寄付ラボファイナル。第 11 回目は、NPO 法人 CANPAN センター代表理事の山田泰久さんです。
市民公益セクターによる情報発信分野を牽引してこられただけでなく、卓越したアイデアで NPO と市民をつなげるための様々な「オモシロ企画」にも取り組んでいらっしゃいます。
今回の寄付ラボは、「寄付をする側の発信」について。
情報発信やファンドレイジングに携わってこられた山田さんならではの視点で、寄付文化をもっと盛り上げていくための提案をしてくださいました。
ブログや SNS のおかげで、自分の趣味や好きなもの、興味関心があるものについて、積極的に発信をしていく人が増えてきました。その発信が、口コミとなって、友達や周囲の人に影響を与え、ネットの先の見知らぬ人にも情報を届けています。SNS を使った個人の発信の蓄積が、いろいろなブームや流行を生み出し、あるいは、一つの文化として成り立つこともあります。
「寄付」についても、同じように SNS で気軽につぶやかれて、寄付文化として広まると楽しいなあと常々思っています。でも、「こんな活動を応援している」「チャリティイベントに参加して寄付した」など、寄付について、誰もが気軽に発信することは少ないようです。
日本にはよく寄付文化がないと言われますが、歴史を振り返えると、寄付はとても身近なものでした。全国各地で、様々な形で寄付が行われていました。例えば、奈良の大仏さんや、浪華の八百八橋、京都の番組小学校、上野の西郷さんの銅像などなど。現在でも、様々な NPO や公益法人、大学などが積極的に寄付を集めています。寄付を集める側の発信はあっても、寄付をする側の発信は少ないと感じています。
そこで考えたのが、寄付の文化はあっても、寄付について語る習慣がないのでは?という仮説でした。善行(徳)は陰に隠れて行うという陰徳の精神のせいでしょうか、どのような寄付をしたのか、あまり語り合う機会がありません。これでは、寄付の楽しさや魅力を周囲の人に知ってもらうことができません。
寄付について、もっと語り合う文化が生まれたらどうでしょうか。そこで、3 年前の 2015 年に始めたのが「キフカッション」というイベントです。これは、寄付について気軽にディスカッションを行い、寄付に関する様々な情報を共有できる場として、寄付とディスカッションという言葉を組み合わせて「キフカッション」と命名しました。寄付文化を進めるためには、寄付について、誰もがもっと気軽に話をすることができる場があると楽しいなと思い、企画・実施しています。
毎年、12 月の寄付月間の時期に開催していますが、これがとっても面白い。10 名から 100 名くらいの規模まで、寄付について興味があるという人が集まれば、簡単に出来ます。自分の寄付体験を中心に語り合います。初めての寄付から、寄付をする楽しみや喜び、おススメの寄付の方法、寄付をもっと面白くするためのアイデア出しなど、寄付がテーマであれば何でも OK です。寄付の経験や思いを自分で言葉にすることで、あらためて寄付の魅力を再確認することができます。他の参加者の話を聞くことで、寄付について新しい側面を見つけたり、最新の寄付事情を知ることが出来ます。参加者のみなさんが、寄付について語り合うので、とても暖かい場になります。寄付について気軽に会話をし、時には真面目に語り合うことができれば、寄付の文化がもっと広がるはずです。キフカッションはリアルに集まって語り合う場ですが、寄付を語る楽しみを知った人は、きっと SNS でも寄付の体験について発信していってくれることでしょう。 キフカッションを開催するためのガイドブックをご用意し、ブログで公開しています*注 1。ぜひ、参考にしてください。
もちろん、キフカッションのようなイベント形式以外にも、ふだんの会話や、ちょっとした会合のあいさつなど、寄付について話す機会はいろんな場面であると思います。SNS で、つぶやいて発信していくことができます。ふだんの生活の中で、寄付者が家族や友人と寄付の話題で盛り上がる。そんな日常が当たり前になったら、きっと寄付文化を身近に感じることができるでしょう。
さあ、みなさんも、寄付について、語りませんか?
山田 泰久(やまだやすひさ)さん
NPO 法人 CANPAN センター代表理事/一般財団法人非営利組織評価センター業務執行理事
群馬県高崎市出身。1996 年日本財団に入会。2014 年 4 月、日本財団から NPO 法人 CANPAN センターに出向。日本財団と CANPAN センターが合同で実施する「日本財団 CANPAN プロジェクト」の企画責任者。主に、NPO × 情報発信、オンライン寄付、助成金、IT・Web、などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っている。