寄付ラボファイナル。第 7 回目は、日本の「市民社会」を、学術研究と実践領域の両方で牽引してこられた、岡本仁宏さんです。
寄付を集める、呼び掛けるための行為と、寄付を使って解決したい課題への想い。
その行為と想いの間には、矛盾を内包する可能性があります。
「真摯に寄付を集めること」への提言をいただきました。
寄付を呼び掛けること、そして寄付すること、ともにもっと自然にできればいいと思っている。けれど、僕は、相変わらず、寄付を集める時には、緊張してしまう。
この矛盾を引き受けて、マネーロンダリング(資金洗浄)することは、実は寄付を集める団体の重要な役割の一つであると、思う。あわよくば、よく考えられた事業企画によって、ともに生きるに近い深い共感を生み出したり、支援者と被支援者との互酬性関係を生み出したり、あるいは権利性を持つ普遍的なサービスを生み出すためのアドボカシーを展開したりすることは、この意味では、矛盾を引き受けるという役割を引き受ける者(団体)に不可避的に伴う責務であるように思う。寄付を呼び掛ける時に、たとえ楽しいイベントのなかであったとしても、身が引き締まる緊張を感ずるのは、この責務を思い起こさせられるからではないだろうか。真摯に寄付を集めるということは、非営利組織を芯から鍛えることになるし、鍛えられるべきだと、僕は思う。
岡本 仁宏(おかもとまさひろ)さん
関西学院大学法学部・大学院法学研究科 教授
日本 NPO 学会 会長
社会福祉法人大阪ボランティア協会ボランタリズム研究所 所長
大阪府公益認定等委員会 委員長
公益社団法人公益法人協会 顧問
専門は、NPO論と西洋政治思想史・政治哲学。政治学の視点から市民社会を研究している。
近編著:大阪ボランティア協会『ボランタリズム研究』編集、編著『市民社会セクターの可能性:110 年ぶりの大改革の成果と課題』関西学院大学出版会、2015 年、共著『英国チャリティ:その変容と日本への示唆』公益法人協会編、弘文堂、2015 年