障がいのある子どもたちの豊かな生活の広がりを求めて

掲載日:2022 年 5月 27日  


障がいのある方が学校や仕事以外の時間(余暇)をどう過ごされているかご存知でしょうか。
多くの方は一人で外出することが難しかったり、気軽に参加できる活動が限られることから、家で過ごす時間が長くなってしまい、余暇の過ごし方について悩みを持たれているその家族も少なくありません。

こうした課題意識から、障がいのある子を持つ親が集い子どもたちにより充実した余暇を過ごすことで、より良い生活を送ってもらおうと始めたのが、今回ご紹介する「休日余暇支援活動じゃりんこ」です。
親の立場の代表として会を運営されている江藤 照恵さんに、「休日余暇支援活動じゃりんこ」の特徴や障がいのある方を取り巻く環境への課題についてお話を伺いました。

このページのコンテンツは、休日余暇支援活動じゃりんこ 江藤 照恵さんにスポットライトをあてその活動を紹介する記事です。

休日余暇支援活動じゃりんこではどういった活動をされているのですか?

学生ボランティアさんと一緒に、知的障がいのあるお子さんの余暇支援活動を行っています。
ひと月に 2 回から 4 回、休日に学生ボランティアさんと障がいのあるお子さんが 1 対 1 のペアになってグループ活動を行っています。活動場所は京都市内が中心で、いろんなところにお出かけして、障がいのある子どもたちが社会のルールを学びながら活動を楽しむ支援を学生さんが企画・運営を担っていくれています。

ペアになっての休日余暇支援活動の様子
グループでの活動の様子(作品づくり)

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、人数が減っていて、障がいのある子どもとその親が 6 家庭と学生ボランティアさんが 6 名で活動しています。

休日余暇支援活動じゃりんこの設立のきっかけを教えてください。

当団体は、発足して 30 年になります。

発足当初は、知的障がいのある子どもに対する公的な支援が全くと言っていいほどない状態でした。今だと、「放課後等デイサービス※ 1」や「移動支援※ 2」があるのですが、30 年前はそういったものは一切ありませんでした。

そこで、障がいのある子どもを持つ親たちが、子どもたちが休みの日にずっと閉じこもってしまうのではなく外に出て子どもたちの生活がもっと豊かにできないかという思いで学生さんたちと始めたのがきっかけです。

当時は「障害児学童じゃりんこ」という名前で活動していましたが、活動を分かりやすく伝えるために数年前に名称を変更しました。活動内容は発足当初からずっと変わっていません。


※ 1 放課後や長期休暇中の障害児をサポートするサービスのこと。
学校通学中の障害児が、放課後や夏休み等の長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供することにより、学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを行います。

※ 2 障がいのある人の社会参加や余暇活動等の外出の際に、ガイドヘルパーが移動に伴う支援(見守り、食事や排せつ等の介助等)を実施します。

休日余暇支援活動を学生さんが行っていることの意味をどう捉えられていますか?

素直な気持ちで子どもたちに接してくれることの意味がとても大きいです。関わっている大学生たちは、純粋に活動に興味があったり、障がいのある子どもたちと関わってみたいと思って『じゃりんこ』に入って来てくれています。

当日の活動は学生に企画・運営をしてもらいますので、活動を通して学生たち自身も成長してくれるということを大切にしています。

活動当日の企画を考える「学生ミーティング」の様子
学生さんが企画し実施した「ウオークラリー」

企画・運営では行き先はもちろんですが、一緒に活動する障がいのある子ども一人ひとりの特性に合わせて活動内容を考えたり、事前の準備をしたりと、本当に頼りになる存在です。 月に一度、学生が行う活動ミーティングとは別に、学生と障がいのある子どもの親が集まる合同ミーティングを開いています。そこで、学生が活動中に困ったことやその対応方法について親からアドバイスを受けられる時間を設けています。
コロナ禍での制限がある中で、行く場所や活動内容などを工夫しながら実施しています。

「合同ミーティング」の様子

休日余暇支援活動じゃりんこの中に、「じゃりんこを育てる会」というものがあるそうですが、どのような組織なのでしょうか?

