コロナ禍と市民活動 ~ 京都から世界平和を願って ~

掲載日:2021 年 2月 26日  


今年 (2021 年) 1 月、しみセンに、ある市民団体から SOS のメールが届きました。コロナ禍で存続の危機に陥っているというのです。
お話をお聞きして驚いたことに、その団体は 70 年以上の歴史があり、活動の規模もかなり大きなものでした。企業からの寄付やイベントの開催で運営を行って来ましたが、コロナ禍でイベントの中止が相次ぎ、事業による収入が途絶えてしまったとのこと。法人格をもたない任意団体であるがゆえに「持続化給付金」、「家賃支援給付金」を受けることもできず、運営が行き詰まっています。
しみセンでも、京都にこのような形で運営されている団体があるということをこれまで承知しておらず、団体側でも今回、どこか相談できるところを、と必死で検索して、しみセンにつながってくださったそうです。
歴史ある団体や、社会のために価値のある活動を行う団体が、このような形で存続できなくなってしまう可能性に危機感を覚えつつ、取材させていただきました。

このページのコンテンツは、日本国際連合協会京都本部 にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

日本国際連合協会京都本部の歴史

今回連絡をくださったのは、日本国際連合協会京都本部 (以下、国連協会京都本部) 。理事長で京都外国語大学教授 (前副学長) の熊谷俊樹さんと、事務局の本波佳由さんにお話を伺いました。

国連協会というのは、民間レベルで国連の活動を支え、啓発活動等を行う組織。現在全国に 26 団体が活動しています。京都本部が発足したのは、戦後間もない 1948 年。敗戦国であった日本は、当時まだ国連に加盟することを許されていませんでしたが、市民の間では「国際社会復帰」と「世界平和への貢献」を求める機運が高まっていました。

京都では、一燈園の西田天香氏 (1872-1968)、京福電鉄の社長であった石川芳次郎氏 (1881-1969:京都市名誉市民) が中心となって声を上げ、時の京都市長であった高山義三氏 (1892- 1974) の後押しを得て、他の地域に先駆けて全国で初めて立ち上がったのが、国連協会京都本部だったのです。

西田氏は事務所の場所や活動費を提供、石川氏は家族に事務局運営の協力を得るなど、非常に熱心に活動をバックアップしました。1952 年には、日本の国際連合協会が国際連合協会世界連盟 (WFUNA ※国連の活動と精神の普及を目的とする各国の民間団体の連合体) に正式に加盟。さらに 1956 年、ようやく日本が、国として国連への加盟を認められるところとなりました。そこに至るまでには国連協会京都本部を支える京都の民間人の大きな功績があったといいます。

敗戦国であった日本の国連加盟が当時の人々にとってどれだけの希望をもたらすものであったかは想像して余りあるものがあります。

これまでの活動

以来、国連協会京都本部では、国連軍縮会議のサポートを行ったほか、

  • UNHCR (国連難民高等弁務官事務所) の活動支援のための国連音楽会の開催
  • 国連英検 (英語力に加え、国際情勢への理解力が求められる英語検定試験) の実施協力
  • 京都国連寄託図書館 (国連との契約の下、国連の文書や刊行物を収受、所蔵し、地域に開放する施設) の運営
  • 国連公開講座 (国際社会について考える公開講座) の実施
  • 模擬国連会議 (学生が各国の大使になりきり、実際の国連の会議を模擬する活動) への協力
  • 中高生を対象とした平和についての作文・主張コンクールの実施

など、国連の取組みを支え、広く伝えるための様々な活動を行ってきました。

国連公開講座の様子
京都国連寄託図書館

しかし、今回のコロナ禍で、昨年は例年行ってきたほとんどの事業が中止となり、運営資金や維持費の財源が絶たれることとなりました。

また、コロナ禍に苛立つ一部の人たちによる、ネット上での国連に対する「バッシング」も目立つようになってきたといいます。出所の不明な情報に振り回されるのではなく、国連の行っていることを正しく知って欲しい。そのためには、この機にもっと積極的に情報を発信して行かなくては、と本波さんはおっしゃいます。

