今回の寄付ラボは、さまざまな動機で集まるボランティアが、「寄付したくなるNPOを育てる」というコンセプトで取り組まれている活動です。
愛知県で広がるこの活動は、ネーミングもユニークな「モグラー」と「ツムギスト」。
さて、その活動が生み出す効果とは?
あいちコミュニティ財団では、“助成”という「資金支援」とともに、ボランティアスタッフとの“伴走”という「非資金支援」で NPO をサポートしています。
地域や社会の課題解決に挑む NPO がより多くの共感を集め、寄付や仲間を募っていくためには、解決に挑む課題の緊急性や重要性を伝えることが不可欠です。
しかし、その課題について、これまでの経緯や今後の見通し、既存の取組事例などを徹底的に調べる時間や労力を、多くの NPO が捻出できていないのが現状です。
「調べる人がいない…」「調べ方がわからない」「調べるための予算がない…」これらは、NPO が解決に挑む地域や社会の課題や先行事例の調査が必要だとはわかっていても、「できない…」とする 3 大理由かもしれません。そのため、「あいちの課題深掘りファンド」を設置し、「モグラー」とともに地域課題や先行事例の調査(深掘り)をサポートしています。「行政」で働く人にとっては、5 ~ 10 年後の政策課題を先取りすることができ、「企業」で働く人にとっては、社会の新たなニーズを知ることで自社の商品開発に生かすことができると考えています。「深掘り」に挑んだ結果を踏まえ、次のステップへと歩みを進めている NPO や、寄付募集に挑んでいる NPO も出てきています。
課題解決に挑む NPO の取り組みには、解決に挑む中で育まれた感動的な“物語”があります。NPO が共感を集め、寄付や仲間を募っていくためには、その物語をつむぎ、共有することが必要です。当財団は、どの団体も持っているこの“物語”に着目し、周年記念イベント「イロリバ」を毎年6月に開催しています。このイベントでは、物語を伝える「フォトストーリー」とともに、当財団の助成先が練り上げたスピーチを披露します。このスピーチに向けて、各助成先と物語をつむぐボランティアが「ツムギスト」です。感動的な物語を伝えるサポートを通じて、人に伝わる話し方や原稿の書き方を学ぶことができます。
2015 年のスピーチ参加団体の一つは、ツムギストともに、1 人の外国にルーツを持つ女の子が、団体の活動と出会い、勉強に意欲を持つようになり、看護師になるという夢を持てるようになるまでの姿をフォトストーリーにまとめました。
当財団ではこれまで、「ボランティアに参加したことがない…」という方や、「仕事が忙しくて参加できなかった…」という方にも、3 つの特徴*注 3から数多くご参加いただいてきました。内閣府が毎年行っている社会意識に関する世論調査で、約7割の人が「社会の役に立ちたい」と答えています。「モグラー」や「ツムギスト」の活動は、そんな方の社会参加を促す取り組みです。実際、期間限定の活動にも関わらず、活動終了後も担当したNPO に関わり続けるボランティアが多くいます。日本で寄付文化を根づかせるには、「お金の切れ目が縁の切れ目」にならない、寄付者が支援先の NPO に関わることができる機会がもっと必要かもしれません。
2015 年度は 27 名が参加
注 2:2015 年度は 13 名が参加
注 3:あいちコミュニティ財団のボランティアスタッフ3つの特徴
「モグラー」や「ツムギスト」に参加するには、募集説明会への参加と当財団への寄付を必須としています。あえてハードルを設け、「本気で」NPOのサポートをしたい人に参加してもらうようにしています。
公益財団法人あいちコミュニティ財団事務局長
長谷川 友紀さん
短大卒業後、地元の自動車部品メーカーに就職。12 年 8 月に会社を退職。コミュニティ・ユース・バンク momo の事務局スタッフを経て、13 年 4 月よりあいちコミュニティ財団の事務局スタッフとして勤務。
公益財団法人あいちコミュニティ財団 |
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