ウクライナへ車いすを贈る 京都車いす点検ボランティア「スイマルク」

掲載日:2022 年 8月 26日  


スイマルクって何語?

“マルク”と言えば、ユーロ導入前のドイツの通貨。“ビスマルク”はドイツを統一したプロイセンの首相。さてはドイツ語かと思って調べてもどこにも出てこない。いったい何語?聞いてみてわかった「出てこないはず」。なんと、車いす(クルマイス)の逆さ読みだった!

今回お話をうかがったのは、そんなちょっとお洒落な名前の団体「京都車いす点検ボランティア スイマルク」代表の谷口博さんです。

このページのコンテンツは、京都車いす点検ボランティア スイマルク 谷口 博さんにスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

活動の内容について教えてください。

車いすは使用する人にとっては身体の一部のようなものです。しかし、病院などの公共の場や福祉施設などでは整備が行き届かない状態で使われているものもあり、実際、ベッドから車いすに乗り移ろうとした際に駐車ブレーキが効かずにそのまま転落して骨折する事故などが起こることもあるということでした。

こうした事態を知って、整備の必要性を強く感じたものの設置者側ではなかなか手が回らなかったり、専門に整備を行っているところもないというのが実情でした。それで、「このままでは放っておけない、何とかしなければ」という気持ちから、それなら自分たちが整備活動をやろうと、2005 年にこの団体を立ち上げました。

以来、現在まで京都市内を中心に高齢者施設や病院、市役所などで、5000 台以上の車いすの点検整備を行ってきました。

車いす安全整備士とは?

車いすには整備を促す車検制度といった仕組みがないことから、未整備のままで使用されていたり、専門的な知識のないままに不完全な整備状態で使用したために思わぬ事故につながるということがあります。
そこで、車いすの製造や販売に関わる事業者が中心となって立ち上げられたのが日本福祉用具評価センター(JASPEC)で、その養成講座を修了し、学科、実技試験に合格すると「車いす安全整備士」として認定されます。
スイマルクにも複数の有資格者がいて、その指導の下に全員が一定の品質を保持した整備活動を行っています。

メンバーの顔触れ紹介 代表の谷口さんは元新幹線の整備士!

スイマルクでは現在 22 名の会員が活動しています。年齢は 30 歳代から 80 歳代まで幅広く、平均年齢は 60 代後半です。女性の会員も 6 名います。
会員の多くは様々な分野で仕事をしてきた技術者集団です。その他、介護用品関係の会社に勤めている人や主婦の方などもいます。
ちなみに私(代表の谷口氏)ですが、現役時代は長年にわたり新幹線の整備を行っていました。新幹線車両と車いすとではスケールも構造も大きく異なりますが、安全整備という点においては同じ視点で見ることができます。

ウクライナ支援活動について

今回の活動を思い立ったきっかけは?

戦火の中にあるウクライナでは子供や高齢者、民間人を含む多くの犠牲者が増え続けていることが、連日、報道されています。
攻撃で障がいを負った人や歩行の不自由な高齢者などの移動手段として、車いすは無くてはならないものです。
そんなことで関心を持っていた私は京都市役所の国際交流・共生推進室にウクライナの状況をお聞きしたところ、ウクライナ大使館に聞いてみてはどうかとのお話をいただきました。

ウクライナ大使館と初めてコンタクトを取った時のエピソード

国際交流・共生推進室からウクライナ大使館に連絡を取ることを勧められメールを送ったところ、さっそく返信があったのですが、「こちらはウクライナの日本大使館です」という内容でした。
そう!日本のウクライナ大使館に連絡するつもりが、間違えてウクライナ本国の日本大使館にメールしてしまっていたのです(笑)

そこで再び、在日ウクライナ大使館にメールを送ったところ、すぐに電話がかかってきて、「ぜひ支援をお願いしたい。現地では車いすが不足しているので、今すぐにでも送っていただきたい」とのことでした。

支援活動について

在日ウクライナ大使館からの要請を受けて、早速活動に取り掛かることにしたわけですが、国内で行っているような単なる安全整備を行うということだけでは不十分だということがわかりました。
現地の報道などを見ていても、街にはがれきやさまざまな物の破片などが散乱しています。パンクの修理をした車いすを送っても、またすぐにパンクするのは目に見えています。
そうなるとせっかく送っても再び使用できない車いすとなってしまいます。そのためタイヤは空気チューブを使わない、すべてゴム製のノーパンクタイヤに交換することにしようとしたのですが、ノーパンクタイヤは高価なため、資金調達ができていない段階での実施は困難でした。

そこで在日ウクライナ大使館の担当者に聞いてみると、タイヤはどのようなものでもいいのでとにかく多くの車いすが必要とのことでした。
そこで、まずは通常タイヤの車いすを送ることとし、今後は現地と相談しながらどのようにするか考えていくこととしました。

記者発表をされましたが、反響はいかがでしたか?

この活動を行うには、まずは元となる車イスを無償で提供いただかなければなりません。
また、タイヤや修理部品の調達、大使館まで届けるための送料等、活動資金も必要となります。こうした協力を広く訴えるため、7 月に京都市役所の市政記者クラブというところでプレスリリースを配布しました。
これを受けて、まずは NHK 京都支局さんが整備活動を行っている現場取材に来られ、夕方や朝のニュース番組で紹介いただきました。その他にも全国紙や地元のテレビ局からの取材も入っていて、マスコミの人たちの関心度も高いんだなと感じているところです。
こうしたメディアによる報道を通じて、多くの人に活動を知ってもらって協力いただけると嬉しいですね。
NHK のニュース

進捗状況と今後の見通しについて教えてください。

現在、すでに 30 台近い車いすのご提供をいただき、整備活動に取り組んでいます。7 月 26 日には第一弾として 10 台の車いすを在日ウクライナ大使館に向け発送しました。
これから 1 年くらいの間に 100 台の車いすを提供できれば、と考えています。

スイマルクから読者の皆さまへ、ご協力のお願い

先程お話ししましたように、今回の支援活動には車いすの部品の調達や発送費などに多くの資金を必要としています。また、新たに車いすの整備作業と保管ができるスペースも必要になっています。
この NPO スポットライトを読んでくださった皆さまにも、是非ご支援ご協力をいただければ大変ありがたいですので、どうぞよろしくお願いします。


今回スポットライトをあてた団体・個人

京都車いす点検ボランティア スイマルク 谷口 博 (たにぐち ひろし) さん

代表

団体名 京都車いす点検ボランティア スイマルク
代表者 谷口 博
電話 090-734-48040
FAX 075-621-2810
メール suimaruku@gmail.com
Facebook https://www.facebook.com/suimaruku/

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 近藤 忠裕

事業コーディネーター

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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