ファッションを通して多世代が自然に関われる場をつくる

掲載日:2022 年 3月 25日  


地域社会が抱える様々な課題解決のために、「多世代が交流し、互いに支えあえる地域づくり」を進めようと、多くの地域で、多様な取組みがなされています。

そのような中、とてもユニークな手法で多世代交流を進めている団体が、今回紹介する「KASANEO」さんです。「KASANEO」は、京都文教大学地域連携学生プロジェクトとして、京都文教大学の学生を中心に他大学の学生や地域の高齢者の方々とともに、多世代交流を生み出すための活動を行っています。

2020 年度・2021 年度代表の小宮山葵紗さん、2022 年度共同代表の橋本望さんにお話を伺いました。

このページのコンテンツは、KASANEO 小宮山葵紗さん(左)、橋本望さんさんにスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

世代を超えた共通の話題「ファッション」

家庭や地域など、自分が育った環境で高齢者の方と触れ合う機会が少なかった現在の大学生世代では、高齢者と何を話せばよいのか、どう接したらよいのか分からず、多世代交流にハードルを感じている人も少なくないといいます。

そこで「KASANEO」では、多世代交流を生み出すためには「共通の話題」が必要だと考え、「ファッション」というテーマに注目して、活動を行っています。

KASANEO FES「展示会」

衣服と「想い出」の共有

「KASANEO」では、高齢者の方が昔着ていた衣服を、ファッションショーや制作している雑誌、展示会などで、着ていた当時の「想い出」とともに紹介し、ファッションを通じた多世代交流の場づくりを行っています。

高齢者の方に衣服を提供してもらう際に聞き取った当時の「想い出」をもとに、ファッションショーでは当時流行っていた音楽を流したり、展示会の空間づくりを行うことで、衣服以外でも当時の様子を感じてもらい、多世代交流を促す工夫をされているのだそうです。

KASANEO FES「ファッションショー」

提供された衣服は、学生が今風の着こなしを考え、スナップ撮影イベントやファッションショーで披露。高齢者の方からは、「この服なつかしい!」と、ご自身が若い頃に着ていた服からその当時を思い出したり、「若い頃に着ていた服を素敵に着こなしてくれて嬉しい!」と、そこから自然な交流が生まれているとのことで、ファッションに関心を持つ人の多い大学生世代との交流に、衣服が媒体として存在する意義を感じます。

「想い出」を引き継ぐ

「KASANEO」では、提供いただいた衣服を団体内に残すのではなく、次の持ち主へと引き継ぐため、衣服の紹介だけではなく、「ほしい理由オークション」を行なっています。
「ほしい理由オークション」は、お金ではなく、「ほしい理由」でオークションを行います。紹介された衣服を受け継ぎたいと思った参加者が「ほしい理由」を発表し、高齢者の方々が審査員となり、受け継いでもらう人を決定し、「想い出」として衣服を引き継いでいます。

ほしい理由オークション

現在、ファストファッションと呼ばれる大量生産・大量消費の中で、衣服を安く買って、流行が過ぎたらすぐ捨ててしまう、という風潮があります。しかし、高齢者の方から提供いただく衣服に込められた思いは、ファストファッションとは程遠いものでした。
「KASANEO」では、高齢者の方大切にされてきた衣服への思いに触れることや、その思いを引き継ぐ場も大切だと考え、こうした活動を行なっています。

多世代交流とまちの魅力発信

これまでは、コアメンバーが所属する京都文教大学の学内で活動を行なってきましたが、より地域の方の多世代交流を生み出そうと、宇治市の市街地へ活動場所を展開されています。
雑誌制作では、衣装に合う地域のお店や風景を見つけて、そこでスナップ撮影イベントを行なったり、展示会では会場を3カ所に分けて、まちを巡ってもらい、魅力を発見してもらえるように工夫しています。
こうした取組みにより、地域の方々から多くの参加をいただくとともに、メディアにも取り上げられたことにより、地域内外の高齢者の方から衣服の提供のご連絡をいただくことがあったりと、活動の広がりを実感されています。

スナップ撮影イベント

より多くの世代の方との交流を

現在は、65 歳以上の高齢者の方と学生との交流の場を中心につくってこられた「KASANEO」ですが、今後はより多くの世代を巻き込んだ交流を行っていきたいと考えられており、特に、30 代・40 代の層へのアプローチを強化するため、Instagram や TikTok など情報発信媒体の活用や、定期的なイベントの開催を企画されています。

「KASANEO」では、「想い出」のある衣服の提供をはじめ、一緒にイベントなどを企画・運営してくださる高齢者の方や、モデル・カメラマンとして関わる学生スタッフを募集しています。ぜひ一度、団体の SNS から、素敵な衣装と活動の様子を覗いてみてください。


今回スポットライトをあてた団体・個人

KASANEO 小宮山葵紗さん(左)、橋本望さん (右) さん

団体名 KASANEO
代表者 橋本望
団体について

「ファッション」を通じて幅広い世代で交流できる場づくりを目的とする KASANEO では、高齢者から着なくなった衣服を当時の「想い出」とともに提供してもらい、学生が今の感覚で着こなしを考え、ファッションショーや作成した雑誌、展示会などで紹介します。

超高齢社会と言われる今、衣服を「物」としてではなく「想い出」という付加価値をつけて発信することで、人と人とを繋ぐ媒体となり、世代を超えたコミュニティを生み出します。

Twitter https://twitter.com/kasaneo1
Instagram https://www.instagram.com/kasaneo.2018

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 真鍋拓司

事業コーディネーター



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