登録している障がいのある子の親たちで組織されている会です。主に資金調達での活動を頑張っています。障害のある子の親たちが当事者として、団体の運営を行っているというのもこの団体の特徴です。

賛助金を募り、賛助会員となっていただいている方に「じゃりんこ通信」を発行して活動の報告を行ったり、助成金の申請をしたりしています。卒業した学生さんや親御さんも、賛助会員として継続して関わり続ける人も多くいていただいています。

コロナ禍以前では、人のつながりの中で地域のお祭りに屋台の出店をさせてもらい、そこで焼きそばを売ってその収益を活動に充てていました。

現在は、放課後等デイサービスなどの公的なサービスもありますので、当事者団体ならではの、資金調達やミーティングなどの活動があることを望まない親御さんもいらっしゃると思いますが、当事者として運営を行い、親同士がつながることは大切なことだと考えています。

公的なサービスと「休日余暇支援活動じゃりんこ」との違いを教えてください。

学生も成長できる活動であることと、子どもにとってもお兄さん、お姉さんたちという斜めの関係で楽しんで活動に参加できること、そして、長く一緒に活動することで子どもたちの仲間意識を培えることです。

親にとっても、同じ境遇の人だからこそ言える悩みを言い合える場となっていたりと、他の公的なサービスとは違う良さがたくさんあると思っています。

休日余暇支援活動以外の活動について教えてください。

2021 年度から中京区の補助金(中京区民まちづくり支援事業)を活用して、障がい児者を育てる親の交流の場づくりを始めました。長年やりたいと話し合ってきた活動なので、今後も継続して実施していきたいです。

身近なところでも、障がいのある子どもをその親御さんが傷つけてしまうという悲しい事件が起こっています。そうした親御さんが「しんどいねん。」と言える場所をつくりたいと思い、始めました。この場を通じてじゃりんこを知ってもらい、つながっていけたらと思っています。

今後予定している取組みがあれば教えてください。

防災活動にも取り組みだしており、昨年度より地域の自主防災会とつながりを持つことができたので、今年度は防災活動の方も頑張って行きたい考えています。障がいのある子どもをもつ家庭をメインのターゲットにしながらも、地域の方にも参加してもらい、こういう子どもたちが地域にいるということを知ってもらう機会にできたらと考えています。

避難の時に要配慮者というと、どうしても高齢者がメインで考えることが多いようなのですが、発達障がいや知的障がいを持つ子どもたちの視点で防災や避難を考えることをきっかけに、障がいをもつ子たちのことを地域で考えられるようになったら嬉しいです。


今回スポットライトをあてた団体・個人

休日余暇支援活動じゃりんこ 江藤 照恵 (えとう てるえ) さん

休日余暇支援活動じゃりんこ「じゃりんこを育てる会」代表

団体名 休日余暇支援活動じゃりんこ
代表者 江藤 照恵
所在地 〒604-8455 京都市中京区西ノ京藤ノ木町1-15
団体について

『共に学び共に育つ』を活動理念とし、発足より 30 年間変わらずに、学生ボランティアの協力のもと障がい児者のグループ余暇支援活動を行っています。
グループ活動のいいところは、時間はかかるけれど障がいがあっても仲間意識を育んでいけることです。学生には活動の企画・実施(余暇支援中の障がい児者のサポート)をしてもらっています。学生にとっても、活動の運営や障がいのある仲間たちと関わることで多くの事を学ぶ場となっています。

電話 090-882-89921
FAX 075-822-9860
メール jyarinko100@outlook.com
Web サイト https://ameblo.jp/jyarinko1991/
Twitter https://twitter.com/jyarinko2525

この記事の執筆者

団体名 京都市市民活動総合センター
名前 真鍋 拓司

副センター長補佐

Web サイト http://shimin.hitomachi-kyoto.jp/
Facebook https://www.facebook.com/shimisen


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