視覚障がい者の方々への支援活動の一つに「音訳」というものがあります。
視覚障がい者の方々が情報を得る手段として「点字」が有名ですが、実はその点字の識字率は視覚障がい者の1割程度という報告もあるのだそうです。
これは、後天的に病気や事故で視覚障がいとなった方が多いということも要因の一つかもしれません。
そのため、耳から情報を取得できるようなサポートも、点字と同様に必要だと言われています。
現在では、技術の発達により合成音声による読み上げソフトも普及してきていますが、それでも肉声によるあたたかい声を届けることは変わらず求められています。
今回は、全国に先駆け、京都で「音訳」の活動を続けてこられている「ロバの会」にスポットライトを当てました。
「音訳」とは、視覚障がい者の方のために本や雑誌を読み上げ、音声で情報を届けることです。
私たちロバの会は、全国に先駆け、47 年前の 1975 年から京都で活動を始めました。当時はテープに録音したものを利用者の皆さんに配布していましたが、それが CD に替わりました。今は利用者の皆さんがアクセスしやすいように、CD 以外の媒体を考える過渡期に来ています。
現在では全国で多くの音訳ボランティア団体が活動していて、それぞれの団体で音訳された音声データが 日本点字図書館」や サピエのホームページで公開されています。これにより、視覚障がい者の方はインターネット上で音訳された書籍の検索やその音声データのダウンロードを行うことができます。
ロバの会では、生活に密着した情報を届けることを大切にしています。
全国に約 1,000 人の視覚障がい者の利用者の皆さんに情報を届けているのですが、定期的に発信しているものの一つに「ロバさんの高島屋通販カタログ」があります。
利用者さんからの「買い物に行くのも不自由。自由に買い物を楽しむために通販カタログを読んでほしい。」という声がきっかけでした。
そこで、デパートの高島屋さんとコラボして、高島屋さんで年間 4 回発行されている通販カタログの音訳が始まりました。
現在は1回の発行に対して、6 ~ 10 人のボランティアが担当となって音訳しています。1 回のカタログで、再生時間が 14 時間にも及ぶ膨大な量ですが、利用者の方々も楽しみに待っていらっしゃるので、私たちも心を込めて声を吹き込んでいます。
この他にも、「プロ野球選手名鑑&プロ野球記録集」や「郵便局のふるさと小包カタログ」、生活情報や新聞の切り抜き記事などを音訳した「ロバさんの万華鏡」など、暮らしに身近な情報を定期的に全国の方々に届けています。
メンバーの多くは主婦の方々で、現在、40 名が活動しています。以前は子育てがひと段落して、空いた時間で音訳の活動を行っている方が多かったのですが、今はお仕事をしながら活動されている方も多くなりました。
元々本を読むことが好きだった方、朗読の活動に関心のある方、「ロバさんの高島屋通販カタログ」を知って活動に興味を持った方など、きっかけは様々です。
音訳は担当するメンバーがそれぞれの自宅で行います。その後、吹き込んだ音声を校正担当のスタッフが言い間違いや発音、アクセントのチェックをして完成します。
事務所では、完成した音声データを CD に焼いたり、その発送作業を行ったりしています。
利用者の方々が高齢化して減ってきています。若い人たちは、インターネットで直接音訳データをダウンロードして情報を手に入れる方が多いので、ロバの会への会員登録は少なくなっています。こうした環境の変化に伴い、ロバの会も過渡期を迎えています。
会の中では、視覚障がい者の方だけではなく、学習障がいの方に向けた音訳にもアプローチが必要ではないかという議論も行っているところです。
AI の音声ガイドなども増えてきていますが、人の温かみのある声の方が頭に入ってくるから音訳した音声を聞きたいという声もありますし、高齢者の方でパソコンの操作に慣れていないという方も多くいらっしゃいます。こうした方で音訳の CD があるということを知らないという方もまだまだいらっしゃると思うので、そうした方に情報を届けられるように活動を続けたいです。
新たに仲間に加わった若いボランティアスタッフにはパソコンの技術など教わることが多く、とても頼りになる存在です。私たちのこれまでの経験も引き継ぎながら、これからの時代に合わせたやり方を模索していきます。
ボランティア会員の会費に加え、利用者の方々が後援会を立ち上げてくださり、寄付をいただいています。この寄付で書籍の購入やCDの購入費用に充てていますが、登録されている利用者さんが減ってきていますし、専門的な機材の購入費も増えてきています。
そこで、会の活動の趣旨に賛同いただける利用者さん以外の方々からも寄付を広げていきたいと考えています。ぜひご支援をお願いします。
♪ちいさなロバ
詩:やなせたかし・曲:いずみたく・唄/ピアノ:松島トモ子
ロバロバロバ
ちいさなロバ
そんなに力は強くない
見ためもそんなによくはない
でもやすまない
くじけない
ちいさなロバのロバの道
ただひたむきに進むだけ
これは、ロバの会さんの活動を知った「やなせたかし」先生がロバの会さんのテーマソングとして書いた「小さなロバ」の一番の歌詞です。
「ロバ」のように愛らしく「地道にコツコツ」と、会が続いて欲しいという思いが込められています。
* 「ロバの会」ホームページで歌を聴くことができます。
なかなか人前に出ることのない活動ですが、地道で大変で、とても大切な活動です。形は変わっても、これからもあたたかい声が視覚障がい者の方の生活を支えていきます。
特定非営利活動法人ロバの会 寄付口座
ゆうちょ銀行 店番448 普通口座2089109
向かって左から
高坂 好子さん・傳刀 絹枝さん・端野 順子さん・横内 智子さん
※ 個人の肩書や所属する団体は、執筆時点 (2022年11月) の情報です。
団体名 | 特定非営利活動法人ロバの会 |
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代表者 | 端野 順子 |
所在地 | 〒604-8821 京都市中京区壬生梛ノ宮町 2-13 F’Flats 1F |
団体について |
目の不自由な方々に 新聞・雑誌・単行本などを朗読し、CD にしたものを、無料で貸し出す活動をしています。特にロバの会では生活に役立つ情報をという事で、通販カタログや毎年の「暦」、プロ野球選手名鑑などを製作しています。 |
電話 | 075-821-0844 |
FAX | 075-821-0844 |
メール | info@npo-roba.org |
Web サイト | https://npo-roba.org/ |
団体名 | 京都市市民活動総合センター |
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名前 |
真鍋 拓司 副センター長補佐 |
Web サイト | http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/ |
https://www.facebook.com/shimisen |