寄付ラボ 第 42 回寄稿

掲載日:2016 年 10月 14日  

京都らしさを感じることができる「京町家」は、まちづくりの文化です。まさに、文化の宝石箱です。
しかし、現在はこの宝石箱の伝承が難しくなってきています。

今回は京都市景観・まちづくりセンターさんの保全・再生に関する取り組みを紹介していただきます。

寄附の受け手も主役!京町家保全・再生の意義 ~京町家は文化の宝石箱~

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子 平成 26 年度選定:川端邸 (上京区)

皆さんは、観光をされるとき、何を楽しみにしていますか?その土地の食べ物、気候、はたまた温泉?色々な目的があると思いますが、その中に、その土地ならではの風景を楽しみたいという目的もあるのではないでしょうか。

世界中の皆さんが、寺社仏閣はもとより、長い歴史の中で洗練されてきた、京町家に象徴される美しい町並みや京文化に憧れを抱き京都を訪れます。 京町家は、四季折々の暮らしの文化、実用性と造形の美しさを併せ持つ空間の文化、職住共存を基本として発展したまちづくりの文化、それらがつまった、文化の宝石箱です。一方、京町家は、税金や日々の維持管理費が所有者にとって大きな負担であり、継承していくための大きな障害になっています。

京町家まちづくりファンドは、そんな京町家の保全・再生を推進するための基金です。 平成 17 年、京町家の減少に心を痛めた篤志家からの寄附と、市民の方々、企業、京都市、国からの支援を原資に設立され、平成 18 年に運用を開始しました。

運用開始から 10 年間で 77 件の京町家の改修への助成と、2 地域の通り景観の修景に対して支援を行ってきました。件数は決して多いとは言えませんが、京町家の外観の改修により美しい町並み景観を形成する呼び水となっています。 しかし、昨今は、助成金としての支出と、寄附金としての収入の不均衡に伴う基金の減少が続き、寄附の拡大が大きな課題となっています。
これまでは、改修を支援した京町家で見学会やセミナー等の開催時に、寄附の呼びかけを行ってきましたが、なかなか結果に結びついて来なかったのが実情であり、取組として寄附拡大ができていませんでした 。

このような課題の解決に向け、平成 28 年 3 月には、これまでの取組の成果を報告するとともに、京文化の奥深さや京町家を守る意義を知っていただくことで寄附の拡大につなげるイベント「京町家まちづくりファンド感謝祭」を開催しました。講演の登壇者に京文化について発信力のある方をお招きしたり、入場を無料にして集客に結びつけ、当日は100名を超す参加者がありました。基金を充実するまでにはいたりませんでしたが、多くの市民の方にファンドの取組を知っていただき、ご支援をいただくことができました 。

市民の皆さまに寄附を呼びかける一方で、企業の方々にも、売上の一部がファンドに寄附される「寄附付き商品」の開発・提供にご協力を要請し、寄附の拡大に取り組んでいます。今年は新たに、京町家やまちづくりに関心の高い 3 企業から、寄附付き商品のご協力をいただきました 。
ファンドの設立当初から寄附付き商品にご協力いただいている企業もございますが、どのような経緯で、どのようなアプローチをしたのかも記録がなく、ノウハウが蓄積されていなかったことが、寄附拡大が進まなかった原因のひとつかもしれません。

また、企業への寄附のお願いの仕方についても、当財団とつながりのある企業に打診をするのは、始めのハードルとしては低くなると思いますが、ライバル関係にある同業他社の企業からの協力が得られにくくなる可能性もあります。今後、一企業へのお声がけだけではなく、業界団体等へアプローチし、これからの京都をともに創りあげていく企業が一丸となって、京都の景観保全にご協力いただけるよう呼びかけていくことが重要だと考えています。

このように、寄附拡大の取組は始まったばかりで、まだまだ十分とは言えませんが、寄附のお願いをしていく中で、寄附したお金が、個人の資産である京町家に助成されることに抵抗を持たれる方が多いように感じられます。
そのため、個人や企業による寄附が、京町家という個人の資産としてではなく、歴史都市・京都の文化の象徴である京町家の再生のために使われ、京都固有の美しい景観と良好な環境づくりに貢献すること、そして、寄附をする側、される側、お互いが、京都の景観・まちづくりの主役であるという理念を絶えず発信し続けていきたいと思います。


池谷 憲彦

(公財) 京都市景観・まちづくりセンターまちづくりコーディネーター

池谷 憲彦(いけやのりひこ)さん

まちづくりコーディネーター。
大学卒業後、長唄三味線の演奏家等を経て、2015 年より現職。

(公財) 京都市景観・まちづくりセンター

公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター:住民・企業・行政のパートナーシップのまちづくりを推進するための橋渡し役として活動し、設立以来、「地域まちづくり活動の促進」及び「地域と共生する土地利用の促進」を 2 本の柱として、地域コミュニティや地域経済を活性化させ、京都らしい景観の保全・創造、質の高い住環境の形成など京都の都市特性を伸ばすことを目的として取組を進めている。

Web サイト

京都市景観・まちづくりセンター - http://kyoto-machisen.jp/

賛助会員・寄附のお願い - http://kyoto-machisen.jp/partner/


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