寄付ラボ 第 12 回寄稿

掲載日:2014 年 11月 28日  

第 12 回となる今回は、公益財団法人京都地域創造基金の戸田幸典さんにご寄稿いただきました。日本初の市民コミュニティ財団として活動を広げています。コミュニティ財団とは、どんな役割をもっているのでしょうか?

寄附を呼び起こし、課題解決につなぐコミュニティ財団という存在。

このページのコンテンツは寄稿記事です。

活動の様子 全国コミュニティ財団協会の設立

コミュニティ財団という組織が日本で今、注目され始めています。

私の所属する京都地域創造基金(以下、当財団)は地域に根ざした市民参加型である日本初の市民コミュニティ財団であり、2009 年設立後からこれまでに 2 億 2 千万円を超える寄附を受け入れ、地域課題解決の主体に助成を行ってきました。今年の夏には全国の同種の財団とともに「全国コミュニティ財団協会」も設立し、まさに全国に広がりつつあります。

世界初のコミュニティ財団は 100 年前に米国クリーブランドで誕生しました。日本のコミュニティ財団は米国の規模には到底及びませんが、1991 年に大阪コミュニティ財団が設立され、ここ数年で当財団が 1 つのモデルとなりこの数年で市民ファンドと表現されるものも含めて、 30 以上の組織が誕生しています。その背景には国の「新しい公共」支援事業など行政の後押しもあったこともありますが、「地域の課題を地域で解決するための資金資源の好循環の機能」が地域に求められ始めたことも背景にあると思います。

国も市民公益活動の重要性を認識し、寄附による地域貢献を後押しするため税制改正を行ったことで、世界でも稀にみる充実した寄附税制が日本には存在しています。また、ファンドレイジングに関心が集まり、NPO 等による実践が広がっていますし、クラウドファンディングなど寄附の多様なツールや機会も増えました。

日本では今、寄附で地域に貢献するという文化が改めて見つめ直され、今の日本にあった寄附文化を生み出そうとしている時期ではないかと私は考えています。
とはいえ、寄附が実際に地域の活動に集まっているかというとまだまだそういう状況ではありません。また、寄附をしたいと考える人は東日本大震災以降増えていますが、信頼できる寄付先の情報の不足など、まだ寄附の入り口のところでのハードルが存在しています。

コミュニティ財団としての当財団は寄付者のそういったハードルを取り除きながら、寄付者の意向にも寄り添い、また寄附を必要としている地域課題と活動を示しながら寄附を受け入れ、効果的に課題解決や地域に生かすため、寄附を受ける側の NPO 等のファンドレイジングや事業構築のサポートや等に取り組んでいます。また、「カンパイチャリティー」のようなさりげなく寄附する機会を地域に多様に展開していく取り組みや、「遺産を地域のために生かしてほしい」というニーズに応える「遺産相続地域活用センター」など、寄附をする新しい形や窓口を地域で創り出していく仕事もしています。

そのコミュニティ財団が寄附をつなぐ先は「寄附でしか支えられない領域」にある地域課題に対する活動、つまりまだ行政サービスや企業等によるサービスが存在しない、「ほっとけない」と市民が真っ先に取り組む領域です。
コミュニティ財団はその地域課題と寄付のもつ価値や意義を社会に発信し、寄附を課題解決につないでいくという役割を持っているのです。

例えば、当財団では大手製薬会社からの寄附をもとに「若年性認知症サポートファンド」を設置しました。まだ社会的認知が低い上、京都では取り組まれていなかった若年性認知症の方の「はたらく」という課題解決に挑むため、 2 年間にわたり NPO 法人!-style へ助成を行いながら、若年性認知症の方の「はたらく」場づくりに取り組んできました。
現在では丹波ワインさんの寄付付き商品など、地元の企業と市民(寄付付き商品の購入)からの寄附も広がり、また NPO 法人!-style の事業はあるコミュニティビジネスのアワードでも表彰され、寄附に頼らない継続的な事業にもなりつつあります。

他にも、2010 年頃から NPO 法人山科醍醐こどものひろばが真っ先に取り組み始めた「子どもの貧困対策事業」は当財団の事業指定寄附・助成プログラムを活用し、「寄附」で支えられてきた活動です。現在では、全国各地のモデル的な事業となり、国や京都府も「子どもの貧困対策」を重要課題として取り組み始めています。

さらに、今年の夏、当財団のプログラムを活用し寄附を募った「祇園祭ごみゼロプロジェクト」のように、多くの人たちが解決したいと考えていた問題の解決のために多様な組織や人が協働し取り組み、社会を変えていこうとする場合にも、人々の共感をもとにしている寄附は有効な資金調達の方法になり、またその寄附と共感が多様な組織や人を動かす原動力にもなりました。

共感や関心から提供される寄附は、まだ社会に認識されていない課題や問題への気づきを人々に提供するとともに、地域課題解決のきっかけ、最初の一歩、二歩をつくる地域の未来にとって不可欠で重要なお金です。

今、寄附のもつ価値が見直されているからこそ、コミュニティ財団は寄附による地域課題解決、社会参加の地域の信頼ある窓口として、これからの地域を描く担い手の 1 つとして重要な役割が期待されていると感じています。


戸田 幸典

公益財団法人京都地域創造基金専務理事・事務局長

戸田 幸典(とだゆきのり)さん

立命館大学国際関係学部卒。大学生協役員の後、 NPO 法人きょうとNPOセンター職員を経て、 2009 年設立時から京都地域創造基金事務局長を務める。

公益財団法人京都地域創造基金

2009 年 300 人を超える市民の寄付で設立した日本初の市民コミュニティ財団。
地域からの寄付を呼び起こし、それらを地域課題解決の活動に届けることで持続可能で豊かな地域社会づくりに取り組む。(累計寄付総額約 2 億 2 千万円)

Web サイト

http://www.plus-social.com/


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