寄付ラボ 第 27 回寄稿

掲載日:2015 年 10月 23日  

寄付をお願いするときに一番気をつけなければいけないこと。それは「お願いしっぱなしはご法度」ということです。

「こんな社会をつくりたい」「この社会課題をなんとかしたい」
そんな想いに共感し、寄付をしてくださった方々は、何を望んでいるのでしょうか。私たち NPO は、その想いにきちんと応えてきたでしょうか?

今回の寄付ラボは、多くの NPO とお付き合いをしてこられた経営者である、人見康裕さんにご執筆いただきました。団体自身の成長をも応援してこられた人見さんらしい、叱咤激励の寄付ラボです。

お礼と報告

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子 この画像内のお名前、団体名、活動名などは架空のものです

「どんなに無理なお願いをしてもいいから、お礼と報告は絶対に忘れてはいけない」

・・・25 年前、あるメーカーに新入社員として入社した時、社内連携について上司から何度も繰り返し指導されました。
「自分のために無理を言っているのではない、仕事上必要なのだから遠慮は無用である。しかし、『お蔭様でお客様に喜んでいただけました。ありがとうございました』という言葉が無ければ、直接お客様と接することのない製造部の方々はその無理難題に対しやりがいを持つことができないと思わないか」
・・・日々直面する新たな問題に目を取られ、お礼と報告をなおざりにしがちな私に、諭すように教育して下さったことを今でもはっきり記憶しています。

その後京都に帰ってきて、様々な社会問題を解決するための団体・NPO さんとご縁をいただき、時には共に活動し、時にはわずかながらの支援をさせていただいて参りました。
その活動の中で、いまだ自分自身も十分に徹底できていない反省も含め、ビジネスマンとしてのスタート時に刻まれた教えをその都度まわりの方々に伝えてきたように思います。

そもそも社会がまだ注目していない問題に着目し心動かされ、放っておくことが出来ずに自ら団体を立ち上げてまで、その問題の解決のために日々努力を続けておられるわけですから、 ヒヨっ子の営業マンなどとは比べものにならない程の当事者意識を持たれているわけで、無限の荒野のような問題山積状態を目の前にしてその解決に没頭されるのは当然のこととも言えます。
また、今でこそ Facebook やツイッター等の IT の発達により、安価で手間がかからず、しかも世界中に即時的に発信できるツールの活用が可能になりましたが、私が様々な団体と関わりを持つようになった 20 年前では、まだまだ紙ベースが中心であり、人員も予算も限られている中で、なかなか思い通りにできないのが実情であったと思います。

しかし、それでもやはり一人でできること、少人数でできることは限られているのであり、多くの共感者・同志を作ることが結局は問題解決への近道であることは言う間でもないでしょう。なので、その都度様々な具体的提案を含め、「お礼と報告」についてしつこく要望して参りました。

中には、あまり厳しく言い過ぎたのか、連絡が途絶えてしまった団体もありました。
けれども逆に提案を取り入れて、お固い報告会や年次レポートだけでなくチャリティパーティの開催や現場からの絵葉書送付等、様々な手段を使って発信を続けてくれている NPO も存在しています。

今では、既に弊社よりもはるかにレベルの高い発信をされている団体もあり、「団体の成長を応援する」つもりが、いつのまにか「刺激を受けて勉強させていただいている」状態になっている感じも致します。

考えてみれば NPO 等の市民活動も、私の経営するいわゆる営利企業も、目指すところは「社会のお役に立つ=幸福の追求」に他ならず、その在り方や手段に大きな違いがないことは当然と言えます。
これからも互いに刺激し合い、切磋琢磨しながら、それぞれの分野で目的に向けて努力して参りたいと思います。


人見 康裕

人見 康裕(ひとみやすひろ)さん

1967年京都生まれ (株)ヒトミ (株)コーヨー代表取締役社長


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