「全ての人に、イキテルを。」
この理念のもと、京都を拠点に、全ての若者が安心して輝ける「居場所」ある社会を目指して活動している「学生団体 SMILE」現代表の男子学生にお話を伺いました。
「学生団体」とは、一般的には、様々な大学から学生が集まり、社会的意義や目的を掲げて活動を行っている団体を指すことが多いとされています。
学生を中心に構成されていることから、大学生という限られた時間の中で、学業と両立しながら、活動を考え実施しなければなりません。今回のスポットライトでは、活動紹介だけでなく、取材を通して感じた「学生ならではの活動の意義」や、「悩みに向き合いながら前進する学生たちの姿」をレポートします。
※ 団体の活動内容等は、執筆時点(2021 年 8 月)での情報になります。
学生団体 SMILE さんは、2014 年に設立されました。現在は、京都の大学生を中心に、13 名の学生スタッフで運営されています。他都道府県の大学生や高校生もスタッフとして参加されているそうです。
学生の自己肯定感を高め、社会との関わりや自己成長を促すための取組みを行なってきた学生団体 SMILE さん。運営する学生スタッフの「変化」や、その時代の社会状況などに応じて様々な活動が創出され、また、団体内での定期的な勉強会も行われてきました。
今回は、その中でも 2019 年から始まった大学生向けコミュニティ「Miles」という活動に焦点を当て、お話を伺いました。
「Miles」では毎週水曜日の 18 時 30 分から 21 時まで、「学び舎 傍楽」の場所をお借りして開催されている「居場所」活動です。
「Miles」の活動中は、学生スタッフが考案するワークショップが行われつつ、一方で、参加している学生が自由に過ごせるコーナーが確保されています。
活動でのワークショップは、毎回担当する学生スタッフが目的や手法などを考えて実施しています。
例えば、「今自分が知りたいこと」「聴きたいこと」をカードに書いて並べ、その中から参加者が気になるテーマを選択し、話し合うもの。
担当する学生スタッフがテーマを提示し、そのテーマを「絵」で表現するもの。
ワークショップは、担当する学生スタッフの「個性」や「想い」が垣間見えます。
「Miles」の活動終了後には、団体の全体ミーティングを設けて、すぐに「Miles」の活動で良かった点や改善点を話し合い、ミーティングの内容を次回の「Miles」に反映しているそうです。
これは、「Keep (これからも続ける良かったこと)」、「Problem (改善すべきこと)」、「Try (試したいこと)」、「Action (実行すること)」という KPTA サイクルをもとに実施されています。
そして、「Miles」の特徴として、ワークショップに参加をするかしないかは、「参加者が決める」ことができます。例えば大学での課題があれば、同じ場所で課題に取り組んでいてもかまいません。
運営スタッフも、参加者も、全員が自分の距離感で関わり合えたり、話し合えたりできる。
優しくて温かい雰囲気を大切にされ、「楽しい」「うれしい」「居心地がいい」などと感じてもらえるような環境づくりを意識されています。
「Miles」に参加されている学生の思いを伺うと、新型コロナウイルスによる影響が感じられました。それは、「友達がいないことがしんどい・残念である」と感じている学生が多いということです。
大学生という立場は、これまでの中学生や高校生の立場とは異なり、自分のやりたいことや行ってみたい場所などを自由に選択でき、様々な人・場所との出会いも増える大切な期間です。
しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、大学の講義の大半はオンライン授業に変更され、加えて入学式や新入生歓迎会、文化祭といった大学生にとって重要なイベントも中止されました。
これらの措置により、同級生や先輩と「出会う」「話す」というこれまでの「当たり前」に大きな制限がかかり、先行きの見えない大学生活への不安につながっています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、学生団体の運営にも影響を与えています。
先述した新入生歓迎会は、学生団体にとって活動を「知ってもらう」「参加してもらう」広報活動の絶好の機会ですが、中止になる大学は多く、紙媒体でのチラシを配ることも控えるように求められています。
学生団体 SMILE さんは、Facebook・Twitter・Instagram といった SNS で発信し続けているものの、コロナ前と比べると、広報の効果は減っているそうです。
