障がいのある方が地域で安心して暮らせるためのお手伝い

掲載日:2020 年 8月 28日  


今回ご紹介するのは、心の病のある人が地域で安心して暮らせるよう、西京区を中心に活動されている「NPO法人なんてん」さん。

1997年当時、心の病のある人への制度がなく、社会の障がいへの理解がないという状況の中、当事者の方や地域の関係団体が連携して立ち上がった団体です。

今回は、NPO法人なんてんの職員の皆さんに、団体や活動について伺いました。

このページのコンテンツは、特定非営利活動法人 なんてん にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

親たちの集いから始まった心の病をもつ人の居場所づくり

NPO 法人 なんてんは母体となる「心の病をもつ人が地域で安心して暮らせるようにする会」から始まりました。
「心の病をもつ人が地域で安心して暮らせるようにする会」は、心の病をもつ人のご家族をはじめ、西京区の社会福祉協議会や保健所が中心となった任意団体で、1997 年に発足しました。

保健所での定期的な相談会に参加していたご本人やご家族が、何もサービスや制度がない、障がいへの理解もないという状況に対して、地域の中で資源をつくっていこうと関係機関に声をかけて共同作業所「友輪館」をスタートさせました。

現在、自立訓練 (生活訓練) 事業と就労継続支援 B 型事業を行っている「友輪館」はここから来ています。この「友輪館」には当初、手と手がつながっているロゴマークがあり、みんなで手を取り合っていきましょうという意味が込められています。

共同作業所を含め、いろいろな活動を行うにあたって法人格が必要だということで、現在の NPO 法人 なんてんができました。

必要に駆られて行ってきた事業展開

共同作業所からスタートした団体ですが、心の病をもつ方のために何が必要だろうと考え、友輪館で行っている自立訓練 (生活訓練) 事業と就労継続支援 B 型事業のほかに、「京都市こころのふれあい交流サロンにしきょう」、「京都市西部障害者地域生活支援センター西京」、「訪問介護ステーション笑み」の 3 つの事業所の運営も行っています。

共同作業所の次に立ち上げたのがふれあいサロンです。
心の病をもつ方は、病気の影響で引きこもりがちになったり、人との関わりや外で働くことが難しいところがあるので、社会とつながる第一歩としてもらう目的で活動しています。
サロンでは、レクリエーションの場になっている他、生活相談会を行ったりしています。

次にできたのが地域生活支援センターです。
地域生活支援センターはいわゆる調整役です。障がいのあるご本人やご家族から困りごとをお聞きして、必要なサービスを地域の関係機関と調整します。西京区と右京区にお住いの方が対象で、この西部には 3 つの地域生活支援センターがあるのですが、元々心の病をもつ方に特化したセンターだったこともあり、信頼をしていただいていて、現在も心の病のある方のご相談が多くなっています。

そして、2006 年に訪問介護ステーション笑みができました。
ここでは、障がいを持つ方が地域で生活するうえで抱える身近な困りごとに対して支援するために、ホームヘルパーを派遣しています。ホームヘルパーというと高齢者への介護をイメージされる方が多いかもしれませんが、障がいの方を相手にしているものはイメージと違うかもしれません。
特徴的なものとしては移動支援があります。本人が希望する外出先に同行して、安全に楽しく過ごせるよう心掛けています。

自分を表出し、受け入れられること

友輪館での活動について教えてください。

最初はとにかく居場所としての機能が大きかったのですが、福祉施設での清掃作業など、地域の方に活躍しているところを見てもらえるような、外での仕事を大事にしてきました。
また、メンバーさんの過去の体験を話してもらう場を積極的に設けています。

例えば、実習の受入を行っている看護の専門学校に伺って、メンバーさんの話を聞いてもらう機会をいただいています。
最初はどきどきしている様子でしたが、堂々と学生さんの目の前で話しています。話を聞いた学生さんが感想を聞いてくださって、メンバーさんに伝えると、とても喜んでいました。

