
そんな天野さんも、企業で働いていたころは、「ボランティア」や「環境」というものは、気にする対象ではなかったといいます。
「会社はあくまでも上下関係。仕事上、役割を演じる場面も多かったけれど、ボランティアは、みんな同じ立場で話ができることがとてもうれしかった。」「活動はしんどいことも多いけれど、退屈はない」そうです。
活動がうまくいかないことはしょっちゅうですが、「うまくいかないことも一つのプロセスと思うし、次に生かせたらと思う」。そして、「相談できる人もいるし。教えてもらえる。育てていただける。」と穏やかな様子でおっしゃっていました。
今後の活動や思いについて尋ねると、「目の前のことをコツコツやっていきたい」と天野さんの性格がうかがえるお言葉。「その時々の目標はあるけれど、それを積み上げることで自然に夢が実現する」と長年の活動から紡がれたお言葉をいただきました。
活動の中でうれしいときは、イベント後のアンケートなどで参加者が企画の狙いを汲んでくれているとわかったり、気持ちが通じていたりと、参加者の反応がわかったとき。それが活動の一番の醍醐味です。
会社での経験を地域で生かし、さらに活動の幅をひろげる天野さん。例えば、「会社員時代に取得した電子機器組立の資格が、環境学習のためのキットづくりに役に立つとは思ってなかった」そう。「やれるときにやれることを、きっちりやっておく」これも天野さんの姿勢です。
「会社での経験をなにかで生かしたい、という人はどのような活動があるかぜひ探してみるとよい」とおっしゃっていました。
みなさんも経験や関心に合わせて、出来ること・やってみたいことから活動に取り組んでみませんか。
天野 光雄さん
京都市市民活動総合センター
伊原千晶