第 14 回となる今回は、年末になると各所でみかける「歳末募金」をとり上げます。募金は、みなさんに、もっともなじみのある寄付の形の一つではないでしょうか。募金に託す思い、その思いを預かり活かす仕組みを紹介します。
「師匠も走る」という慌ただしい 12 月もあと数日で終わろうとしています。
師走と言えば、今年もさまざまな団体・機関が「歳末募金活動」を期間的なキャンペーンとして取り組まれたことと思います。街中で行われている募金活動も師走の風物詩として街の風景にとけ込んでいる様相もうかがえます。
寄付をお願いする際に多様な社会課題に向き合う活動に対して、個別・具体的な共感を促し寄付につなげる、「共感型寄付」というものがありますが、寄付をする側にとっては必ずしもその目的や活動に共感したから寄付をするということだけではない寄付のカタチもあります。
特にこの時期においては、「 1 年間の健康に感謝して」とか「貧者の一灯」「みんなで新年を健やかに迎えられますように」など、ある意味、特に何かに共感をしたというよりも、広い意味で「良い社会や幸せになりますように」との願いを込めて、目的や課題を特定せずに信頼ができる機関に寄付金を託する、いわゆる「信頼付託型寄付」を行うというケースも見受けることができます。この時期、四条大橋付近でもよく僧侶がお念仏を唱えながら托鉢を行い道行く人から浄財を願っている場面や、子どもたちが「募金にご協力をお願いしまーす」と元気に声かけをしている場面にも出会います。しかし、僧侶たちや子どもたちは、何か具体的な支援を目的としているというよりも托鉢行という修行の一環としてであったり、教育活動の一環として善意の呼びかけを行い、集まった浄財や善意は信頼できる機関に託するというように、仲介を前提とした募金活動を行っている場合も往々にしてあります。
寄付を集う側として、「何のために寄付を求めているのか、何に活用するのか」ということに対する説明責任を果たすことは大変重要ですが、寄付金の活用途を直接判断・執行せずに仲介機能として行われている活動があることも知っておく必要があるかもしれません。
寄付者に対して、「しっかり活動の目的を理解してかつ共感したうえで寄付をする。寄付をした後は、その団体の活動がどうなってどういう成果を出したかを確認し、そしてまた寄付をする」ということを求め過ぎると、それはそれで寄付者の広がりに制限がかかってしまいます。敢えてそこは求めずに、「寄付という行為」そのものに価値を見出すことも大切な視点ではないでしょうか。
もちろん最終、信頼を付託され、寄付金の活用途を判断・執行する団体・機関の存在が重要であることは言うまでもありませんが、付託される団体・機関が過度に偏らないように気をつける必要があるようにも思います。
一般財団法人社会的認証開発推進機構専務理事・事務局長・研究主幹
平尾 剛之(ひらお たかゆき)さん
龍谷大学大学院経済学研究科修了 NPO 法人きょうと NPO センター統括責任者/京都介護・福祉第三者評価等支援機構理事・幹事長等を兼務している。
一般財団法人社会的認証開発推進機構 |
2011 年 4 月、きょうと NPO センターから「京都発・全国初」の非営利組織評価・認証を担う専門機関として独立し運営を開始。 NPO ・市民活動団体の組織や活動の「社会的信頼」を可視化し、新たな価値の創造と発信を目指して、現在、全国展開にむけて準備中。 |
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