自分のことを振り返る機会にもなっていますし、改めて自分の障がいへの理解も深まりますし、学生さんへの気づきにもつながり、お互いに大切な経験になると思っています。
メンバーさんが自分の言葉で伝えることで、聞いてくれている人の理解も深まりますし、本人の自信にもつながっていると思います。
家に引きこもりがちだった人でも、本当は人と話したい、関わりたいという思いを持っていて、自分のことを知ってもらえたという嬉しさを感じていたり自信がついてきました。



人前で話す、自分を出すということが今までの人生の中でしんどかった人たちがたくさんいると思います。そうして自分を閉じていた人たちが、人前で話すことはこんなに楽しいんだ、みんなが自分のことを注目してくれることはこんなに嬉しいんだ、こういうことを少しずつ実感していっています。

勝手な私たちの価値観で、そういう人は話したくないのかな、前に出るのは嫌なのかな、と思いがちですが、実はもっと話したくて、もっとみんなと関わりたくて、もっとこんなことをしてみたいという、私たちが思っている以上の前向きな思いを持っているので、私たちはどう手を差し伸べていけるのかを考えています。

お話しすることで、あの人はこんなことが好きだったんだ、こんな面白いところがあるんだ、と自分だけの世界ではなく、相手のことを知るきっかけにもなって、つながる仲間関係ができていきます。自分を表出していくことで世界が広がるという良さがあると感じています。
こうして自分のことを話せるというのは、ここが安心できる場だと感じてもらっているからだと思いますので、そうした場であり続けたいと思っています。

開かれた作業所と広がり始めた地域の輪

そんな活動の中、友輪館の日々の活動に共感してくださった亀岡市でフラワー事業 (Green Heart) を営む京谷氏にご協力いただき、2019 年 4 月からフラワーアレンジメント事業をスタートさせました。
今までの委託作業ではなく、友輪館が立ち上げた作業なので、自由に製作・販売ができます。そして、その事業活動の中で、いろいろなつながりができています。

自分がつくったものを買ってくれる人がいると嬉しいですよね。認めてもらった感じがして、それも自信につながっていますし、販売の時には対応の仕方や挨拶の仕方を学ぶことができます。
花で人と人とをつなぐということで、いろんなところに参加させてもらっています。



フラワーアレンジメントとは別に、シトラスリボンプロジェクトにも参加しています。
シトラスリボンとは、「地域・家庭・職場 (or 学校)」を示す「三つの輪」をつくったリボンのことで、感染した方が悪かったというイメージや偏見をなくしたい、感染した方がそれぞれの暮らしの場で、「ただいま」「おかえり」と言いあえるまちでありますように、という想いが込められています。

私たちが心の病があることによる偏見と常に向き合っていて、このプロジェクトの趣旨に賛同したこと、そして、私たちが支援されるだけではなくて、支援する側にまわれたらいいなと思って、このプロジェクトに参加させていただいています。
つくったリボンを近所のお店などに配って、友輪館から地域に広がっていったらいいなという思いで活動しています。



メンバーさんと一緒にシトラスリボンをつくって、近くのお店にメンバーさんがどういうものなのかを話してもらって、賛同していただいたらお店にぶら下げてもらいます。そしてお客さんに尋ねられたらどういうものかお店の方に説明してもらっています。
ボランティアの方がリボンづくりに協力してくれたり、他の作業でお世話になっている企業さんからリボンをつくる紐を寄付していただくなど、私たちからこの活動が広がっていることが嬉しいです。

このプロジェクトは、コロナへの誹謗中傷に対して行っていますが、私たちは障がいを持っている方々の施設なので、障がいに対する差別や誹謗中傷をなくしていきたいという思いもあって、あわせてそういう声掛けをしながらいろいろなところに出かけています。

