サッカー、サンバ、カーニバル、リオオリンピック…「ブラジル」のイメージとは?
エネルギッシュ、陽気、…はたまた治安は大丈夫なのかな?でしょうか。
ブラジルの寄付事情は過去の「政治的な背景」が非常に深く関係しているようです。
そのことが、国や政府に依存はしないで、自分たちでコミュニティを作り守ろうとする動きをつくってきました。
今回はブラジルからの留学生にブラジルの「寄付事情」をききました。
ブラジルでは、現在、寄付はとても一般的なことと認識されている。その背景には、これまでの歴史が大きく関係している。
1900 年代前半のブラジルには、コーヒー豆の栽培で財を成した富裕層がおり、社会的・経済的に政府よりも力を持っていた。コーヒー豆の輸出入に必要な港はもちろん、博物館やオペラハウスといった文化的施設も、こうした富裕層の寄付により建てられてきた。病院や学校は、教会の寄付によって建てられ、病院の診察は無料で、学校も格安で通うことができていた。しかしながら、こうしたことの恩恵を受けられていたのは、もともとブラジルに住んでいたごく一部の人たちだった。 1900 年代前半のブラジルには、過去約 400 年間続いた奴隷制度やその後の移民施策に端を発する、人種差別や経済格差などの問題も起きていたのだ。
1950 年から軍事政権となったブラジルでは、政府によって大学がつくられたが、これはブラジル国籍を持つ人、特に、それまで海外に流出していた富裕層の子弟を国内にとどめるためのものであった。一方で、ドイツ、イタリア、日本などからの移民に対して、軍事政権は国籍や社会的な権利を与えることをしなかった。このため、移民たちは、出身国ごとに独自のコミュニティをつくり、教会を通じた本国からの寄付や自ら出し合ったお金もとに、それぞれに学校や病院を作り、自分たちの社会基盤を作り出していくしかなかった。
1985 年に軍事政権が倒れ、現在のブラジルは 1989 年に成立した新憲法により成り立っている。この新憲法により、「学校と病院は政府がつくる義務」が定められすべて無料である。しかし、成立から 30 年に満たない政府による政策や制度はまだ不十分である。現実的には税金だけでは成り立たず、教会や企業、非営利団体からの寄付を募っている。
ブラジルで寄付が一般的に行われる背景には、過去の政治による圧力の影響から政府や国をあてにせず、自分たちで何とかしようとしてきた側面がある。そこから新たな国を作ろうとしている政府の不安定さ未熟さを、こうした歴史のなかで培われた民間の力が支えているのである。
西田 誠 マルシオ(にしだまことまるしお)さん
ブラジル出身、1981 生まれ、医師、国費留学生。
2 名の医師と、医学部生 8 名(~12 名)でブラジルのスラム街でのボランティア活動。
字が読めなかったり、学歴の低い患者さんに対して、病気のことや薬の処方などの簡単な説明、および健康診断を行っていた。