寄付ラボ 第 41 回寄稿

掲載日:2016 年 9月 23日  

集めた寄付を自分たちで使うのではなく、地域の活動に配分する仕組みづくりにチャレンジした団体の奮闘記。初めてのことに手さぐりで取り組んで、難しことも大変なことも経てきづいた、寄付集めには戦略が必要であることや行政との協働の意味。これからもっと大きな広がりを生み出していきそうです。

寄付の循環で地域のプラットフォームをつくる ~城陽みどりのまちづくり基金の格闘~

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子

「城陽みどりのまちづくり基金」*注 1は、私が代表を務める市民活動団体「おりなす.キャンプ.城陽」(以下、オリナス) が、(公財) 京都地域創造基金*注 2の設立された同年、 2009 年 9 月に設置した基金です。この基金は、主に城陽を中心に活動する地域貢献団体が行う「みどりを活かしたまちづくり」活動に対して助成を行うことで、持続可能で豊かな地域社会の創造と発展をめざすものです。いわいる環境分野での活動に限らず、あくまで「まちづくり」が主役ということを意識しています。

この 7 年、寄付を持続的にまた、市民主体で集めていくことの難しさを感じてきましたので、その辺りのことを述べたいと思います。

2009 年当時、城陽では「市民と行政の協働」を進めていこうとの機運が高まっていて、「市民活動団体を行政が協働のパートナーとして育てる」ことが始まったばかりでした。

その時、城陽市、京都府との話し合いの中、「市民のための基金は、市民団体が主役であるべきであろう」ということになり、オリナスは、基金の設置申請者になることになったのです。このとき私たちには、協働について理想はあっても、設置申請者になるのに十分な知識も経験もなく、せいぜい「お役に立つのなら」といった気持ちで、あまり深く考えられていなかったのが正直なところです。

1 年目、おぼろげだった基金のコンセプトを固め、寄付金を入れる「器」を作りながら、寄付集めに奔走します。手始めは、城陽にあるゴルフ場で行われる、スター選手の集まる大きな大会での募金活動です。大会スポンサーが提供してくださった、スター選手のイラストの入った缶バッジをノベルティーにして、募金活動を進めましたが、寄付目標額の 50 万円に届くのがこんなに難しいことかと思い知らされました。市民活動団体や城陽市のイベントでの募金ブースの設置運営、城陽市の伴走付きでの企業廻りなど、これまでにない経験ばかりで、城陽市に頼ってばかりでした。

2 年目、城陽市の働きかけで、飲料メーカーが、自販機飲料の売上の一部を私達の基金に寄付してもらえることになりました。その後、順調に寄付型自販機は増え、現在、基金総額は 100 万円になっています。 この間、市民からも寄付が集まるようになりました。ある時は、「今まで寄付してもいいと思えるところがなかった」とコツコツ貯めていた沢山の 1 円玉を託してくださった方もあり、感動と同時に 1 円も無駄にできないと感じた瞬間でした。なんとか、これを次世代までつづくものにしたいそう思いました。ただこの時はどうすればいいのかハッキリとは分かっていませんでした。

持続的な寄付の仕組みをつくるうえで、最も苦しかったのは、「協働」という枠組みから抜け出すことでした。これは行政や企業に頼らないということではありません。真のパートナシップとは、一つの目標に向かっていく過程の中で、互いにぶつかっていけるということだと思います。

当初オリナスには「行政との協働」が目標になってしまっていました。欠けていたのは、市民の目線からの「なんのために」「どのように」「何を実行していくか」という戦略です。戦略なしには一時的な寄付集めはできたとしても、持続的に寄付を集めつづけることや効果的な助成はできません。また寄付を集めるという一つの目標を通じて、地域を、様々な主体を一体にしていくことを進めることもできません。行政、企業はそれぞれに計画や狙いがあります。そこにぶつかって一つの目的を達成しようとするには、この市民目線での戦略が重要だと数年に渡る募金活動の中で、気がついたのです。

2011 年に、基金に寄り添う形で、基金運営のために、オリナスを含む市民 (NPO)、城陽市、京都府、スポンサー企業などを会員とする「基金の会」を組織しました。寄付を集め、どのような事業に助成していくのか考え、その活動を地域に還元すること、これら全ての循環を単独の主体ではなく、パートナシップによって行うことで、それぞれの立場の違いを乗り越え、市民 (NPO)、行政、企業、互いに顔の見える関係を作っていくのが「まちづくり」そのもの、そして市民の戦略だと思うようになったからです。

まだまだ力不足ですが、基金の会に新たな市民や NPO を迎えつつ、寄付の循環を回しながら、基金の会を持続可能な地域にするためのプラットフォームにしていけたらと思っています。

注 1:

城陽みどりのまちづくり基金:https://www.plus-social.jp/project.cgi?pjid=13

注 2:

(公財) 京都地域創造基金:https://www.plus-social.jp/


長澤 とよ海

おりなす.キャンプ.城陽代表

長澤 とよ海(ながさわとよみ)さん

2002 年クラフト作家でつくる「五里2(ごりごり)のさと手づくりの会」代表。2004 年、ケーキ工房 Nagasawa 開業。 2010 年より、おりなす.キャンプ.城陽、代表。 2016 年 3 月宇治市小倉町にCaf’e m-alieを開業。

おりなす.キャンプ.城陽

団体名に「市民の知恵と力を織り成していくためのベースキャンプでありたい」という想いを込め、城陽で 2008 年 9 月に発足。市民活動団体を相互に繋いで応援することを通じて、地域社会をより良くしていくことを目的として活動開始。

Web サイト

おりなす.キャンプ.城陽 - http://orinasu.cloud-line.com/


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