このフラワーアレンジメントの事業がきっかけでいろいろな人と更につながっていけていることを実感しています。
室内での作業だけだと地域の人が友輪館に来てくれることもなかったと思いますし、外に出る機会も少なかったでしょう。

外に出たいというメンバーさんが思いのほか多いんです。建物の中で作業していたいのかなと思っていたのですが、意外にも外に出て作業したいという方が多くて、これはフラワーアレンジメント事業を始めて分かったことです。
メンバーさんがやりたいと思っていることを、私たちは引き出していくという役割になっていけたらなというのは常に思っています。

最近スタートした京丹波町での草刈作業の様子

友輪館での今後の展望はありますか?

より一層、友輪館のことを知ってもらうために、友輪館の作品展をしてみたいと思っています。
交流の場として作品展の一角に喫茶ルームを設け、来場者の方のおもてなしをメンバーさんが担当し、そこでメンバーさん自身が得意なことを披露するというようなことができたらいいなと思っています。

また、地域の高齢者の方にお花を届けようという話を民生委員さんや社会福祉協議会さんと相談しながら進めています。
地域の人に友輪館の存在を知ってもらいたいですし、障がい者の人は助けられる立場と思われがちなのですが、私たちは助けることもするんだ、皆のことを想うこともできるんだという地域の中で支え合える関係づくりができていったらいいなという思いから企画しています。

外は暑く、コロナで大変な時期ということもあって、高齢者の方もなかなか外に出ることが難しい状況ですので、友輪館でつくったお花とシトラスリボンを添えてちょっとお話ししに訪問するということを考えています。

「障がいを持っている方を主体にして、自分たちはどうやって力を引き出すことができるか。」
このことを常に考えているスタッフの皆さんの顔がとてもいきいきとされていました。

そして、なんといってもメンバーの皆さんも職員の皆さんもとても楽しそう!
フラワーアレンジメント事業の一環で、ワークショップなども企画されていますので、ぜひ HP をチェックしてみてください。


今回スポットライトをあてた団体・個人

特定非営利活動法人 なんてん 綾城 浩子 (アヤシロ ヒロコ) さん・冨山 清美 (トミヤマ キヨミ) さん・松森 由樹子 (マツモリ ユキコ) さん・窪田 大基 (クボタ ヒロキ) さん・小﨑 英明 (コサキ ヒデアキ) さん・船橋 知子 (フナハシ ノリコ) さん・濱井 千代 (ハマイ チヨ) さん

(右側の写真)
綾城 浩子 (アヤシロ ヒロコ) さん:訪問介護ステーション笑み 管理者

(集合写真)
上段向かって左より
窪田 大基 (クボタ ヒロキ) さん:友輪館職員
小﨑 英明 (コサキ ヒデアキ) さん:友輪館職員
船橋 知子 (フナハシ ノリコ) さん:友輪館職員
濱井 千代 (ハマイ チヨ) さん:友輪館職員

下段向かって左より
冨山 清美 (トミヤマ キヨミ) さん:友輪館 施設長
松森 由樹子 (マツモリ ユキコ) さん:地域生活支援センター西京 施設長

※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2020年8月) の情報です。

団体名 特定非営利活動法人 なんてん
代表者 岩本 隆昭
所在地 〒615-8262 京都府京都市西京区山田四ノ坪町12-7
団体について

当法人は、障害のある方が地域で安心して暮らせる環境を整備し、その自立と社会参加を促進し、福祉の向上に寄与することを目的として活動しています。今年で設立 20 周年を迎え、5 事業所がそれぞれに利用者の方やご家族の皆様のニーズにお応え出来るよう、また事業所間の連携を深めることにより更なる質の良いサービスを目指し、試行錯誤しながら日々職員一同頑張っております。

電話 075-323-7091
FAX 075-392-0268
メール nantenhonbu1@mbr.nifty.com
Web サイト http://nanten.or.jp/
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この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 真鍋 拓司

事業コーディネーター

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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