その一方で、オンラインでの「Miles」やイベント開催をきっかけに、運営スタッフが増え、他府県の学生が参加してくれるという良い効果も生まれていることは確かです。
この大学生向けコミュニティ「Miles」は、
これまでの大学生活において当たり前であったコミュニケーションが簡単には取ることができない現在だからこそ、大学生同士が出会い、語り合える重要な「居場所」という役割を果たしているように思います。
全国の大学生に知ってもらい、今後も継続してもらいたい活動だと感じました。
取材の中で、「団体を運営するということは、想像以上に力や時間を使い、努力をしなければならない」という言葉がありました。
大学生の期間は、1年1年の積み重ねによって、考えや行動に変化が起こりやすい、自己形成の時期であると考えられています。
これまで知らなかった環境、社会の状況、海外などの「外に目を向ける」こともあれば、就職活動が近づくにつれて、自分自身は将来どんなことがしたいのか、何に価値を感じているのか、改めて自分の「内面に目を向ける」こともあります。
それぞれの運営スタッフの学生が「重視したい方向」と、本業の「学業」との両立の中で、居場所づくりという目的に対して団体を運営することの「難しさ」。
その難しさに加えて、「コロナ禍という中でどのように活動を進めていくのか」という新たな壁が立ちはだかっています。
学生スタッフはもちろん、参加者が新型コロナウイルスに感染しないためにも、これまで行っていた活動の実施を断念したものもあるといいます。
現代表の男子学生は、このような「難しさ」に向き合ううちに、「学生団体 SMILE が、運営する学生スタッフにとっての『居場所』にもなってほしい」という思いも強くなったと語ってくださいました。
そのために、運営する学生スタッフ向けのオンライン交流会なども実施されたそうです。
ただこれまでの活動を実施するだけではなく、運営する学生スタッフ同士の協力や、話し合いの中での活動目的の共有は、団体を継続するためには欠かせないことではないでしょうか。
コロナ禍で活動の制限がある今だからこそ、「運営面の基盤作り」にも目を向けられている姿勢が感じられました。
運営における基盤も、これからの活動も、さらにパワーアップした学生団体 SMILE さんへと前進される姿が、とても楽しみです。
(編集後記)
私自身も、学士課程の時には、NPO 法人の学生団体に所属していました。
活動の運営にも携わりましたが、関わっている学生それぞれの「個性」や「思い」が強いからこそ、意見が異なることが何度もありました。その一方で、異なる意見を持っているからこそ話し合いを重ねた結果、面白い活動の創出や、学生同士の結束力の強まりにつながった経験もしました。
学生団体の特徴は、「大学生だからこそできること」、「大学生ならではの視点」が生まれること。
様々な状況や出来事にもがきながらも、そこに立ち向かっていく学生の活動は、社会の課題解決だけでなく、コロナ禍という壁を越えることにもつながっていくのではないでしょうか。
学生団体 SMILE さんをはじめ、多くの学生団体の活動に期待し、応援し続けたいと思います。
団体名 | 学生団体 SMILE |
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団体について |
「全ての人に、イキテルを。」を理念に、全ての若者が安心して輝ける居場所ある社会を目指して、京都市を中心に活動しています。 メンバーの所属大学や学年・学部は異なりますが、メンバー全員が活動や居場所に対して、真面目に、真剣に考えつつ、温かい雰囲気に包まれている団体です。 |
メール | smile.memory5@gmail.com |
Web サイト | https://smile-memory.jimdo.com/ |
http://twitter.com/smile_memory5 | |
https://www.facebook.com/smileworld5 | |
https://www.instagram.com/smile.memory5 |
団体名 | 京都市市民活動総合センター |
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名前 |
奥野 智帆 サブ事業コーディネーター |
Web サイト | http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/ |
https://www.facebook.com/shimisen |