第 13 回となる今回は、仙台に拠点をおくコミュニティ財団、公益財団法人地域創造基金さなぶりの鈴木祐司さんにご寄稿いただきました。東日本大震災からの復興に取り組む過程で、寄付が果たす役割とはどんなものでしょうか?多様な視点のなかから、救援~復興期における NPO の財源という視点で考えます。
税金ではなく、民のお金だからできる地域の支え方が、今の東北地域にあります。
発災直後、私が被災地入りをした 4 月という時期は、宮城県内だけで 1,000 か所の避難所があったと言われ、自衛隊を中心に水や食料をどのように提供するかという段階でした。今回のような規模では、どこにどれだけの人が避難をしているのか誰もわからないという状況になっており、宮城県では、国、県、自衛隊、ボランティア(という名の NPO セクター)が、毎日夕方の決まった時刻に会議をひらき、どの避難所で、誰が炊き出しを行っており、自衛隊はどう動けばいいのかという話などを真剣に日々行っていました。
こういう緊急救援期は、やはり行政は混乱をしており、税金を原資とする資金は、ある意味では総動員されているものの、こと民間の NPO 的な支援活動に対する補助金や委託等の資金の動きは原則、完全に停止します。また、民間の助成金も、緊急支援や即応的な資金供給体制が整っている助成機関以外、即時の対応は非常に難しい状況かと思います。チャリティーコンサート等の事業系の資金も、もっと落ち着いてからですし、会費も即応的ではありません。非営利組織の収入源 6 種のなかで、最も機動性が高くて即時性があるもの、それがやはり「寄付」ということになります。(ある調査では、 2011 年の支援組織の財源のうち、 44 % が寄付金であったという結果もあります。)
緊急救援期を過ぎて、復興初期とでもいうべき 2012 年から現在まで、寄付が地域の暮らしと命を支えてきたと言えると思います。税金を原資とする場合はリスクをとれず、今回のように人と組織の成長を伴いながら地域に支援事業を実施せざるを得ない場合、民間の寄付や助成金でないと支援事業そのものが成立しないのです。
例えば、沿岸部等の地域に、元々 NPO が活動していない地域の方が多かったとすれば、震災後に組織を設立、少なくとも“とある地域”における活動は初めてというケースが大半で、ある意味では実績もなく、不確定要素が高いわけです。そういう地域、状況では、税金を原資とする仕組みでは、様々な背景で仕組みそのものの運用が出来ないか、付託できる相手が限られるか、基準以下というのも少なくなく、総じて絶対的なサービス供給規模がニーズに対して過小的にならざるをえません。
寄付金=寄付者の要求する任意の要求水準を満たしていれば、鉄壁な確実性の見込みがなくても資金が動くという特性が、地域の暮らしと命を支えたといっても過言ではないでしょう。
公金をベースにした支援が行き届く場合もあれば、緊急期や復興期に関わらず、多様なニーズが絡み合う個々の暮らしを助けようとすれば難しさは必ず残るわけです。寄付金の積極的な効能と、それが減少したときの代替性の無さみたいなものに直面している、ある意味では、原初的すぎる基本の話ではありますが、そんな東北の今を感じます。
東北で起きていることは他の地域の課題を先取りしているとよく言われます。引き続き、何かの接点・ご関心を持って頂ければ幸いです。
公益財団法人 地域創造基金さなぶり専務理事/ チーフ・プログラムオフィサー
鈴木 祐司(すずき ゆうじ)さん
1977 年・千葉県生まれ。米国公益財団法人の日本事務局スタッフとして、企業の CSR プログラムの企画立案に従事。2011 年 4 月 2 日より仙台入り、同年 5 月より設立業務に従事し現在に至る。
公益財団法人 地域創造基金さなぶり |
地域創造基金さなぶりは、東日本大震災を契機として 2011 年 6 月に設立。復興支援事業を行う NPO や社会起業家などへ、約 3 年半で約 620 件、14 億円超の資金支援を行ってきました。2014 年 7 月に公益財団法人へ移行。東北の復興と魅力ある地域づくりを目指し、これからも尽力します。 |
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