「寄付文化がまだまだ根付いていない」といわれる日本。しかし寄付経験者にお話しを聞いてみると「ずっと同じ取組に続けて寄付をしている」ということも意外と多いのです。中には「続けて応援していくことにこそ、意味があると思うから・・・」とおっしゃる方も。
今回の寄付ラボのテーマは「市民が寄付で支えなければ、続かない取組み」。
例えば京都が誇る「祇園祭」も今まで多くの町衆に支えられてきました。特に今年はクラウドファンディングを通して多額の寄付が短期間で集まったと話題にもなりました。その「祇園祭」に新たな価値を打ち出した「祇園祭ごみゼロ大作戦」。祇園祭同様、市民が支えていくことの重要性について「一般社団法人祇園祭ごみゼロ大作戦」さんよりご寄稿いただきました。
日本三大祭の一つでもある京都の祇園祭では、前祭の宵々山、宵山(7 月 15 日と 16 日)が最も人出が多く、例年 50 万人を超えています。多くの露店が軒を並べ、大変にぎわうお祭ですが、長い間、問題となっていたのは、およそ 60 トンとも言われたごみでした。
そのごみを「ゼロにしたい!」との思いで、2014 年に始まったのが「祇園祭ごみゼロ大作戦」です。この取組みでは、露店で提供される飲食の一部にあたる 21 万食分の容器を何度も洗って繰り返し使用出来るリユース食器に置き換え、ごみの削減をはかっています。
今年も、のべ 2200 人のボランティアスタッフがリユース食器とごみの回収を呼びかけ、拾い歩きにも取り組んでいます。リユース食器を導入したごみ減量の取組みとしては、最大級のそして日本初の取組みです。2017 年も多くのご協力のもと、無事、終えました。
ごみの量は、天候や提供される飲食の種類などによっても影響を受けますが、取組み開始前(2013 年)に約 57 万トンだった焼却ごみやペットボトルなどの資源は、2017 年にはおよそ 53 万トンに減りました。「ごみゼロ」の達成にはまだ時間が必要ですが、地域やお祭に訪れるみなさんから、「散乱ごみが劇的に減って、まちが綺麗になった」という言葉をいただくこともあり、大きな手応えを感じています。
「ごみゼロ」をめざして活動を続ける上での課題の一つが財源です。活動では、リユース食器の使用と洗浄に伴う費用、エコステーション*注 1運営のための各種資機材、スタッフ T シャツの作成など、例年およそ 1500 万円の経費がかかっています。
これらの活動費は寄付金、協賛金、行政からの補助金によっていて、全体の約 7 割が民間企業・団体、個人等からの寄付金や協賛金で、残りのおよそ 3 割が京都市からの補助金です。そのほか、活動場所の提供やボランティアスタッフとしての参加など、さまざまな協力をいただいています。
しかしながら、継続的に効果的な活動を展開してくための財源は不足しているのが現実で、今後はさらに民間からの支援を広く集める必要があります。
これまで、公益(広く地域や社会に必要なこと)は、行政が一手に引き受け、税金が投入されてきました。ごみ処理もその一つと言えるでしょう。しかし、公益を行政のみが担うことは、社会の課題の多様化・複雑化のもと、もはや難しくなっています。それでも取り組むべき公益の実現やそのコストは、誰が担うのでしょうか。
祇園祭で言えば、祇園祭に遊びに来る人、露店や各種のお店で商売をする人、地域住民、NPO、京都で営業する企業や大学なども含みます。祇園祭をお客さんとして楽しむだけでなく、ごみの削減を通じて、祇園祭や京都の価値をより高める担い手として、ボランティアや寄付などで参加できるのです。
祇園祭ごみゼロ大作戦は、多くの人が担い手としての側面を発揮できる機会でもありたいと思っています。祇園祭そのものも、市民に支えられて続いてきたお祭です。NPOの活動は、動き出し、成果を出しつつあっても、支援が途絶えると課題の解決にいたることができません。ぜひ、継続的なご支援をお願いします。
リユース食器の回収とごみの分別回収を行う拠点。宵山期間中、約 50 か所に設置される。
一般社団法人祇園祭ごみゼロ大作戦
内田 香奈(うちだかな)さん
一般社団法人祇園祭ごみゼロ大作戦 理事。取組みにおいては、述べ 2,200 人のボランティアスタッフのコーディネート全般を担当している。
一般社団法人祇園祭ごみゼロ大作戦 |
祇園祭の前祭の 2 日間、屋台からでるごみの減量を目指してリユース食器を導入するとともに、エリア内に約 50 か所設けられた「エコステーション」において、ごみの分別回収のナビゲートを行っている。 |
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