寄付ラボ 第 19 回寄稿

掲載日:2015 年 3月 13日  

寄付に関するさまざまな思いやエピソードを多様な立場の方にそれぞれの視点で執筆をお願いし、みなさまに生の情報をお届けする「寄付ラボ」。第 19 回は、認定 NPO 法人劇研の杉山準さんに、執筆していただきました。
演劇が果たす社会での役割、その役割に対する寄付の意味について考えてみましょう。

「わからない」に寄付を募ることについて

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子 舞台作品『ことばのはじまり』より。

私たちは、民間の小さな劇場を運営し、演劇やダンスの作品も制作しています。この頃は芸術・文化による地域づくり活動などもしています。劇場はすでに 30 年の歴史がありますので、関係者には知られていますが、一般にはまだ縁遠い存在かもしれません。私たちは昨年認定 NPO の認証を受け、より積極的に寄付集めを行おうとしています。「演劇やダンスに寄付?」少し違和感を持たれるかもしれません。「演劇やダンスは興行でしょ?入場料でやっていけないの?」テレビや新聞などで宣伝している大きな舞台公演はまさに「興行」で、入場料やスポンサー料によって「商売」として成立しています。観客動員数も多いので、足を運ばれた方もいらっしゃるでしょう。

一方で私たちの活動は、100 席にも満たない小劇場を拠点としていますので、演劇やダンスを始めたばかりの方や、新たな表現を志向する芸術家などが主に活動を行っています。そうした中から、後に多くの観客を集める演出家や俳優が育っていますが、育つ前ですから劇場も彼らも経済的には恵まれません。プロとなるスポーツの才能が、学校のクラブ活動や民間のクラブチームで育まれるように、こうした環境が、次世代の才能や文化の芽を育てているのです。

また一方で、演劇やダンスは娯楽の側面だけでなく、思想や文化を育む側面も持ち合わせています。私たちは、そうした「人や社会への批評性」や「芸術性」「新たな文化に対する意識」が社会にとって大切だと考えています。人間や社会は複雑です。矛盾に満ちているし、感情や欲にも流されます。多くの人が共存しつつ、幸せに暮らせる社会を築きたいと願う人は多いでしょうが、異なる考え方、趣向、価値観をすりあわせるのはとても難しいことです。我欲を押さえることも。また、他人と上手く関われず、孤立し孤独や不満を抱えている人もきっといるはずです。私達の活動は、そうしたことと向き合っていくことでもあります。自分や社会と折りあう智慧を育んだり、より豊かで充実した人生を送ったり、間違った指導者を選ばないためにまたはその過ちを見抜くために、私たちは奮闘し続けなければならないと思っています。


杉山 準

特定非営利活動法人 劇研理事兼事務局長

杉山 準(すぎやまじゅん)さん

演劇プロデューサー、特定非営利活動法人劇研理事兼事務局長、京都市左京西部いきいき市民活動センターセンター長

特定非営利活動法人 劇研

京都・下鴨に位置する小劇場「アトリエ劇研」の運営をはじめ、人材育成、芸術家の支援、国際交流など舞台芸術の振興を目的とする事業を中心に、近年では文化芸術による地域のまちづくり事業など、芸術・文化を切り口に様々な形で社会に貢献する事業を展開している。

Web サイト

http://www.gekken.net/npo/


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