寄付ラボ 第 50 回寄稿

掲載日:2017 年 2月 10日  

今までは、「寄付を受け取る団体」「寄付をする側」からのメッセージを紹介してきました。
今回は、寄付を集める際の「経費」に着目してみました。
事務経費などの「中間費用」と呼ばれるものはどのようにしてまかなわれているのでしょうか。
寄付に関わったことのある方なら「そうだよ、必要だよ」と思ってもらえる内容です。

寄付に伴う中間費用の必要性

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子

本年創設 70 周年を迎える共同募金は都道府県を区域としてそれぞれ共同募金会があり、当会は連合会です。お陰様で 70 年間に 9400 億円を超える寄付が全国で寄せられ、地域福祉の事業に助成を行ってきている。 2015 年度には全国で 5 万件を超える活動に約 160 億円の助成が行われました。

さて、今回頂戴したテーマは、寄付を集める際、そこから事務経費等の中間費用を確保することの意義や必要性という難しい課題です。 100 % 市民からの寄付で運営されている共同募金では全国的なルールとして寄付額の 1 割程度を経費に充当し使途は公表するというルールで行っていますが、職員の人件費に使うとはどういうことか、とか、寄付は全額当事者に渡すべきだとコメントが寄せられます。中間経費が、課題解決のための長期にわたる継続的な支援を行うために必要であるという理解はなかなか浸透しにくいと実感もしているところです。  そこで、中間経費、いわば寄付に伴うコストであるが、少しだけそのイメージを共有しておきましょう。寄付を財源として何をするのかによってもコストの意味が異なってくるかもしれないからです。まずは、他の NPO などの団体に助成事業を行うケース。そして自団体の管理的経費も含め活動費に充てていくケースでがありますね。一方で両者に共通したコストとしては、領収書や礼状の送料など物理的に経費が発生するコストがあります。さらに両者に共通して寄付者に理解を得にくいコストとしては人件費が挙げられます。

おそらく理解を促進する近道などはなく、どの程度の寄付がありどのように使ったかといった決算の公表にとどまらず、組織としてのミッションと寄付を財源として何をしたいのか、とりわけ、その活動で地域や社会にどのようなインパクトがあるのか、どのような効果があったのか、そして実施後の評価を伝えていく努力が必要と考えます。こうした伝えるプロセスや内容を丁寧に積み重ねていくことにより、ひいては新しい寄付者や活動への理解者、応援者が出現することにもつながるとも考えられます。 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、被災者への見舞金である義援金と併せ、活動費に充当するなどの支援金への寄付も多数ありましたが、定期的に寄付総額をはじめ使途をホームページなどで公表していない団体も見受けられました。さらには、「寄付の『一部』は被災自治体へ義援金として送金」などと記載し、寄付額の大半が使途不明の団体もありましたが少なからずの寄付が寄せられていました。

こうした中間経費を適切に使用しているにも関わらずインフォメーションができていない状況があったり、詐欺に近い悪質な例を駆逐していくには、最低限の情報開示を寄付をする前に必ずチェックするよう寄付者にも伝えていく必要性を痛感しています。  日本ファンドレジング協会では、「寄付者の権利宣言」と併せ寄付を呼びかける団体側に求められる「ファンドレイジング行動基準」を提案しています(http://jfra.jp/news/1641)。寄付者が寄付という行為を通じて、社会にどう参画できるのかについての考え方や、寄付の受け手側のルールを共有しつつ、寄付の呼びかけに際しては、これらのルールに留意することから始めていきたいものです。

※ 「ファンドレイジング行動基準」

注 1:

(http://jfra.jp/news/1641)


阿部 陽一郎

社会福祉法人中央共同募金会事務局長

阿部 陽一郎(あべよういちろう)さん

大学卒業後、中央共同募金会に入局。平成26年4月に同会企画広報部長から全国社会福祉協議会地域福祉部担当部長で出向。平成28年4月から現職。現在、ハンズオン!埼玉理事、日本ボランティアコーディネーター協会運営委員等にも携わる。

社会福祉法人中央共同募金会

中央共同募金会は、都道府県共同募金会の連合体として設立され、赤い羽根をシンボルとする共同募金運動の全国的な企画・啓発等を行っています。また、全国的な視野をもった助成を行う「赤い羽根福祉基金」を設立、民間福祉活動の推進に役割を果たしています。


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