寄付ラボ 第 26 回寄稿

掲載日:2015 年 10月 9日  

今、日本は寄付で社会に貢献するということの重要性に少しずつ向き合いはじめ、今の日本にあった寄付文化を生み出そうとしています。その動きは NPO ・市民公益活動の枠組みを超え、企業を始めとする様々なセクターに広がり、各々のフィールドでできることを模索・実施しています。
今回は、寄付文化醸成に向けて動いている、ある金融機関のチャレンジをご紹介します。

金融機関のチャレンジ~意志あるお金と共感の好循環~

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子

近畿ろうきん (近畿労働金庫) の社会貢献預金・すまいる (以下、すまいる) は、お客さまのご預金を通して 4 つの分野の NPO に寄付を行う取り組みです*注 1。よくある”利息の一部を寄付する”だけでなく、預金残高の 0.1 % をお客様と当庫が共に負担する形で寄付する仕組みにした背景には、当庫が率先して企業の社会的責任を果たさなければならないとの認識がありました。
2012年 10 月より発売を開始した「すまいる」は、2013 年 8 月には中期計画の目標であった残高 50 億円を超え、2015 年 8 月末現在で約 93 億 3,200 万円 ( 30,394 口座) にまで広がっています。寄付金は、3 年間で総額 1,972 万円になり、当庫の期待を大きく上回った結果 (経過) となっています。

「すまいる」が、当庫の期待を大きく超えた結集になっている要因は何でしょう?
日本における寄付文化醸成へのヒントになればと淡い期待も抱きつつ、事業を進めてきた当事者として思うところを述べます。

そもそも、ろうきんは、企業理念に「人々が喜びをもって共生できる社会の実現」を掲げている協同組合組織の福祉金融機関です。
特に近畿ろうきんでは、 NPO を共生社会づくりのための対等のパートナーと位置づけ、共生事業の基本に「 NPO との協働」を据え、長年にわたり、NPO 事業融資、NPO への助成制度、NPO 支援センター会議等で NPO とのネットワークを築いてきました。
その取組のなかで、共生社会の実現をめざすためには、融資や助成として資金援助をするだけでなく、多くの人々の“意思ある関わり”が必要と感じるようになったのです。

このようなネットワークや想いが「すまいる」の商品設計、「すまいるプロジェクト」の活動連携にしっかりと活きています。実際、「すまいる」発売開始時に、組合員 (顧客) に対し「共生社会づくりをめざし <意思あるお金> の流れをつくろう!」と大々的にアピールし、組合員(顧客)の「共感」を得ることができました。

さらに、「すまいるプロジェクト」と銘打ち、預金者に寄付先団体が行うセミナー、各種イベント、視察・体験ツアーに参加していただき、寄付先団体の活動への理解と「共感」を増幅させることができました。また、組合員 (顧客) から『ろうきんの助け合い・支えあいの理念を具現化した預金だ。また寄付金の使われ方がよくわかることも素晴らしい。』とおほめの言葉をいただいており、そのことにより職員のモチベーションアップにつながり、さらに「すまいる」の結集に励んでいます。

すまいるはこの様な「好循環」により、預金 (寄付) の拡大につながっていると考えています。
寄付文化の醸成には、意思あるお金の流れと共感の「好循環」が欠かせません。金融機関だからこそできる「共生社会の実現」への道を、これからも多くのみなさんと一緒に歩んでいけるよう、取り組んでまいります。

注 1:

「社会貢献預金・すまいる」は、預入金額1万円以上、預入期間 1 年の定期預金です。預金者には、お預けの際に 4 つの寄付コース(「災害復興支援」「エコ推進」「子どもたちの未来応援」「国際協力」)の中から 1 つを選んでいただき、毎年 3 月末のお預入残高の「 0.1 % 」を各寄付コースの寄付先団体へ近畿ろうきんから寄付を行います。定期預金の店頭表示金利より引き下げた金利を適用させていただくことにより、お客様と近畿ろうきんが共に社会貢献に取り組む仕組みです。詳しくは、近畿ろうきんホームページの「社会貢献預金・すまいる」をご参照ください。
http://www.rokin.or.jp


浦田 和久

浦田 和久(うらたかずひさ)さん

近畿ろうきん地域共生推進室 室長


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