子どもによる子どもの映画祭

掲載日:2024 年 3月 29日  


あなたの思い出に残っている映画は何ですか?

映画とともに、当時の自分、一緒に見た人や映画を見たその日の思い出も一緒に蘇ってきます。
映画を通して目の前の現実から離れて遠い何かを追体験したり、感情が豊かになったり、心がふるえたり、考えさせられたり。
「この一本の映画で人生が変わった」という方もいるでしょう。

今回、スポットライトをあてるのは、映画を鑑賞する、映画を制作する、映画祭をつくりあげる、様々な形で映画を通して子どもたちの成長を支える「キンダーフィルムフェスト・きょうと」さん。
理事長の藤原杏奈さんにお話を伺いました。

このページのコンテンツは、特定非営利活動法人キンダーフィルムフェスト・きょうと 藤原 杏奈さんにスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

「京都国際子ども映画祭」とは

「京都国際子ども映画祭」は 2024 年で 30 回目の開催となります。
ドイツで開催されている「ベルリン国際映画祭」の中で、「ジェネレーション部門」というものがあり、そこでは子どもたちが審査員となってグランプリ作品を決めるんです。 子どもたちが議論して決めていく過程がとても面白く、日本でもやりたいということになり、京都では私たちが開催しています。 「子ども審査員」だけでなく、子どもたちに映画を通じた経験や学びの提供を検討した結果、現在行っているその他のプログラムができあがっていきました。
子どものスタッフが映画祭自体を運営しているのは「京都国際子ども映画祭」だけではないでしょうか。

藤原さんの映画に対する思い、映画への恩返し

私が「キンダーフィルムフェスト・きょうと」に関わったのは 2015 年からです。
子どもの時から映画が好きでした。それは、母と一緒に映画館で見た映画の思い出と、映画館からの帰り道のことがセットで刻み込まれていて、その経験が私にとってとても大事なものでした。

学生になってからも、映画研究部に入って映画をつくったり、映画館でアルバイトをしたり、映画と関わった生活を送っていました。
社会人になってからも、これまで映画に助けられてきた人生で、映画に何か恩返しをしたいという思い、そして私自身の子どものときの経験を重ね合わせたときに、「京都国際子ども映画祭」にたどり着きました。

私がやりたかったことにぴったり合うと思って参加したのが、「キンダーフィルムフェスト・きょうと」に関わったきっかけです。

テレビやスマホで見る映画と映画館で見る映画との違いとは?

大きい画面や音で感じる迫力で受け取り方が違うということもありますが、様々な人たちと同じ空間を共有することが映画館の魅力だと思っています。
みんなで同じところを見つめて、面白い場面があったら、みんなで笑いあったり、逆に私が全然笑わないとこで他の人は笑っていたり、泣くポイントもみんなそれぞれ違ったり。そうした感じ方の違いを、映画を通して知ることができる場所です。

映画祭の様子

「キンダーフィルムフェスト・きょうと」での藤原さんの関わり方

ボランティアとして参加した初年度は、映画祭当日の運営の手伝いでした。その後、月に一度行っている「子どもスタッフ会議」に参加するようになりました。

子どもスタッフ会議

「子どもスタッフ会議」では、「京都国際子ども映画祭」に向けて、1 年間かけて準備をしています。映画祭のオープニングでは、「子どもスタッフ会議」に参加している子どもたちが作る映画を上映するのですが、その制作をしたり、その他にも映画館でよくある「マナーを守ってみてね」というCM の制作や、映画紹介文を書いてもらっています。

映画制作ワークショップの様子

2023 年は、映画祭で上映する映画の監督さんと Zoom で繋いで監督さんと子どもたちがお話し、その映像を映画祭で流しました。 「子どもスタッフ会議」では、子どもたちがオープニングムービーを作るサポートをしたり、映画を一緒に見て、映画の感想を共有しあったりと、子どもたちを見守る関わり方をしていました。

その後、理事にも就任し、本格的に運営に携わるようになりました。
現在は理事長となり、「キンダーフィルムフェスト・きょうと」に関わってくれている人がそれぞれのやりたいことを実現できるように試行錯誤しているところです。
子どもたちのサポートをする大人スタッフが大学生から 60 代までの方がボランティアとして参加してくれています。私がそうだったように、それぞれの方の思いを「キンダーフィルムフェスト・きょうと」を通して形にしてあげられたらと思っています。

