不登校の家族をもつきょうだいの会

掲載日:2023 年 3月 31日  


文部科学省の調査では、全国の小中学校で 2021 年度に学校を 30 日以上欠席した不登校の児童生徒は、前年度から 24% 増の 24 万 4940 人となり、過去最多の結果となったそうです。
10 年前と比較しても、小学生では 3.6 倍、中学生では 1.7 倍の増加となっています。

不登校の状態にある児童生徒それぞれの背景や要因は様々。また、学校に再登校することがゴールではなく、それぞれの抱えている課題の解消やその先に自立の道を目指します。

不登校の子どもたちへの支援として、NPO 等がフリースクールの運営を行い、学びの場を提供したり、行政においてもカウンセリングや相談の場づくり、不登校特例校の設置など多面的な支援が行われています。
また、不登校の子をもつ親の会も全国的に活動が広がり、京都においてもいくつかの団体が活動を行っています。

今回スポットを当てる「こころ停留所」は、「不登校の家族をもつきょうだいの会」。きょうだいが不登校になったときに抱えるきょうだい側の問題や支援の必要性を、代表である松岡さんご自身の経験から語っていただきました。
「ありそうで今までなかった」「言われてみれば確かに必要だ!」そんな「こころ停留所」さんの活動を紹介します。

このページのコンテンツは、こころ停留所 松岡 楓華さんにスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

松岡さんが「こころ停留所」を立ち上げたきっかけは何だったのでしょう?

「こころ停留所」は、2022 年 10 月 15 日に立ち上げた団体で、ようやく半年が経とうとしています。
きっかけは、私のきょうだいが不登校になったことでした。その時に私は高校 3 年生で受験を控えているタイミングでした。自分も大変な時に、親の関心がきょうだいに向いてしまったことを、自分自身、上手に乗り越えることができませんでした。

私の家庭の場合は、きょうだいが不登校になったことで、家の雰囲気が悪くなってしまいました。自分のことでメンタルの状態が悪い時に、きょうだいの不登校が重なってしまいまったのです。
自分のような思いを他の人にしてほしくないという思いから、大学に入ったら「不登校の家族をもつきょうだい」を支援する会を立ち上げようと思いました。

家庭の雰囲気が悪くなるとは?

うちの場合は、特に母親がきょうだいに世話を焼きすぎる形で関わっていたことで、きょうだいの機嫌が悪くなり、ずっとイライラしていたように思います。私や家族はそのイライラに触れないように過ごしていて、とても居心地が悪かったことを覚えています。
受験のこともあり私自身も大変な状況でしたが、家族の悪い雰囲気をさらに悪化させるのではないかと、自分の気持ちを押し殺していました。

不登校のきょうだいがいることで、そのきょうだいである松岡さんにどういった影響があったのでしょうか?

寂しいという思いが一番でした。自分の居場所であるはずの家が、安心できる場所ではなくなりました。
きょうだいの問題で家族と関わりたくなくて、私は一人で過ごしていましたが、かまってほしい、寂しいという気持ちも同時にあったのです。
また、私が母親からの不登校のきょうだいについての相談役にもなっていて、今になって考えると、関係性上はヤングケアラーに近いことになっていたのかもしれません。

不登校のきょうだいのことで家庭がいっぱいいっぱいの状況で、私が「勉強がつらい」とか、「学校に行きたくない」と言ってしまったら家族はどうなってしまうのかと思い、自分のことは溜め込んでいました。
友だちに対しても、きょうだいが不登校ということは言いづらくて、ようやく言えるようになったのは、家庭の状況が落ち着いた後でした。

不登校の子本人ではなく、そのきょうだいの支援はありそうでなかったと思いますが、現状はどうなのでしょうか?

