寄付ラボ 第 28 回寄稿

掲載日:2015 年 11月 27日  

昨年度の寄付ラボでは、海外の寄付事情としてカナダを 2 回連続で取り上げました。(その 1 :カナダの寄付事情  その 2 :カナダの寄付文化)

「寄付大国のカナダでは 15 歳以上の国民の 84 %が、平均、約 4 万円以上もの寄付を年に行っている」という驚きの内容に、「それこそ文化の違いなのでは?」という声もチラホラ…。

そこで今年は、日本と同じ文化圏であり、地理的にも歴史的にも非常に近い“台湾”を取り上げ、2 回にわたって「お隣さん・台湾」の寄付事情についてお伝えいたします。

台湾の寄付事情 (1) – なぜ台湾人はこんなに寄付するのか?

このページのコンテンツは、寄稿による記事です。

活動の様子 台湾の大学生が東日本大震災を応援したいために作成したポスターと募金箱 (ポスター訳=全員の心をひとつにし、日本を応援しよう) 写真提供:陳俊豪

近年、被災した国への寄付金額が常に上位である台湾は、世界に注目されている。特に、東日本大震災に対し、台湾が世界一高額となる 220 億円超えの義捐金を寄付した。また、今年のネパール地震の後、台湾は地震が発生してから数日間で、約 2 億 2 千万円を送金したが、これは世界第 2 位である。

国内の寄付金も少なくない。たとえば、昨年の高雄で起こった大規模ガス爆発事故 ( 25 人死亡、267 負傷) においては、170 億円超えの寄付金が集まった。また、寄付の対象は災害、事故の被災者に特定せず、生活困窮者、宗教団体、政治人物、市民メディア、動物...など多岐にわたっている。

台灣公益責信協會の計算により、2013 年の年間寄付金額は 2,037 億円 ( GDP の0.37% ) であると伝えられている*注 1。景気不況や、平均給料の減少といった厳しい情勢にある現在の台湾においても寄付の習慣は維持されている。

寄付する理由は、宗教、歴史、文化、政治環境、社会と深くかかわっているとからではないかと考える。まず、台湾人に寄付の理由を聞けば、仏教用語の「因果応報」に近い答えが多いように感じる。よい行いをすればよい報いがあるという強い信念が、社会に浸透しているのである。
また、歴史的にみれば、戦後、台湾は長期間、国際的に孤立した状態が続いていた。そのため、互恵の精神を重視する傾向にある。海外へ援助していれば、いざというときはそのお返しとして海外からの援助を受けられると考えているのである。

以上に加え、近年では次のような 2 つの要素が目立っている。

1 つ目は、メディアの影響である。
台湾のマスコミは、災害のような突発的出来事に関して、連日、ニュース番組で取り扱ったり、公益 CM を繰り返し流したりしている。また、政治家、実業家、芸能人、タレントといった有名人が個人名義で寄付金額をメディアで公表し、社会の寄付風潮をリードしている。
そこで、チャリティ番組の効果も特筆すべきである。たとえば、東日本大震災の数日後、 3 月 18 日に 5 つのテレビ局が共同的に大型チャリティ番組を放送し、有名人が行った慈善オークションにより、 3 時間以内で 33.7 億円を集金した。

次に、寄付は、単に「良いことをする」のような利他主義ではなく、それと同時に、自己主張を表現する手段でもある。多くの台湾人は、重大な事故、社会問題に対処しきれていない政府にすでに失望の念を抱いている。そのため、被災地の復興から、権力と対抗しようとする政治人物、市民メディアまで、自分の力で支援してあげないといけない意識が強い。
この現象に対し、台湾国立師範大学マスコミュニケーション研究所准教授 胡綺貞氏*注 2によれば、「多くの台湾人は、自分が関心を持つ政治、社会、文化、人道などの議題に寄付するのが、社会的責任の実践だと思っている。」

最後に、筆者の友人の言葉を紹介する。彼女は豊富な寄付経験を有している台湾人の1人である。国内外の災害の被災者、アフリカの子ども、国内の困窮者、野良犬、コウモリを守る組織に至るまで定期的に寄付している。その理由を聞いたら、「より良い世界になってほしいから」という市民としての願望からくるのだと教えてくれた。

次回は、一般市民、そして NPO ・ NGO が寄付を促進するために、facebook を活用する事例を紹介する。

注 1:

台湾公益財団,公益観察 2014 より (取得閲覧: 2015/11/10 )
https://apatw.gitbooks.io/observation2014/content/TW/donation.html

*比較として、2012 年の日本の寄付総額(法人寄付・個人寄付合算)は 1 兆 3686 億円( GDP の 0.26 % )。緊急災害支援への寄付が多かった 2011 年に続き、2012 年は他分野への寄付も広がりを見せ、日本の寄付市場が大きく拡大した年といわれている。

注 2:

2015/11/8 インタビュー内容により


李 旉昕

李 旉昕(リ・フシン)さん

京都大学防災研究所 巨大災害研究センター 特定研究員


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