寄付ラボ 第 70 回コラム

掲載日:2018 年 3月 23日  

日本の寄付文化発展のために、毎年日本の寄付市場全体を示した「寄付白書」。NPO 法人日本ファンドレイジング協会さんから毎年発行されているものです。
2017 年度最後の寄付ラボはこの「寄付白書」のレポート記事をお届けします。

これまで日本の寄付文化醸成のための新たな動きや海外からのヒントなどを紹介してきましたが、現在の日本の寄付市場はどのくらいの規模なのでしょうか。
また、現在の日本の寄付市場とともに、2017 年度版の寄付白書では「行動経済学」で寄付を科学的視点についても触れています。
寄付を募るにあたり、チェックしていただきたい一冊です!

来年度も引き続き寄付ラボをお届けいたします。どうぞお楽しみに!

現在の日本の寄付市場と行動経済学の視点~「寄付白書 2017」を読んで~

このページのコンテンツはコラム記事です。

日本の寄付文化発展のために、日本の“寄付市場”全体を示すレポートとして 2010 年から毎年発行されている「寄付白書*注 1」。その「寄付白書 2017」から、現在の寄付市場の現状と、寄付を募るにあたっての行動経済学の視点について紹介したいと思います。

寄付白書が初めて発行された 2010 年から日本の寄付を取り巻く状況は大きく変化しています。寄付白書によると、東日本大震災があった 2011 年に寄付を行った人は約 7 割、その後も約 4 割の人が寄付を行っており、震災以前よりも寄付を行う人の割合は増加しているとのこと。また、個人寄付総額も 2010 年は 4,874 億円、2011 年 1 兆 182 億円、その後も 7,000 億円近くで推移していて、2016 年は 7,756 億円だったそうで、寄付額も震災前から増加しています。2011 年は、税制改正により公益法人への寄付のハードルが下がった年でもあり、寄付元年と呼ぶこともあります。

近年では、「クラウド・ファンディング*注 2」の広がりや、「社会的インパクト投資*注 3」の環境整備、「遺贈寄付」の推進など、寄付の入り口も増えてきています。他にも、寄付ラボでも取り上げている、「寄付付き商品」や「物品の寄付」、「アクションが寄付になる仕組み」など、寄付への参加のハードルを下げる取組みが民間主導で行われていることも、寄付を行う人が増えている大きな要因だと感じています。

「寄付白書 2017」の中で目を引くのが、「人はなぜ寄付をするのか」と題した、科学的な分析について。海外では、「寄付」という経済的な動きを心理学的な視点から研究する「行動経済学」という学問での分析が盛んとのこと。寄付をお願いするにあたって、どんな状況をつくり出したら寄付をしてもらいやすくなるのかについて、実験・調査を通して分析しています。

紹介されているものの中にも実際の現場でも実践しているようなものもありました。

例えば、「寄付者のお名前を団体のホームページに掲載します!」というように、寄付者に満足感を与える効果を狙うものや、「○○○円の寄付でこんなことができます!」「いただいた寄付はこういったことに使いました。現在の財務状況はこうなっています。」と、自分の寄付が実際にどんなことに役立つのか可視化させ、寄付の有効性を実感してもらうものなど。

寄付のお願いの訴え方や寄付を受けるときの設えを工夫して寄付集めをしている団体も多いと思います。その工夫が有効かどうかを科学的に検証しています。寄付を集めている団体さんにとって新たな視点や、取組みのヒントを得られるかもしれません。

「寄付白書 2017」を読んで、日本の寄付市場の現状や人が寄付をする要因について知り、寄付集めの参考にしてみてはいかがでしょうか。

注 1:

編者 認定 NPO 法人日本ファンドレイジング協会
http://jfra.jp/research

注 2:

不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd) と資金調達(funding) を組み合わせた造語。

注 3:

行政、民間事業者及び資金提供者等が連携して、社会問題の解決を目指す成果志向の取組み。


京都市市民活動総合センター

真鍋 拓司(まなべたくじ)さん

京都市市民活動総合センター 2017 年度寄付ラボ担当

京都市市民活動総合センター

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