寄付ラボ 第 62 回寄稿

掲載日:2017 年 11月 10日  

前回からお届けしているデンマークの寄付文化の後編となります。
前編では、福祉国家が成り立つための「平等」の考え方や、「寄付」に対する想いについて寄稿いただきました。
「必要なときに必要な人がサービスを受けられる、結果としての平等」という言葉が印象的でした。
今回は、実際にそんな文化が見えてくる特徴的な仕組みや取組みをいくつかご紹介いただきます。

資源を活かす「利用者民主主義」の実践

このページのコンテンツは、NPO 法人きょうと NPO センター / 山口 洋典さん寄稿による記事です。

 デンマークに暮らして半年あまり、多くの寄付文化に触れてきました。10 月末、ガン協会*注 1による全国キャンペーン「Knæk Cancer」*注 2が各地で行われており、オーデンセ大学附属病院の敷地内に建てられたカウンセリングセンターでのオープンハウスと、ロスキレ大聖堂の広場で開催された野外イベントに足を運びました。年間 45,000 人のボランティアが携わるガン協会は公的資金に依存せず寄付により運営されており、センターでのカウンセリングやマインドフルネスなどのワークショップは参加費無料と「ユーザー・デモクラシー」*注 3の好例の一つです。国営放送 TV2 の全面協力で行われたキャンペーン(2017 年 10 月 15 日から 29 日)では、ピンバッジの販売や企業と協力した寄付つき商品の販売、携帯電話のショートメッセージでの寄付受付などを通し、147,113,040 DKK(およそ 26 億円)が集まったと言います。*注 4

 また 10 月にはティステズというまちに版画の展覧会を鑑賞しに行ったのですが、会場はリアルダニア*注 5という団体によって修復された 1853 年建築の旧市庁舎でした。この団体の歴史は、1795 年のコペンハーゲンでの大火を契機に設立(1797 年)された信用組合にさかのぼります。2000 年には投資と貸付部門を売却し、組合員による社会貢献団体に改組されました。最新の年次報告書(2016 年)*注 6によると既に 3,000 以上のプロジェクトに 172 億 DKK(およそ 3071 億円)を集めたとあり、ガン協会のカウンセリングセンターもその 1 つです。

 各団体による資金の調達だけでなく、団体間の協働による資源の活用の事例は他にも見られます。2016 年 2 月に世界初を銘打ってコペンハーゲン空港近くに開店した期限切れの商品を扱うスーパー「We food」*注 7は、キリスト教にもとづく DanChurchAid が展開する事業で、まもなくデンマーク第 2 の都市オーフスにて 3 店目が開店されます。販売される品々は国内の複数のスーパーから提供されたもので、棚卸しを含めてお店の運営はボランティアが担っています。市内の 2 店目にお邪魔したところ、レジの横には「Mottainai」の文字が掲げられていたのが印象的でした。

 高負担高福祉という印象を抱いて訪れたデンマークですが、他者への信頼のもと他者から尊厳が守られる社会システムが人々の手によって維持・発展しているのだと肌で感じています。先ほどのガン協会では、オーストラリアの事例を参考に、休暇用のサマーコテージの所有者に提供を呼びかけ、患者さんが病気を忘れて過ごすことができるよう斡旋するプログラムを始めました。*注 8そこに根ざすのは豊かな人生経験への寄付という発想です。こうした活かされていない資源に光を当て、つなぎ、生かす取り組みが、「どうぞ」と譲りあえる社会を下支えしています。

注 1:

https://www.cancer.dk

注 2:

http://tv.tv2.dk/knaekcancer 「ガンを蹴散らせ」という意味

注 3:

政策形成過程や展開の際に公共サービスを受ける人たちが参加すること。朝野賢司らによる『デンマークのユーザー・デモクラシー』(2005 年、新評論)参照( http://www.shinhyoron.co.jp/4-7948-0655-8.html

注 4:

http://tv.tv2.dk/knaek-cancer/2017-10-28-saa-meget-blev-der-samlet-ind-til-knaek-cancer-i-aar

注 5:

https://realdania.dk

注 6:

https://realdania.dk/-/media/Realdaniadk/Publikationer/Aarsrapporter/102942_RD_Aarsrapport_2016_09_opslag.pdf

注 7:

https://donate.danchurchaid.org/join-us/wefood

注 8:

https://www.giv-frirum.dk プロジェクト名「giv frirum」は英訳すると give free room となる。家を貸す側の協力があって成り立つため、広義の寄付プログラムとして位置づけられる。


山口 洋典

NPO 法人きょうと NPO センター監事

山口 洋典(やまぐちひろのり)さん

1975 年静岡県磐田市生まれ。学生時代の阪神・淡路大震災のボランティア活動で NPO 界隈に浸り始める。2011 年に立命館大学共通教育推進機構准教授となり、2017 年度、オールボー大学人文科学部コミュニケーション・心理学科の客員研究員としてデンマーク王国に滞在中。

NPO 法人きょうと NPO センター

~社会と共にあることを願って~
1998 年、きょうと NPO センターは、多くの関係者の理解と支援、期待を背負ってここ京都における初めての中間支援組織として産声をあげました。1999 年 10 月に特定非営利活動法人として運営を開始し、以来、「市民が支える市民社会の実現」を目指して、数多くの挑戦と新たな社会機能・組織・人材の輩出を行ってきました。

きょうと NPO センターは、現在、中間支援組織としての原点に回帰しながら、中間支援機能の新たな展開を模索しています。災害発災時における多様なステークホルダーを巻き込んだ支援環境の構築や平時ネットワークのゲートキーパーの役割、「市民が支える市民社会の実現」にむけた政策提言を行っていくことも重要な機能であり、社会から期待されている姿のひとつであると考えています。

多くの社会課題と対峙し公共サービスを担うことは、すでに行政だけの役割ではありません。さまざまな民間団体が「ほっとけない」との思いから始められた活動を「ほっとかない」活動を行うことを使命として、社会と共にありたいと願っています。

Web サイト

きょうと NPO センター HP - http://kyoto-npo.org/


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