寄付ラボ 第 67 回寄稿

掲載日:2018 年 2月 9日  

第 61、62 回の寄付ラボに引き続き、大好評の「海外の寄付事情」。
今回はイギリスの寄付文化について。
寄付や社会貢献意識の強い欧米ですが、その背景には歴史や宗教以外にも、強く根付いた“寄付教育”があるようです。
生活に密着した、楽しみながらできる「寄付」がそのヒントかもしれません。

イギリスの寄付文化と資金調達

このページのコンテンツは寄稿記事です。

2016 年から 1 年間、イギリスに滞在する機会を得ました。現地に暮らし始めて驚いたのが、小学校での寄付イベントの多さです。

まず 9 月に新学期が始まってすぐ、難民の子どもたちを支援するため、国際 NGO セーブ・ザ・チルドレンへの寄付を集める「ハーベスト・アピール」が行われました。学級ごとに目標額が定められ、子どもたちは 20 ペンス*注 1ずつ節約し、寄付に回すよう呼びかけられます。

そして 11 月は、戦没者追悼記念日に向け、国を挙げての「ポピー・アピール」。戦没者追悼のシンボルである赤いポピーの花飾りが、人々のジャケットの胸元や車のバンパーなど街中にあふれます。学校でも 1 人 20 ペンス以上の寄付が呼びかけられ、さらに学校の事務室で赤いポピーのバッジやリストバンドが販売されました。寄付金・収益金は英軍関係者の支援に使われるそうです。

12 月には、国営放送 BBC 主催の「チルドレン・イン・ニード(困窮している子どもたち)」。3月には、BBC とチャリティ団体が提携して開催する「レッド・ノーズ・デイ(赤い鼻の日)」。これは日本の 24 時間テレビによく似ていて、テレビ番組を通じてチャリティが呼びかけられると同時に、英国全土で赤い鼻グッズが販売され、売上の一部が困難な境遇にある人々の救済活動に寄付されます。学校でも赤いグッズを身に着けて登校するよう呼びかけがあり、寄付が求められました。

欧米各国はキリスト教の影響によりチャリティ活動が定着していると言われますが、子どものころから毎年、寄付の経験を重ねていることと無縁ではないように思います。そして、「セーブ・ザ・チルドレン」や「マクミラン癌サポート」などの大きな NGO が、学校を巻き込む寄付プログラムをパッケージ化し、「寄付=楽しいイベント」として演出しているのです。また、これらのチャリティ活動には数多くの大企業が協賛しています。

小学校と関わるなかでもうひとつ驚いたのが、公立小学校でも独自に資金集めを行っていることです。

3 月に行われる「母の日ショップ」は、保護者からアクセサリー・化粧品・雑貨などの寄付品を募り、子どもたちにお小遣いを持たせてママたちへのプレゼントを買わせるという二重の寄付イベント!

4 月のイースターには、学校が子どもたちに「ラッキーナンバー」(くじ)を販売。7 月には学校理事会主催の夏祭りが行われ、先生や保護者がゲームや食べ物の出店を出し、不要になった本や玩具を集めてバザーを行います。そしてこれらの売上金は、学校資金(School Funds)としてプールされ、学校運営に活用されます。

「お金を集めよう!」となったら、周囲に声を掛けて、ケーキを焼いたりカードをつくったりして販売し、ゲーム・音楽・ダンス・おしゃべり等を楽しめる場づくりをする。短い滞在期間に垣間見た限りですが、イギリスの子どもたちは学校生活を通じて寄付文化に親しんでおり、そうした経験の蓄積を背景として、資金調達の方法が社会において継承されているように感じられました。

注 1:

1 ペンス=約 2 円


竹花 由紀子

NPO 法人 京都地球温暖化防止府民会議スタッフ

竹花 由紀子(たけはなゆきこ)さん

長野県生まれ。立命館大学在学中より NGO で環境教育に取組み、地球温暖化防止京都会議(COP3)の後、京のアジェンダ 21 フォーラム、京エコロジーセンターの職員として、市民・行政・教育機関等が連携するプロジェクトを多数手掛ける。2007 年より現職。

NPO 法人 京都地球温暖化防止府民会議

97 年の京都議定書採択を受け、地球温暖化対策推進法が制定され、各県に一つ地球温暖化防止活動推進センターを指定できるとされました。当会は 2003 年に設立され、京都府地球温暖化防止活動推進センターの運営を通じ、地域活動の支援等に取組んでいます。

Web サイト

HP - http://www.kcfca.or.jp/


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