食といのちのつながりを、子どもたちに伝えたい

掲載日:2020 年 5月 29日  


「自然の豊かな所で子育てをしたい」「子どもたちにいのちの大切さを伝えたい」そんなふうに思っている保護者の方は多いのではないでしょうか。

でも、現代社会に暮らしていると、なかなか自然に触れる機会がないことも。

今回ご紹介するのは、「はたけから たべるまで まるごと たいけん !!」をモットーに、京都市左京区、大原・三千院近くで、親子で気軽に参加できる野菜作りと食育プログラムに取り組む「キッズファーム in 京都大原」。

代表の廣瀬 昌代(ひろせ まさよ)さんに、お話を伺いました。

このページのコンテンツは、キッズファーム in 京都大原 にスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

季節を感じ、いのちに触れる

キッズファーム in 京都大原の前身は、同志社大学で同志社関連校の子どもたちを対象に行われていた社会実験「食育ファーム」。当時同志社大学の大学院で学んでいた廣瀬さんは、スタッフとして、この活動に参加していました。

2014 年、食育ファームのプログラムはいったん終わりを迎えますが、この活動にやりがいを感じていた廣瀬さんが、活動を引き継ぐことに。翌 2015 年の春から、キッズファーム in 京都大原(以下、キッズファーム)としての活動がスタートしました。

もともと、現代の生活において、野菜や家畜を育てることと、食べることが切り離されてしまっていることに違和感を覚えていたという廣瀬さん。どうしたら、食といのちのつながりを感じながら環境負荷の少ない生き方ができるか、ということが廣瀬さんのテーマでもありました。ご自身のお子さんを育てる中で、子どもたちがそういったことを感じられる環境で育ってほしいと思っていたことも、キッズファームの原動力となっています。

キッズファームでは定期的に、子どもたちと一緒に野菜の作付けや収穫を行ったり、収穫した野菜を使って一緒に作ったご飯をみんなで食べたり、また、野菜の少ない時期には鶏の解体やうどん作り、餅つきや味噌作りなど、四季を通じて移り変わる自然を感じながら、活動を行っています。

「いのちをいただくニワトリの解体」ワークショップの様子

何かをみつけたとき、子どもたちの目が輝く

「でも、ここで野菜の育て方や料理の仕方を学んでもらおうと思っているわけではないんです」と、廣瀬さん。

野菜ができた時の感動を味わったり、畑作業の途中で見つけた生き物に興味を持ったり、虫に触(さわ)れなかった子が触れるようになったり、そんなふうに自分の興味に従って何かをしたとき、子どもたちが“発見”に目を輝かせる瞬間を、なによりも大切にしているそうです。

「以前、サツマイモを掘っているときに、モグラの穴を見つけた子が興味を持って穴を掘り進んだら、その穴の中に野ネズミの赤ちゃんが入っていたということがありました。“これなに?” “どうなってるの?” “どうしてこうなってるの?” 子どもたちは瞳をキラキラさせて、驚きと発見で、すごく盛り上がったんです。そういう体験は、こちらが意図して用意できるものではないけれど、本当にうれしい。そんなんで、活動はよく脱線しています(笑)」

のびのびと失敗できる場所

キッズファームを、子どもたちが何かを強制されることなく、のびのびと発見したり、失敗したりできる場にしたい、というのも廣瀬さんが特に意識しているところ。大人は、ついつい子どもに先回りして教えようとしてしまいがちですが、

「ここではこれをしなくちゃだめ、こうじゃなくちゃだめ、というのではなく、子どもたちのありのままの内面を見つけて引き出したいと思っていて。だから、お父さんお母さんたちにも、そんなのんびりした気持ちで来てもらえたらいいなと思ってるんです。」

何かをこぼしたりしても大丈夫なように、室内にはビニールシートを敷いておくなど、子どもたちの“失敗”を受け止める準備は万全です。

今春のじゃがいもの様子

生き抜く力を持った、骨太な大人になってほしい

「人間のペースじゃない時間の流れを感じられる畑仕事が大好きです。最近は暑くなってカエルが元気に鳴きはじめたり、そんなふうに自然の動きを感じられるのが、とても嬉しいんです。子どもたちと植えた野菜が、動物に食べられてしまうこともあります。一生懸命植えて収穫を楽しみにしていた子どもたちはショックを受けるけれど、誰が悪いわけでもなくて、それも体験。」

畑の話をする廣瀬さんは、本当に楽しそうです。
そんな廣瀬さんに、これからのビジョンや願いを聞いてみました。

「キッズファームに来てくれる子どもたちと、私が関われる時間は本当にわずかですが、彼らが成長したときに、骨太な大人になってほしいということは、いつも願っています。“骨太” というのは、頭でっかちにならず、(何かあったときにも)大丈夫、何とかなると思えたり、消費社会に踊らされず、何かしら生き抜く力を持っているというような、そんなイメージです。あと、子どもたちがのびのびと輝くためには、いいところを見つけて褒めてくれる大人の存在って、とても大切だと思っています。そんな気持ちでボランティアに来てくれる人がいたらいつでも大歓迎!継続的に運営に関わってくれるメンバーも来てくれたらいいな。」

この春は、新型コロナの影響で活動がお休みを余儀なくされましたが、今も畑では、スナップエンドウや万願寺、ニンニク、トウモロコシ、ズッキーニ、オクラ、玉ネギ、ジャガイモなど、たくさんの野菜が子どもたちが来るのを待っています !

お話は、終始廣瀬さんの自然や子どもたちに対する愛情にあふれていました。

以前は広すぎると思っていた畑が、来てくれる人が多くなるにつれ、狭く感じられるようになってきたそうで、廣瀬さんのお話をお聞きしていると、今の畑の近くに新しい畑が見つかったらいいな、なんて、筆者までワクワクしてしまいました。

新型コロナが終息してまた活動が再開されたら、ぜひ、たくさんの子どもたちに参加してほしいと思います。

※2020 年 6 月 から活動が再開されます!詳しくは団体ページをご確認ください。


今回スポットライトをあてた団体・個人

キッズファーム in 京都大原 廣瀬 昌代 (ひろせ まさよ) さん

キッズファーム in 京都大原 代表

2015 年 4 月に「はたけ」から「たべる」まで丸ごと体験ができる『キッズファームin京都大原』を立ち上げ。
子ども達が「子ども」でいられる期間は短く、貴重な子ども時代だからこそ、食べ物や命に触れる豊かな体験をさせてあげたいと願っています。
兵庫県出身。2 児の母。同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程卒業。食農政策士。好きなものは畑とカエル(特に畑のアマガエル)。
「幼い頃、畑や田んぼを耕していた祖父の軽トラックの荷台に乗せてもらうことと農作業の合間のおやつの時間が楽しみで仕方なかったことが今では懐かしい思い出です。」

※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2020年5月) の情報です。

団体名 キッズファーム in 京都大原
代表者 廣瀬 昌代
団体について

子ども達に食農体験の場を提供することを目的に、2015 年 4 月に創設。
日本の食料自給率は低く、日常の食を海外からの輸入に依拠している一方、まだ食べられる食材が廃棄されているフードロスが社会問題となっています。
キッズファームでは畑を生かし、楽しみながら食べ物の生産から消費に至る過程を体験することで、食への理解を深め、食に対する関心を喚起することを目的に活動しています。

メール wakuwaku_kidsfarm@yahoo.co.jp
Web サイト https://kidsfarm.tumblr.com/

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 吉田 智美

事業コーディネーター

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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