寄付ラボファイナル。第 14 回目は、書家の川尾朋子さんです。
自身が文字の一部となる「人文字」や英語を縦書きにした「二十一世紀連綿」など、書の新たな可能性を追求してこられました。NHK 大河ドラマ「八重の桜」のオープニング映像を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
企業の広告や商品ラベルなど、ふだんの生活の中で目にするほど広く親しまれる書を制作してこられた川尾さん。実は、書を通じて NPO とコラボレーションされたり、医療や福祉、まちづくりの現場にも活動範囲を広げていらっしゃいます。
今回の「寄付ラボ」では川尾さんの体験をもとに、川尾さんならではの視点で「寄付の可能性」について語っていただきました。
「来年もできるかな〜」
2013 年より続けさせていただいている京都府立医科大学に長期入院している子供達へのワークショップ。毎年、終わった後に子供達の明るい表情を見て、来年もできたらいいなという思いが込み上げてきます。
私自身も学生の頃、入院を経験したこともあるぐらい体が弱く病気がちでしたが、そんな中でも自宅で書道はできたということが、自分を支えてくれました。その経験から、集中力を使って短時間で作品が出来上がることは書の特徴であり魅力の一つだと思い、いつからか、入院中の子供達へのワークショップができたらいいなと考えていました。
あるとき、NPO 法人キャンサーネットジャパン様が企画された「 ROCK BEATS CANCER 」という、チャリティーイベントの題字を書かせていただく機会がありました。小児がんを克服した AYA 世代( 15 歳~29 歳)と言われる世代のサバイバー、及び AYA 世代でがんに罹患した若者たちに、音楽を通して勇気を与え、小児がん支援・疾患啓発・研究支援を目的とするイベントです。そのときのご縁で、京都府立医科大学の先生と出会い、小児病棟でのワークショップをさせていただけることとなりました。
書のワークショップをするのに必要なのは以下の2つです。
(1) 書の指導ができワークショップを進行する人(ソフト)
(2) 書の道具(ハード)
(1) は、自身の経験や技術を持ってボランティア活動としてさせていただくことができますが、(2)には、どうしても費用が発生します。2 年目が終了したときに、継続してワークショップを行うにはどうしたらいいのかという課題に直面しました。 たまたまその直後にお会いした大阪ガス様の CSR 担当の方に相談したところ、大阪ガスには ”小さな灯” 運動というものがあることをお聞きすることができました。チャリティーグッズを販売したり、食堂に BOX を置いて社員の寄付を集めたものを、助成金として社会に貢献する活動です。ぜひお願いできたらと、キャンサーネットジャパン様と共に申し込みをしたところ、ありがたいことに翌年から 3 年間の助成金を活用させていただけることになりました。
助成金のおかげで、2014-2017 年の 3 年間、南座の提灯でも有名な小嶋商店の方にもご協力いただき、提灯に書くワークショップを行うことができました。書いた提灯は五山の送り火の日に明かりを灯し、その提灯を持って病院のベランダからみんなで大文字を見る時間も作り、子供たちも親御さんも一緒に楽しい時間を過ごすことができました。
2018 年は、病院の方からの援助で同じワークショップを行うことができましたが、2019 年はどうなるのかは、まだ未定です。
寄付には (1) 経験や技術のソフト面の寄付 と (2) 物質的なハード面の寄付があります。このケースのように (2) があれば有意義な活動ができる場合、(2) を得るにはどのような方法があるのかを気楽に相談できる場所があればと思っていました。京都市市民活動総合センターのホームページを見ると、寄付募集や助成金情報が掲載されており、今後、活用していきたいと思いました。
そして、個人では助成金を申請しにくい場合もあるので、NPO 法人とのマッチングもできるような場やサイトがあれば、経験や技術を寄付する人と、物質的な寄付をする人と、それを必要とする団体の出会いの場になり、様々な新しい寄付が発生するのではないかと感じています。
川尾 朋子(かわおともこ)さん
書家
6 歳より書を学び、国内外で多数受賞。2004 年より祥洲氏に師事。
NHK 大河ドラマ「八重の桜」OP 映像、NHK Eテレ「趣味どきっ!」講師、阪急嵐山駅「嵐山」、Panasonic の巨大ショーウインドウ、寺院の石碑などを手掛ける。
同志社女子大学卒業 四国大学特認教授 京都在住