寄付ラボ 第 51 回寄稿

掲載日:2017 年 2月 24日  

児童養護施設に匿名でランドセルなどが寄付される「タイガーマスク運動」はご存知の方も多いと思います。
あなたが寄付をするときはいかがでしょうか?
匿名を希望されますか?それとも実名で寄付をされますか?
「寄付者の名前を公開する」ことについて、その意味や効果について、執筆をいただきました。

寄付者の名前公開 ―寄付者は子どもたちにとってのロールモデルー

このページのコンテンツは、日本フィランソロピー協会 / 高橋 陽子さん寄稿による記事です。

活動の様子 杉並区の中学生が商店街を回って募金をしている様子

20 数年前、アメリカ・ロサンゼルスのホームレス支援の団体を視察したことがあります。 建物の前に立って驚きました。看板に大きく「カーク・ダグラス ハウス」(英語で) と書かれているのです。ハリウッドの名優が寄付して建てたものです。日本だと、さしずめ「杉良太郎ハウス」と言うところでしょうか。日本でもいつかこんなことができれば、と思ったことを思い出します。寄付で思いつくのは、日本の美徳とされる“ 陰徳 ”です。これも決して悪くはない。ただ、今、必要だと思うのは、子どもたちのロールモデルとしての寄付者の存在なのです。

社会課題の解決のために寄付をした人を顕彰する「まちかどのフィランソロピスト賞」を創設して今年で 20 年になります。こんなかっこいい人がいる、自分もこんな人になりたい、こんなことならできる、という寄付者のロールモデルを作りたくて始めました。前半の 10 年ぐらいは、いろいろありました。意外と共感されない。「えらいね」「そんな身分になりたい」というような嫉妬交じりの声が少なからずありました。そこで、 8 年目から青少年の部を設けました。子どもへの教育的見地から捉えると、大人は共感してくれると思ったからです。その通りでした。子どもは、本当に素直に、「何とかしたい」「力になりたい」という思いを持ち、まっしぐらにがんばります。そして、それが、本当に役になったのか? ということも検証しようとします。大人はそれに感動します。それ以後、この贈呈式は大人も子どもも一緒 に受賞していただいています。これが意外といい効果を生んでいます。大人にとっては、こんな小さな子どもたちが地域や困っている人のために募金活動をして寄付に充てている、と嬉しく頼もしい気持ちになる。子どもにとっては、大人はこんなことを考えて長年寄付をしているのだ、と、まさに、こんな人になりたい、というロールモデルに出会うのです。

それが子どもへの勇気づけと誇らしさにつながっているように思います。そのためには、やはり顔を見せて手渡してほしいと思います。寄付は、単にお金を贈るという以上の意味があります。寄付は、お金に信頼を乗せて贈るもの。温かいつながりを創るための道具でもあります。すなわち、これは一方通行ではなく、双方向の関係を創り出すところに喜びがあるのだと思います。「寄付のリターンはこの喜びですよ」と言った方がありました。 昨今、子どもたちの問題が深刻になってきています。人のことを真剣に考える大人の姿、絶対見捨てないよ、という大人の覚悟ある意志、子どもにとってのよきロールモデルがますます必要になってきました。信頼とつながりを生む寄付の醍醐味は、お互いの顔が見える関係づくりにあるのではないでしょうか。


高橋 陽子

日本フィランソロピー協会協会、理事長

高橋 陽子(たかはしようこ)さん

中・高等学校の心理カウンセラーを経て、1991年より日本フィランソロピー協会で企業の社会貢献を核にしたCSRの推進に従事している。特に、従業員はじめ個人のボランティア・寄付促進を目指した活動を中心に進めている。

日本フィランソロピー協会

一人ひとりがかけがえのない存在として、主体的に社会参加・社会貢献をすることを民主主義の基盤と考え「民主主義の健全な育成」を使命と掲げている。主に、企業の従業員を中心にステークホルダーの参画を見据えた社会貢献を核としたCSR推進事業を展開している。

Web サイト

http://www.philanthropy.or.jp/


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