寄付ラボ 第 20 回寄稿

掲載日:2015 年 3月 27日  

寄付に関するさまざまな思いやエピソードを多様な立場の方にそれぞれの視点で執筆をお願いし、みなさまに生の情報をお届けする「寄付ラボ」。第 20 回は、京都府立大学公共政策学部講師で地域連携副センター長もつとめる杉岡秀紀さんに執筆していただきました。
NPO からの発信が、寄付者に届くためには何が必要でしょうか。

寄付の主役は誰でしょう?

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子

私たちには色々な顔があります。有権者・市民としての顔、経営者・消費者や労働者としての顔、そして家庭では、親・夫(妻)・子・孫としての顔など、数え出したらキリがありません。
それでは、NPO 分野ではどうでしょう。ここにも色々な顔があると思います。私だけでも NPO の理事、監事、元代表、会員としての顔など、少なくとも 4 つの顔があります。

何を言いたいのかというと、寄付を集める時であれ、寄付をする時であれ、常に今の自分ではない「もう一つの顔」を意識することが大事ということです。(アルビン・トフラーのいうプロシューマーの考え方に近いですね)

私も NPO を自分でやっていましたので、寄付も含めファンドレイジングの難しさを痛感してきました。しかし、いくら「私たち頑張っていますので、ぜひ寄付をお願いします」と声高に叫んでも、恥ずかしながら当時ちっとも集まりませんでした。市民ファンドやクラウドファンディングがなかった時代だからというのもありますが、それが本質ではありません。

原因は明らかで、今から思えば「私たちは」頑張っています、「私たちは」寄付をしてもらうのは当然、「私たちは」お金に困っています、と常に一人称で喋っていたのです。逆に言えば、「あなた(寄付してくれる人)」が寄付したらどうなるのか、「あなた」の今の気持ちはどうか、など相手のことをしっかりと考えていなかったのです。言葉を選ばずに言えば、オレオレ詐欺ならぬ「ワレワレ詐欺」ですね(笑)。

ここで少し話題をプレゼンの話に転じたいと思います。皆さんはプレゼンをする時に気をつけておられることはありますか。そもそもプレゼンで一番大事なこととは一体何でしょうか。それは良いパワーポイントを作ることでも、流暢に喋ることでもありません。

小中学校の入学式や卒業式、あるいは成人式や大学の講義などを思い出してください。記憶に残っている人とはどんな人でしょうか。少なくともずっと原稿を読み上げるだけの人、自慢話ばかりの人、あるいは一度も聴衆に目を合わさない人、抑揚もなくただ機械のように喋り続けるだけの人ではないですよね?ここにプレゼンの最大のコツやヒント、逆に言うと最大の落とし穴が隠されています。

もう分かりましたよね。先ほどの問いの答えは「プレゼンの主役=聴き手」であるということです。これを忘れるとどれだけすごい人でも、どれだけ話しが上手くても失敗します。

私も現在いくつかの NPO に寄付をしたり、会費を払ったりしていますが、完全に自分の主観、もう少し正確に言えば「共感したかどうか」だけで選んでいます。善意のおしつけやお願い、おねだりだけされても心は動きませんし、そもそも続きません。 

というわけで、NPO の皆さんもぜひ一度立ち戻って考えてみませんか。寄付の主役とは誰でしょう?


杉岡 秀紀

京都府立大学公共政策学部講師

杉岡 秀紀(すぎおかひでき)さん

京都府立大学公共政策学部講師、地域連携副センター長。まちづくり NPO きゅうたなべ倶楽部発起人、(一財)地域公共人材開発機構理事、(特活)グローカル人材開発センター理事、(特活)京都こどもセンター監事、京都市市民活動総合センター「市縁堂 2014」コメンテーター。著書(共著)に『地域力再生の政策学』『地域公共人材をつくる』『地方自治を問いなおす』など。

京都府立大学公共政策学部

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