おそらく初めての活動だと思います。京都でもそうですし、全国のネットワーク団体である「登校拒否・不登校問題 全国連絡会」の方も、全国的にも初めての取組みではないかと仰っていました。
私たちの取組みの紹介をすると、皆さんがそこで初めてきょうだいの問題と支援の必要性に気づかれることが多いです。

松岡さんはご自身の体験から団体を立ち上げられたとのことですが。

きょうだいは、回復期に入ってからも気持ちの波がありました。状態が悪い時には家の雰囲気も悪くなってしまいました。その時に、「あの時、自分は悔しい思いをしたな。」、「この気持ちは他の人にはしてほしくないって自分に誓ったな。」と私のその当時の気持ちが甦ってきました。

本当は大変だった時のことは忘れてしまいたかったんです。でも、当時のことが呼び起こされたときに、「あの時の自分を助けてあげたい!」と思いました。
もし、自分の希望が叶えられるうえに、他の人の役にも立つのであれば、やるしかない、と立ち上げを決意しました。

「こころ停留所」はどういった場所なのでしょうか。

不登校の状態の子たちの多くは家にいるので、そのきょうだいは「私も頑張っているのに、きょうだいだけ学校に行かなくてもいいなんて羨ましい。」と思ってしまうことが多いです。
その気持ちは本物だと思います。そうした気持ちも含めて受け止めていけたらと思っています。
親御さんはどうしても不登校の子どもに目が向いてしまいますので、目が届かないそのきょうだいに対して、私たちが支援をできればと考えています。

現在の「こころ停留所」の活動内容を教えてください。

月に一度、不登校の家族をもつきょうだいの方と一緒の時間を過ごします。
この場所では、来てくださる方のやりたいことができればいいなと思っていますが、現在は不登校の子どもを持つお母さんお一人の参加で、その方のお悩みを聞いています。
不登校の家族をもつきょうだいの方の参加はこれからというところです。
定例の集まり以外にも、季節ごとにハロウィンイベントやクリスマス会を開催しています。

交流会での出会い

3 月に、右京区で開催されたまちづくり活動をしている団体の交流会がありました。そこで、活動場所提供のお話もいただき、とても活動の励みになりました。

また、別の方から、ご自身も過去にきょうだいが不登校でその当時につらい思いをしたということを話してくださいました。現在進行形の当事者だけでなく経験者の方も、その時の思いを打ち明けられずに蓋をしていて、話ができる場所を求めているのかもしれないと気づかされました。

「こころ停留所」のこれからのことについて教えてください。

不登校の家族をもつきょうだいの方と直接出会えていないのが現状ですので、そういった方々に情報が届けられるように、どんどんと情報発信をしていきたいです。

活動においては、夕方の部や夜の部をつくり、活動の場を広げたいと考えています。
夕方の部では、学校から家に帰るまでの間で一息つくような時間を提供できたら。また、私の場合は、夜の時間帯に家の雰囲気が悪かったので、夜 11 時から 1 時ぐらいの寝るまでの間で電話してくれる人がいてくれたらな、一緒に時間を過ごしてくれる人がいてくれたらなと思っていました。
そこで、SNS やインターネット通話機能を使ってそのような時間を提供できたらと思っています。

また、今は支援対象を「不登校の家族をもつきょうだい」としていますが、それがどんなことに困っている人たちなのかを分かりやすくするために、定義づけして名前をつけられたらと思っています。そうすることで、その名前を聞いて、自分も当事者なんだ、と分かってもらえるようにして、支援に繋げることができたらいいなと思っています。


今回スポットライトをあてた団体・個人

こころ停留所 松岡 楓華 (まつおか ふうか) さん

代表

団体名 こころ停留所
代表者 松岡 楓華
団体について

不登校の家族をもつきょうだいの会です。
不登校児のきょうだいを支援します。
親からの関心がもらえなかったり、自分自身を見てもらえなかったりして寂しい思いをしたことはありませんか?
あなたの辛さに共感する人が集まっています。
月に 1 回、光華女子大学の 1 部屋をお借りして定期会を開催します。
参加費は無料です。
また、SNS でいつでも相談にのります。
一度訪ねに来てください。

メール kokoroteiryujo@gmail.com
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この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 真鍋 拓司

副センター長補佐

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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