寄付ラボ 第 85 回寄稿

掲載日:2019 年 2月 22日  

寄付ラボファイナル。第 15 回目は、株式会社ワーク・ライフバランス の創業メンバーとして数々の現場で働き方のコンサルティングを提供してこられた、大塚万紀子さんです。
2006年の創業当初は「ワーク・ライフバランス」という単語自体が耳新しく、重要性も認識されていなかったそうです。そんな時代に、「ワーク・ライフバランス」を経営戦略に位置付けて取組むことの重要性をいち早く発信してこられました。
働き方改革が叫ばれる今、長時間労働の是正や女性の活躍推進、生産性向上への取り組みが必須となりました。加えて、寄付行為が働きがいや生きがい、消費行動にも影響を与えるようになってきているといわれています。
今回の「寄付ラボ」では、地域創生の鍵としての働き方改革促進についても経験が深い大塚さんに、「寄付と働き方」という視点で寄稿いただきました。

寄付を「関係の質」を紡ぐきっかけに

このページのコンテンツは寄稿記事です。

2019 年 4 月、約 70 年ぶりに労働基準法が改正され施行される。5 月には新年号が制定され、新たなステージの幕開けが近い。豊富な労働力と安い賃金で支えられ爆発的な発展を遂げた昭和・平成から、少ない労働力でより質の高い仕事で価値を上げることが国際社会においても求められる新たな時代に突入していくことが予想されている。大きな時代の変化の中で、“寄付” が担う役割も多様化していくのではないだろうか。

私は 2006 年の創業から、日本人の働き方の課題や多様な仕事観に触れてきた。働き方改革の分野は、長時間労働改善はもとより、女性活躍推進や介護と仕事の両立、生産性の向上まで多くのテーマが存在する。それらのなかで今、私が注目しているのは「関係の質」がもたらす組織へのインパクトの大きさだ。

 米マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した組織の成功循環モデルでは、結果の質を上げるために最初に着手すべきは組織のメンバー間の「関係の質」の向上だとされている。お互いの関係性がよくなれば、相手のために何ができるか考え(思考の質の変化)、行動がポジティブなものに変わり(行動の質の変化)、おのずと結果の質も変わっていく、というものである。“働き方改革” と聞くとつい、「目先の小さな仕事をいかに減らすか」「優先順位を決めてできるだけ短時間で終わらせなければならない」「仕事の量を大幅に減らさなければ」と考えてしまいがちだ。しかし、その結果、人間関係が希薄になり、お互いを思いやる気持ちが削られてしまったとしたら・・・おそらく新たな価値やイノベーションは生まれないだろう。今私たちに必要なのは、業務効率化や生産性向上の前提となる “他者とのかかわり方” に今一度目を向けるタイミングなのではないだろうか。

私は、“寄付” がまさにこの “他者とのかかわり方” を多様に広げてくれる機会だと考えている。日常的な仕事を超えた、自分自身の問題意識を探るなかで、寄付という社会貢献の手段に出会い、寄付先との縁が紡がれていく。あるいは、寄付をしよう!というところから思い立ち、自分が気になる分野・テーマを深めていくということもあろう。いずれのアプローチにおいても、自分の見える範囲の仕事やかかわりから一歩外に関心が広がり、深まっていく。さらには、寄付したら終わりという一時的な関係性ではなく、自分の寄付によってどのような変化を生み出せたのかを確認していくという循環によって、そのかかわりはさらに深まっていくだろう。まさに “寄付” から関係の質が向上し、広がっていくのだ。

これまで私たちは、日常的な仕事を通じて社会貢献を行ってきた。これからもその基盤が大きく変わることはないだろう。しかし、時代が大きく発展していくなか、日々の仕事にプラスアルファして、新たな価値を支援する機会として “寄付” という行動を活用していくことで、私たち個人と社会との “関係の質” も広がっていく、そんなことを期待している。

 

大塚 万紀子

大塚 万紀子(おおつかまきこ)さん

株式会社ワーク・ライフバランス パートナーコンサルタント

楽天株式会社を経て 2006 年に株式会社ワーク・ライフバランスを創業、以来経営に携わる。
コーチングやコミュニケーションスキルを活かし、多くの経営者から”深層心理まで理解し、寄り添いながらも背中を押してくれる良き伴走者”として厚い信頼を得る。
二児の母。


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