寄付ラボ 第 7 回寄稿

掲載日:2014 年 9月 12日  

寄付に関するさまざまな思いやエピソードを多様な立場の方にそれぞれの視点で執筆をお願いし、みなさまに生の情報をお届けする「寄付ラボ」。

今回からは、寄付制度やその考え方などについて発信しています。第 7 回となる今回は、京都府と京都市が、全国に先駆けてはじめた NPO への寄付促進のための制度について、京都府府民力推進課の鈴木康久さんにご寄稿いただいています。

寄附社会をつくる「認定NPO法人の推進」(前編) ~全国で初めて、府市協調による条例制定~

このページのコンテンツは寄稿記事です。

去る平成 23 年 10 月 13 日に開催された府民力推進会議において、税制の優遇処置が受けられる認定 NPO 法人の推進に向け、「府市協調で独自の条例を制定する」との大きな方向性が示されました。
認定 NPO 法人制度の趣旨は寄附者等を優遇し、NPO 法人への寄附を促すことによって、NPO 法人の活動を支援することです。具体的には、4 つのメリットがあります。

寄附者に対する税制上の優遇措置

  • 個人が寄附した場合:所得控除又は税額控除ができる。*注 1
  • 法人が寄附した場合:一般寄附金の損金算入限度額とは別に損金算入ができる。
  • 相続人等が相続財産等を寄附した場合:相続税の課税価格の基礎に算入されない。

法人自身の税制上の優遇措置

  • みなし寄附金制度:収益事業で得た資産の損金算入を認める。*注 2

財政基盤の確立や社会的な信頼を得るために認定を考える NPO 法人にとって、平成 24 年 4 月に改正特定非営利活動促進法が施行されるまでは、認定 NPO 法人を取得することは狭き門でした (改正時点:府内 5 団体)。改正内容は、認定する機関が国税庁から所轄庁 (都道府県、政令指定都市) への移行や、認定の基準である PST (パブリック・サポート・テスト) の拡充などです。この PST 基準の一つに「都道府県又は市区町村の条例により、 個人住民税の寄附金税額控除の対象となる法人として個別に指定を受けていること」が示されました。

この改正を受け、京都府と京都市は、府内に事務所を持つ約 1,300 の NPO 法人にとって分かりやすく、不便が生じない条例を制定するため、「府と市町村が同じ指定基準」、「審査委員会の合同開催」、「申請手続の簡素化」など、協調に関する基本的な事項を定めました。さらに、より現場に適応した条例とするために、NPO 法人との意見交換会を4回開催し、条件不利地域への特例処置や一人当たりの寄附の下限額を定めないなどの意見を取り入れて条文化するなど、NPO との協働で策定を進めた条例でもあります。

府民力推進会議を始めとした様々な議論の場を経て、平成 24 年 10 月に府と市が同じ指定基準で同様の様式となる全国的に類例のない府市協調の条例が制定されました。条例の制定を契機に、京都府、京都市、NPO 法人等が協働で寄附社会の創造に向けた取組を進めたいと考えており、5 団体以上の協働により自らの活動を知ってもらうことで共感を呼び、地域でそうした活動を支える寄附の仕組みづくりを進める補助制度を検討しております。今後ますます寄附社会が、地域に根付いていくことを願ってやみません。

注 1:

条例で個人住民税(地方税)の計算において寄附金税額控除ができる。

注 2:

詳細は京都府府民力推進課、京都市地域自治推進室にお問い合わせください。


鈴木 康久

京都府府民力推進課課長

鈴木 康久さん

博士(農学)。著書「京都の地域力再生と協働の実践」、「水が語る京の暮らし」など。

京都府府民力推進課

NPO 等の多様な主体との協働推進、地域力の再生、特定非営利活動法人の認証・認定等に関することを所管している。


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