去年から参加している大学生スタッフの一人は、映画の配給の仕方を学びたいということで、今年からは、海外の配給先と連絡を取り合ってもらう役割を担ってもらっています。
もう一人の大学生は子どもに興味があるということで、主に「子どもスタッフ会議」で子どもたちと一緒に活動してもらっています。
みんなが楽しんで活動することは前提ですが、一人ひとりがやりがいを持って活動してくれるにはどうしたらよいかを考えています。

「キンダーフィルムフェスト・きょうと」に関わる子どもたち

「京都国際子ども映画祭」以外にも、脚本、演技、撮影・編集の 3 つのワークショップをセットで行う「制作ワークショップ」や、ミニシアターで映画を鑑賞し、その後ミニシアターのスタッフの方と一緒に映画について語る「鑑賞ワークショップ」、映画祭で上映する映画で生の吹き替えを行うためのレッスンをする「吹き替えワークショップ」などを開催しています。

演技ワークショップの様子

子どもたちが何気なく見ている映画がどんなプロセスで作られていて、それぞれどんな意図があるのかを身をもって体験してもらうことで初めて理解できるところもあると思います。

「子どもスタッフ会議」に参加している子どもたちは、小学校 2 年生から高校 3 年生まで幅広いのですが、上下関係なくてすごく仲が良いです。
学校や習い事だとどうしても比べられたり、競争意識があると思うんですけど、そういったところとは違う居場所になっているのだと思います。
みんなそれぞれ心地よくて来てくれていると思いますし、私たちも「誰も否定されない場所であり、自分がやりたいことをできる場所」を目指しています。

子どもスタッフ会議の様子

この活動自体が自己表現の場であり、そこに大人スタッフの見守りもあります。こうしたことが、自分が認められ、そして他の人のことも認める風土に繋がっているんでしょうね。

また、「京都国際子ども映画祭」の本番では、「ベルリン国際映画祭」と同様に「子ども審査員」が、映画各部門のグランプリを決めるために議論をします。
この中には一つのルールがあり、それは「多数決にはしない、みんなが納得するまでとことん話し合って決める」というものです。 映画祭だけではなく、意見が対立した時にいかに自分の主張を伝えるか、相手のことを受け止めるか、そうした対人関係の中での寛容性が短期間で見られるんです。

子ども審査員による審査

こうした様々なプログラムを通して子どもたちが成長している様子を見られるのが私の一番のやりがいになっています。
子どもたちの生き生きとした笑顔を見ていると、これからも大変なことがたくさんあると思うけど、少しでも「キンダーフィルムフェスト・きょうと」での経験がこの先に繋がってくれたら嬉しいなと思って続けています。


映画を含めて文化的なものは生きていくために必須ではないかもしれません。でも、あれば生きていく上で糧になる、人生が豊かになるものだと思っています。

「京都国際子ども映画祭」は子どもでも楽しめる海外の映画を上映していますが、もちろん大人の方も楽しんでいただける映画祭です。ぜひ一度足を運んでください。


今回スポットライトをあてた団体・個人

特定非営利活動法人キンダーフィルムフェスト・きょうと 藤原 杏奈 (ふじわら あんな) さん

理事長

団体名 特定非営利活動法人キンダーフィルムフェスト・きょうと
代表者 藤原 杏奈
所在地 〒604-0931 京都府京都市中京区二条通寺町東入榎木町 87 番地
団体について

「子ども」「芸術・文化」「国際交流」に関わる個人や団体との交流・支援事業と、映画芸術の鑑賞および制作活動、子育て支援活動及び子どもが自ら主体的に動く活動を通して、子どもの異文化交流・理解を深め、社会参画の機会拡充を図るとともに、子どもたちの豊かな成長と生活文化環境の向上に寄与することを目的としています。
映画鑑賞や映像制作ワークショップの活動を通して、たくさんの子どもたちが活動できる場を提供しています。

電話 075-212-8612
FAX 075-212-8612
メール kinder.kyoto@gmail.com
Web サイト https://www.kff-kyoto.com/
Twitter https://twitter.com/KINDERFILMFEST
Facebook https://www.facebook.com/kinderfilmfestkyoto
Instagram https://www.instagram.com/kinderfilmfestkyoto/
Youtube http://www.youtube.com/@user-uf3gr9ng6w

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 真鍋 拓司

副センター長補佐



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