これからのこと

「こんな状況ですが、やりたいことはたくさんあるんです」と本波さん。 その一つが、国連の取組みをわかりやすく伝えるパンフレットをつくり、京都の小・中学校に配布する、という計画です。若年のころから国連の活動や世界平和に関心を持ってもらい、国際的に活躍するより多くの人材を京都から育てて行きたいとのこと。

また、最近いたるところで目にするようになったSDGs (Sustainable Development Goals:国連で採択された「持続可能な開発目標」) も、表面的な知識で終わらせるのではなく、しっかりとした理解のもと、社会の中で実践されるものとして広めて行きたいと考えています。

平和について


最後に、お二人が考える「平和」について、お聞きしてみました。

熊谷さんは、2015 年に発生したネパール大地震の際に、家と家族を失った子どもたちのために、京都外国語大学からシェルターを寄贈した時のことをお話しくださいました。

「シェルターの贈呈式を現地 (ネパール) で開催するので、ぜひ来て欲しい、という連絡をもらい、雨の中、舗装されていないでこぼこ道を何時間もジープに揺られて、ネパール山奥の村を訪ねました。シェルターの中には、たくさんの子どもたちがいましたが、机もないので、皆、床で字を書いたりしていました。電気もトイレもなく、外には蛇も出るような場所なのですが、“住むところがあるから大丈夫!”と、子どもたちは元気で明るいのです。」

日本では考えられないような状況のなかで、たくましく生きる人々の姿が強く印象に残った、という熊谷さん。

「世界には紛争や災害などにより、さまざまな状況に生きる人たちがいますが、そうしたことに目を向けることで初めて、“日本の平和”の尊さがわかるのではないでしょうか。恵まれた状況を当たり前と思い、ぼんやりしていてはいけないと思います。とくに若い人たちには、積極的に海外に出て、そうしたことを肌で体験して欲しい、と思います。」

シェルターの子どもたち

一方、中学高校時代ミッション・スクールに通っていたという本波さんは、毎日下校前に唱えていた「わたしを平和の道具としてお使いください」という「平和の祈り」が心に沁み込んでいるそうです。

「自らの心に平和があるかどうかがとても大切。相手を思いやる心、未来の人たちを思いやる心がなければ、平和とはいえないのでは。“よき隣人として平和に暮らすことができる社会”という国連憲章の理念を、ぜひ身近なものとして子どもたちに学んで欲しいと思っています。」

団体として、実現させていきたい夢がたくさんありますが、まだ活動を継続するための資金の目途が立っていません。京都に 70 年以上続く活動を絶やさないために、団体では現在、活動支援の寄付を呼び掛けています。

日本国際連合協会京都本部 

右:熊谷俊樹さん
  国際連合協会京都本部理事長、京都外国語大学教授(前副学長)

左:本波佳由さん
  国際連合協会京都本部 事務局職員

※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2021年2月) の情報です。

団体名 日本国際連合協会京都本部
代表者 大谷 光真
所在地 京都府京都市中京区
団体について

国際連合協会は世界 100 カ国以上にあり、公益財団法人 日本国際連合協会の都道府県本部のひとつとしての位置付けですが、その運営は財源を含め各都道府県本部独自によるもので、京都本部は任意の民間団体としてオリジナルな事業を行っています。

「京都から世界平和を願って」をスローガンに、国際情勢に関する講演会やシンポジウム「国連公開講座」の開催、UNHCR ( 国連難民高等弁務官事務所 ) 支援のための「国連音楽会」、留学生を招待しての「国際親善のつどい」の開催、京都国連寄託図書館の運営、中高生に対する「国際理解・国際協力のための作文コンテスト (京都府予選) 」の実施、国連英検 (京都会場) の実施、ユニセフ(国連児童基金)ビデオライブラリーの管理 などを行っています。

電話 075-211-3911
メール unakyoto@pearl.ocn.ne.jp
Web サイト http://unakyoto.ec-net.jp/wordpress/

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 吉田智美

事業コーディネーター

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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