「吃音(きつおん)」を知っていますか。吃音は、「話し言葉が滑らかに出ない」*1ことです。話し始める時に、同じ音を続けて発音したり、なかなか言葉を話し出せなかったり…。「どもり」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これも吃音の一つです。
京都は、吃音の若者が集う自助グループ「うぃーすた」発祥の地です。うぃーすたの活動は京都から活動が広がり、今では日本各地に広まっています。
今回は「うぃーすた関西」の参加者でもあり、運営スタッフでもある渡谷さん、本田さん、森脇さん、上坂さんにお話を伺いました。
吃音は、簡単に言えば「なめらかに話すことが難しい症状のこと」を言います。吃音には例えば、「わ、わ、わたし」のように同じ音を繰り返す「連発(れんぱつ)」や、「わーーたし」のように音を引きのばす「伸発(しんぱつ)」、「・・・・わたし」のように、ことばを出せず、間が空く「難発(なんぱつ)」があります。
「吃音」という一言で表されますが、どのような吃音を持っているのかは人それぞれです。連発だけが出る人、難発と伸発が出る人、特定の言葉や特定の行を発話しようとすると症状が出る人もいます。うぃーすた関西に参加しているメンバーも様々な吃音を持っていて、症状が出やすいタイミングやその重さも様々です。
吃音について、吃音が出にくくなるような対処法はありますが、その原因や完治させる治療法はまだないと言われています。
うぃーすた関西の活動に参加しているのは、吃音がある 10 代〜 30 代の高校生~社会人の若者です。もともと、吃音のある人々が集まるグループは、日本全国に年齢関係なく参加できるものがありましたが、参加者の多くがご年配の方であるため、若者の参加者が馴染みにくい状況でした。進学に伴う新しい生活環境や就職活動等の場面で、吃音のある若者だからこそ直面する悩みがあったこともあり、同世代の同じ悩みを持つ人たちの居場所、交流の場として 2014 年に京都で「うぃーすた関西」が立ち上がりました。
「うぃーすた」のネーミングは英語で「どもる、吃音」を意味する“ stutter(スタッター) ”という単語と、私たちは吃音者であるという“ we are stutters! ”から「うぃーすた」と名付けました。2014 年 2 月に京都で立ち上がった後、同年 6 月には関東でも発足するなど瞬く間に日本各地に広まっていきました。
普段の活動の様子社会人の方
わたしは、大学進学後、就職活動のタイミングで本当に悩み、うぃーすた関西に参加するようになりました。吃音があっても学生生活ではなんとかなったのですが、就職活動ではどうしようと悩みました。例えば、吃音であることを就職先にカミングアウトするのか、どうか等です。先輩には「吃音」とは言わず、「話し始めのタイミング障害」だと伝えるのがいいといわれました。 社会人になってからは、例えば、会議で発言しようと思っても、今はしんどいなって、言えなかったりすることもあります。
大学生の方
友達と喋っていても、話したいタイミングで言葉が出てこなかったりすることがあります。アルバイトをしているときには、他のスタッフに「○○のオーダーが入ったよ」と伝えたり、受付で名前を呼ぶ場面で、思うように話せなかったりすることがあります。
平均月一回の頻度で、吃音のある若者が集まって自由に話す「例会」を開催しています。場所は京都・大阪・神戸を中心に、参加者はうぃーすた関西の HP や SNS で募集しています。うぃーすた関西のメンバーでなければ参加できないというわけではなく、吃音のある若者であれば、どなたでも参加できます。参加人数は回によって異なりますが、10 名〜30 名程の参加者が集まっています。 例会は、カフェやレンタルスペースを借りて例会を開くこともあれば、お花見や遠足に行くこともあります。例会では、4〜5 人の小さなグループに分かれて、自由にグループトークをします。グループトークでは話しやすいように、自己紹介をして、そのあとは自由に話をしています。「吃音のことを周囲にカミングアウトしていますか」や「言いにくい言葉は何ですか」といった吃音に関する質問が書かれたカードを使い、グループトークを行うこともあります。
また、うぃーすた関西は不定期ですが、「吃音」を伝える活動をしています。吃音は子どもで 100 人に 8 人が、大人では 100 人に 1 人*2の割合で発症していますが、吃音というものをまだ知らない方もいらっしゃいます。飲食店でアルバイトをしていると、お客様から「話し方を直した方がいいよ」といわれることもあり、まだまだ吃音が知られていないと感じることもあります。
うぃーすた関西は、大阪の梅田駅前で「吃音について知っていますか?」というボードをもって、吃音について啓発する活動をしたり、時にはイベントで司会を務めたり、イベントでカフェの店員をするなどして、吃音を知ってもらう活動もしています。
*2国立障害者リハビリテーションセンター2-1.吃音の疫学研究よりうぃーすた関西の活動に参加するようになってから、「吃音があっていいんだ」と思えるようになりました。うぃーすた関西に参加するまでは、周りに吃音のある人がいませんでしたが、うぃーすた関西には吃音を持った同世代の人がたくさんいます。そこでは、吃音があっても例会で司会をしたり、接客業のアルバイトをしているという人にも出会いました。そんな生き方を知って、自分も挑戦をしてみたり、やりたいことができるようになったな、と感じることが増えました。高校生までは吃音があることでふさぎ込んでしまったり、負い目を感じることもありましたが「吃音のある自分」を認めることができるようになった気がします。
編集後記
うぃーすた関西は、今、新しい取り組みをしようと、京都市市民活動総合センタ―が主催する「市縁堂2024」に参加しています。これまでうぃーすた関西の活動場所は、京都・大阪・神戸といった都心部でした。しかし、都心部で開催する課題として、「遠方からの参加が難しい」という点があります。吃音のある若者は、どこにでもいるはずと考えて、今後地方部でも例会を開きたい、と語っていました。
若い吃音者が孤立することなく、社会とのつながりを築ける場を提供するために、うぃーすた関西の挑戦は続きます。
うぃーすた関西の活動を、寄付で応援してくださる方は市縁堂の特設サイトをご覧ください。
団体名 | うぃーすた関西 |
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団体について |
うぃーすた関西は、吃音がある 10〜30 代の方を主な対象とした、「分かち合いを通した参加者同士の理解・共感ができる場」の提供を目的としたサークルです。吃音は約100 人に1人くらいいるとされていますが、日常生活の中で吃音者同士が交流する機会は限られています。そこで、うぃーすた関西では、同世代の吃音者が気軽に集まり、安心して交流し合える場所を目指しています。 <具体的な活動> |
メール | we.stu.kansai@gmail.com |
Web サイト | https://we-are-stutt.jimdofree.com/ |
https://x.com/westu_kansai | |
https://www.instagram.com/westu_kansai/ |
団体名 | 京都市市民活動総合センター |
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名前 |
松浦 旦周 事業コーディネーター |