寄付ラボ 第 43 回寄稿

掲載日:2016 年 10月 30日  

寄付ラボでは、海外の寄付事情についても紹介しています。
今回は、中国での寄付事情について寄稿いただきました。

日本とは異なる背景や経緯もありますが、寄付のとらえ方にはよく似た視点もあるようです。

中国の寄付事情

このページのコンテンツは、寄稿による記事です。

2008 年は中国のフィランソロピー元年と言われた年である。四川大震災の発生直後、救済と復興のため全国から寄付やボランティアが集まった。救援活動の中で民間非営利組織の活躍ぶりが国民に深い印象を与えた。災害の時点で寄付のピークを迎えて、2008 年の個人寄付総額は 458 億元(当時約 6 兆 856 億円)となり、はじめて法人寄付額を超え、寄付総額の 54% を占めたが、その後、急に低下した。寄付活動は一過性の特徴もある。

慈善事業や民間非営利組織の歴史からいえば、1949 年中華人民共和国が成立して以来、「左派」の思想に影響を受けて、社会主義の国家では慈善は存在する理由がなかった。福祉は国によって行われるようになり、民間の力に頼れば、社会主義の失敗だと考えられていた。そのため、1980 年代前半まで、中国における慈善の発展はあったが、積極的に促進されてはいなかった。赤十字のような清の終わりの頃から存在している慈善組織は改革され、官設官営の政府部門になった。当時、中国大陸にはいわゆる民間組織が存在していなかった。

1980 年代後半以降、急速な経済発展は国民の所得水準を向上させたと同時に、さまざまな社会的な格差、不平等をもたらした。中国の不平等は地域間、都市と農村間、階層間の格差としてよく議論された。その格差を解消するため、改めて民間の力が重視されるようになった。慈善は社会主義の失敗ではなく、行政の力が足りないところの補助であると考えられるようになった。

また、1990 年代の自然災害の多発*注 1は、従来の国に依存した問題解決の状況からの脱却を促進させた。慈善の力をもう一度考えなければならない。1994 年に、当時の朱総理は慈善を支持すると述べた。その後、「中華慈善総会」*注 2が設立された。そして、企業、非営利組織および個人により作られた慈善組織も出てきた。2005 年に、温総理は初めて政府文書で慈善事業の発展を支持すると表明した。官設官営、官設民営や民設民営などの形で、組織は発展していった。

寄付者に関しては、個人寄付より法人寄付は圧倒的に多い。なお、個人寄付者も富裕層である企業家が多い。利他的動機があるものの、個人の名誉を求める利己的動機で寄付を促すのではないだろうか。新聞やテレビにおいても頻繁に寄付を行う企業家が取りあげられ、一般人より、自己満足感を得やすい。

寄付先については、『慈善藍皮書:中国慈善発展報告 2011』により、2010 年度、寄付総額の 39.88% はある基金会に受け入れられた。慈善総会は 24.13%、赤十字は 3.39%、国や地方の民政部門は 13.15% であった。しかし、基金会以外の民間非営利組織は 8.41% にすぎない。寄付先は政府に関わる場合であれば、募金額が多いという傾向がある。民間非営利組織は 10 分の 1 未満であった。理由として、1 つは民間非営利組織の寄付を集める力がまだ充分ではないこと、2 つは中国の寄付は国主導の特徴があることが挙げられる。メディア宣伝から募金活動まで、多くが政府依存している。結果として民間非営利組織の社会的な認知度や信頼度は低いままになっている。

しかしながら、インターネットを使うことにより情報へのアクセスがますます便利になり、広範囲にわたる一般市民の注目を集め、寄付の呼びかけもしやすくなることは確かである。「2013 年度中国慈善寄付報告」によると、2013 年度オンライン寄付は 3 億元(約 42.86 億円)を超えた。オンライン寄付は特定の公益活動やプロジェクトへの寄付が多く、寄付者は寄付する前にインターネットで公開された情報を通して寄付先の活動内容と趣旨を確認し、共感できたら、寄付を決めることが特徴である。たとえば、ひとつ有名な水問題に取り組む組織、公衆環境研究センター*注 3という環境 NGO が存在している。この団体は各地域の水と大気の情報や汚染にかかわる企業の情報などを収集し、環境汚染情報開示を求め、そして人々の参加を呼びかけている。

   

寄付は富裕層には限らず、一般市民も積極的に行っている*注 4。とくに、近年中国版 Twitter と呼ばれる「Weibo」で貧困地域の子どもの教育費や医療費への寄付の呼びかけが話題となった。「Weibo」ユーザー、とくに有名な芸能人が自分のファンに寄付を呼びかけるケースも多かった。そして、最近スマホの普及に伴い、スマホアプリを利用して簡単に情報発信や募金ができるようになった。「愛心筹」*注 5のような個人を寄付先として医療費を募金する事例が多い。医療を必要とする本人の情報を登録して、医療機関の診査結果を提示し、当事者が病気であるという事実が関係者数人により証明できて、募金金額と期間を決めたら、スマホで発信することができる。

今後、ソーシャル・ネット・サービス上で、一般市民の寄付活動を呼びかけることは、一層盛んになると予想される。しかし、募金や寄付が行いやすくなる一方で、各運営側の資質や法律面の問題など新しい課題になる可能性がある。

注 1:

例えば、1991 年に 18 省にわたって水害が起こった。
1998 年に長江の洪水災害によって国8割の地域は被災地になった。

注 2:

1994 年に設立された。民政部によって管理している基金会である。
吉林省をはじめ、地方慈善総会も次第に設立された。

http://www.chinacharityfederation.org/WebSite/Index.aspx

注 3:

[公衆環境研究センター] http://www.ipe.org.cn/default.aspx

注 4:

『慈善藍皮書:中国慈善発展報告 2009』により、2008 年 5 月 24 日に中国社会科学院経済学部企業社会責任研究センターが北京市民を対象として、ヒアリング調査を行った。有効回答は 519 ケースであり、96.5% の市民は寄付したことがあると答えた。

注 5:

愛心筹 http://c.axzchou.com/


王 雨竹

王 雨竹(おううちく)さん

中国・ハルビン市出身。
名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程在籍。
同志社大学大学院総合政策科学研究科博士前期課程終了。
(2013 年 9 月〜 2015 年 3 月)NPO 法人 きょうと NPO センター 学生スタッフ。
(2015 年 4 月〜 2016 年 3 月)有限責任事業組合まちとしごと総合研究所 非常勤研究員。


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